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第10章、第二都市(A地区)2ー「いつまで居るの?」


太字の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
()の中の文字は、作者による注釈です。
太字の「」は、大きな声や音です。

作者より





作戦会議

 空は快晴、風はかすかに感じるぐらい。(サファロスが配慮してくれたのか?)
 
私は虹池(窪地)のほとりの崖の上から、A地区を見下みおろす。
 昨日と、まったく変わっていない。
 その周りをキングやクリス、ルナの部下たち、第二都市の人たち、学校の生徒や教師たちが取り囲み、ある者は、崖の下でうなり声を上げて争っている亡者たちを見下ろし、ある者は私たちの方を見ている。
 私は後ろを振り向くと、自分の半身ほどある刀を出し、地面に半円を描き
「これを崖だとしてもらって、タガメくんがハンマーを打ち下ろすのは、この辺ってことで、良いのかな?」

主人公が地面に描いた半円と、水脈を指差す藍白の手です。

 タガメが半円を覗き込む。代わりに、藍白がしゃがみ、半円の真ん中辺りを指差し
「水脈から考えて、この辺です。たぶん川の跡が残っていると思うので、その真下をタガメに割ってもらいます。」
「この崖が崩れるということは、ございませんか?」とクリス
「それは大丈夫です。「昨日までは川が流れていた」ということなので、浅く割れば、すぐに流れるでしょう。ただ見たところ、水を止めているのは、かなり大きな石なので、それを割るまでに時間が・・・。」
 タガメもうなずいている。私もうなずき
「そこでマーズちゃんたちに」
「OK、崖の上からタガメを援護しろってことだな。」
 トカレフたちもうなずいている。私もうなずき
「タガメくんはどこから、この下に行くつもりなの?」
 タガメは左手を伸ばし、私と女神たちが、ここ(5章-1)に来る時に上がって来た階段(下の1枚目のイラストの、向かって右側の真ん中)から、A地区が見える辺りを指差す。


砂漠から見たA地区、向かって右側が階段です。


階段とA地区の断面図
(実際は、もっとスケールが大きいです。) 

 私はうなずき
「じゃ、アオバ、ヨシツネ、ソウイチロウは、向こう側(階段側)から中ほどまで来て、タガメくんに道を開けて。」
「了解!」と名前を呼ばれた私の部下たち3人が、同時に返事をする。
 私は副隊長に
「先に行っていい?」
「どうぞ。」
「じゃ、合図したらA地区に入って来て。」
「了解!」
「わかりました。」



それぞれの場所へ


「じゃ、よろしくお願いします。」
 藍白が、虹池(窪地だった所)のオフィーリアたちがいる方へと駆けて行く。
 背後の人々と木々の間から、白い着物を着て祈っている様子のオフィーリアが見える。白い着物の袖や隙間から、ちらりと見える赤い紐や袖が、白と赤とのコントラストをして、より一層まぶしい。その後ろには祭壇が組まれ、白い着物を着たナナとミミが2人で相談しながら、木の枝や酒の入った徳利の配置を考えたりと忙しそうに働いている。
 タガメがハンマーを担いで、階段を下って行く。
 その後ろからアオバ、ヨシツネ、ソウイチロウが、どこから行くか話し合いながら、崖に沿って階段の方へと歩いて行く。
「よし! 配置につけ!」とマーズちゃん
「はい!」
トカレフたちが、それぞれの配置につき機関銃などを準備し始めた。
 私は
「姫子さん。」
 生徒たちと崖の上からA地区を眺めている姫子さんを呼ぶ。
「はい。」と姫子さんが来た。
「終わったら、A地区の上の人と、話がしたいんだけど。」
「あっ、それだったらA地区の村長さんのお孫さんがいるから・・・小太郎くん!」
 生徒たちの間から、黒髪に黒目、東洋人風の顔立ちに、上は白、下は青味がかか・・った紺の袴を着た男子生徒が、顔を上げて走って来る。
 姫子さんが
「2年生の小太郎くんよ。」
「は、はい・・・。」
小太郎くんが、「何だろう?」といった表情で、私の近くまで来た。
「終わったら、A地区の村長さんと話がしたいんだけど。」
「わ、わかりました。首根っこ引っつかんででも連れて来るよ。」
「うん。」と私はうなずくと、その場から、さらに奥の虹池のはたに植っている木の所まで歩いて行く。
 立ち止まり崖の方を振り向くと、A地区と崖周辺が静まり返り、緊張感に包まれているのが感じ取れる。



作戦開始

 私は駆け出した。
「タタタタッ」
 自分の足音が、耳に聞こえてくる。
 亡者たちのいく人かは、気づいて上を見上げている。
 崖が途切れると、刀を出しながら宙を滑空かっくうするように落下していき、1人の亡者の右肩めがけて刀を振り下ろした。
 亡者の右肩が、上から下にスパッと切れ、血飛沫ちしぶきが上がり、滝のように流れ落ちる。
 私は地面に着地すると、左手を上げて曲げ、入って来るよう合図をした。
 部下たちが飛び下りる、と同時に崖の上から歓声が沸き起こった。



第5章-1に出てきた崖のイラストです。
崖の向こうがA地区です。
色の変わっている所が滝の跡です。


 私は目の前の亡者たちをぎ倒しながら、川の跡が途切れ滝となって、さらに崖下へと落ちていた所(5章-1)まで来ると、片手を腰に当て振り返り、先ほどまで自分が立っていた崖を仰ぎ見る。反対側の握っている刀からは、亡者たちの血が滴り落ち、虹池からの風に、髪がそよいでいる。
(崖の上からみて)左側から、アオバ、ヨシツネ、ソウイチロウが入ったため、左半分はほとんど終わっている。残りは、副隊長が戦っている右半分となっている。
 タガメはすでにA地区内に入り、崖の下の大きな石の所へと向かっている。
 その周りの亡者たちを、トカレフたちが機関銃で撃ち払っている。
「ガン!」「ガン!」「バン!」「ババババババ!!」と銃の音がA地区内にこだまする。
 タガメが大きな石の前で立ち止まり、2、3回なでさすると、両足を広げ、一気に、ほぼ真横にハンマーを打ちつけた。
「ミシミシミシッ」とひびが入り「ガシャーン!!」と大きな音を立てて、崩れ落ちる。中から細長い隙間が姿を見せ、そこから水が溢れ出し流れ始めた。
 右半分の亡者たちもあらかた倒され、A地区の人たちや飼っている家畜(牛や豚、鶏)たちが、歓声を上げて穴から出て来た。そして人々は互いに肩を組み、抱き合い、喜びの声を上げ、家畜たちは、流れ出した水に顔を突っ込み、浴びる様に水を飲んでいる。 
 A地区は瞬く間に亡者の唸り声から、人々の歓喜の声へと変わった。
 私は、ホッと安堵の息をつく。
 崖の上から、マーズちゃんが親指を立てているので、私も同じように返す。
 トカレフたちが片付けを始めている。
 崖の上の人たちも次々と下りて来て、姫子さんや小太郎くんたちがA地区の人たちに駆け寄り、互いに喜びの声を上げている。
 キングが近くまで来て
「見事であった。」と拍手をする。
「いつまで居るの。」
「きさま・・・相変わらずだな、お前の部下も」
「部下が、失礼な事をした?」
「ソウイチロウのやつ、わしが「連れて行ってやろう」と言うのに・・・のう
ソウイチロウ。」
 私の部下たちが、集まって来る。
 階段の方から、水浸しのオフィーリアを水浸しの藍白が背負って入って来た。
その後ろには、濡れていないナナとミミがいる。
「必要ないっす。おかげで面白い物も見れましたし・・。」
「ほお、面白いものとな。」
「お前が、初めて背筋がゾクゾクしたってヤツか?」とアオバ
 その後ろから、ついて来ていたエルザたちが
「あそこに、面白い物ってあったかしら?」
「さあ?」と首を傾げている。
「ソウイチロウ、村からここまで、どれぐらいかかった?」と私
「2、3時間ってとこですかね、走って。」と、さらりと言い
「えー! 2、3時間!?」
「あそこを?」
「すごい!」
 生徒たちやルナの部下たちからも、どよめきが起こる。
「じゃお昼ご飯、食べてからでいいから、ちょっと頼みたいことがあるんだけど。」と私
「良いっすよ。」


A地区の住居と村長さん

 私がA地区の人たちがいた穴の方に向かって歩き始めると、その後から、みんなゾロゾロとついて来た。
 マーズちゃんが
「キング、腹が減ったから、なんか食いもん出せよ。」
「きさま!・・・上手くいったからと、えらそうに・・・。」
「で、いつまで居んだよ?」と私と同じ事をきく。
「友が友なら・・・似た物同士め・・・。」
 苦虫をみ潰したよう様に顔をしかめ、その後ろで部下たちが笑っている。
 私は、穴の中でウロウロしている小太郎くんを見つけ
「小太郎くん、村長さんは?」
「ごめん、今ちょっと見当たらなくて、居るのは確かだから・・・」と言って、穴の奥へ走って行った。
 穴は近くで見るとかなり大きく、高さは副隊長の背丈ぐらいあり、中には家具や生活道具が見え、住居としているようだ。
 穴の奥から
「じぃちゃーん!」
「村長ー!」
と言った声が聞こえてくる。
 背後から、バッカスの鼻歌が次第に大きくなり、フローラも部下たちと来た。
「藍白、もう下ろしてくださらない?」と言うオフィーリアの声が聞こえる。
 私は振り返り
「オフィーリア、上手くいった?」
「ええ・・近いうちに、この辺りはすべて緑の草原になりましてよ。」
村の人たちから(男性ばかり)
「おおー!」と、歓声と拍手が起こる。
 穴の奥から
「じいちゃん、そんなのは、どうでも良いから。」
 小太郎くんの手に引かれ、小柄で長い白髭しろひげやし、肌の色が朝黒く、顔にいっぱいしわのある老人が、頭に手をあて照れくさそうに出て来ると
「は、初めまして。」と頭を下げた。
 私や周囲の人たちも頭を下げ、私が
「こちらが、川の水を流してくれた川の女神オフィーリアです。」
「おお! あなたが川の女神オフィーリア様。」と目を輝かせ
 村の人が
「もう1人、金色の髪の女の子が・・・。」とフローラの方に目を向け
「花の女神、フローラです。」と私が紹介すると、彼女が恥ずかしそうに頭を下げ
村人たちは「かわいー。」と言いながら拍手をする。
 私は村長さんに
「あの、明日もう一度、確認のためにこちらにくるので、何か不都合があれば、その時に言ってください。」
「は、はい。」
「じゃ、帰ろうか。」
 私と周囲の者たちは、何か言おうとしている村長さんを尻目に、A地区を出て行った。


次回

第11章、第二都市(寮、二人部屋)1ー「ライガの酒って・・・。」

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イラストはイメージです。
1番上の見出し画像は、こちらのイラストを加工したものです。
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虹色らいん
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