第13章、第二都市(学校の1階、客や職員用の出入り口)ー1、(うわーシンクロしちゃった・・・・。)
「銀河連合について」と雑談
渡り廊下から校舎の入り口まで来ると、昨日と同じように運動場に黒い巨大な円盤がある。運動場のトラックが見えなくなるほど大きい。
ソウイチロウが振り向き、私に
「あれが、銀河連合の船ですか?」
「うん。」
他の部下たちも、物珍しそうに見ている。
(それは、そうだろう。毎日、地下の地獄でドラゴンと共に駆け回り、地上に出る時は、私が王宮に定例会議に出席した後から夜のパーティーが終了する間、だけなのだから、全員、出席させておいて良かった。今のような事態になった時に、うまく他の部下たちと連携が取れるか心配だったのだ。しかも部下たちがいない間は(地獄を)ドラゴンにまかせておいたため、今も、この下で上手く仕切ってくれている。)
ヨシツネが
「さっきの人は、銀河連合の人ですか?」
「うん、コードネームはアーチャー。銀河連合の司令官をしている人、で後ろの 銀色の服を着ている人は、みんな部下。」
背後で
「あいつ、名前あったのか・・・。」とバッカス
「澪ちゃんは、さっきの人(アーチャー)の元上司なのよ。」とアルテミス
「勉強になります。」
クリスが熱心に、メモを取っている。
(クリス、銀河連合に興味あるんだ。それもそうだな、銀河連合っていったら、銀河全域を取り締まる警察部隊なのだし、今回のようなことにならないかぎり、めったに出会うことはない。)
「ところで、さっきから言ってる『澪ちゃん』とは誰なのだ?」とキング
私以外の全員が立ち止まり、女神たちが一斉に私を指さす。
「ん?・・おおーお前が、澪ちゃんだったのか!」とキングはうれしそう
(だから、教えたくなかったんだ。)
ソウイチロウは「へえー。」という顔をし、部下たちは苦笑している。
マーズちゃんが得意そうに
「澪木って俺がつけたんだ。水先案内人って意味でさ、良い名前だろ?」
「どういった字を書くのですか? こちらに」
クリスが、マーズちゃんにメモとペンを渡す。
マーズちゃんは『澪木』と書き、それをクリスが受け取る。ヨシツネは、ソウイチロウに昨日のメモ用紙を見せている。
「ほお、素敵な名前ですね。」とクリス
「どれどれ?」
キングと、その後ろからアーサーたちも覗き込んで「へえー」という顔をしている。
ソウイチロウも
「へえー」とメモ用紙を見ながら、歩いている。(前を向いていないと、転ぶぞ!)
などとやっている間に、左側の突き当たりまで来てしまった。
目の前にはアルミ製の枠に、上半分にガラスをはめこんだ両開きのドア。中央には銀色の把手がついている。
その左手には、木製の細長いカウンター、来た時に客が「リン」と押して鳴らす呼び鈴が置かれ、その奥は片開きの安っぽそうな(プレハブなどでよく見るような)ドアがある。
右手の壁には、職員や客のスリッパが入った、私の腰ほどの高さのある金属製の靴箱が、両開きのドアのある壁から出っ張っている柱まで、ぴったり嵌め込まれている。
出入り口となっている両開きのドアの前には、2、3m四方ぐらいの三和土。その三和土から段になっている床の上には、くすんだ黄緑地に『来客用』と金で刺繍されたスリッパが、行儀良く並べられている。
(やっぱり昨日(第5章-4)、パンフレットを校長に持って来た時も思ったけど、とても気が付く女性だ。そして几帳面で自分の与えられた仕事を手際よく、なんなくこなす。こういう人って、けっこう日常をつまんないと思って生きているんだよな。ライガの世話という仕事を与えられて、喜んで生き生きとしている状況が頭に浮かぶ。悪いことだって知っているけど、退屈な日常に差し込んだ刺激がやみつきになってる。)
フローラが
「ソウイチロウさんの面白い物って、これですの?」
下駄箱の上に架けられた大きな絵を指差し、ソウイチロウは私に向けていた目を
「えっ、はあ」とフローラに向ける。
「これの、どこが面白いのだ?」とキング
部下たちや女神たちも絵を見上げている。
アルテミスと私の部下だけが、スリッパやカウンターを眺めている私を見ている。アーチャーも、絵ではなく、じっと私を見ている。
(正直、人の多い所で見たくないんだけどなー。みんなの前で言ったのは失敗だった・・・1、2、3でいくか・・・・1、2、3)
”ことの起こり”?
気が付くと、目の前には赤い油絵具で描きなぐったような抽象画のような絵が架けられ、その場にいる全員が、亡然と絵の方を見ている。
(うわーシンクロしちゃった・・・・。)
私と一緒に長くいると霊力が上がって、いつもなら見られないものでも見られるようになる。だからあまり人といることを避けてきたのだが・・・今のように私のそばでいたら、それはいっそう顕著に現れる。おまけに、女神たちとキング(王)と部下たちだから、元々強い力を持っている者ばかりだし・・・
私の後ろのカウンターの、向こう(用務員室)のドアが開いて
「あら、みなさん、どうされましたか?」と、木花さんが出てきた。
私は一瞬、その場で絵を外そうかと考えたが、愛想笑いを付け加え
「いえ、別に、いろいろ見て回っているだけなんで、気にしないでください。
ほら、みんな行くよ。木花さんが迷惑してる。」
戻るよう両手で示したので、ゾロゾロと名残惜しそうに、絵の方を見ながら下駄箱の方へと戻って行く。
キングが絵を指さし
「お、お前、これ・・・」
「ほらっ、絵が欲しいんだったら自分で出しなよ。」と彼の肩を叩く。
「お、おお。」
キングも歩きだした。
落ち着きを取り戻したらしい部下たちと女神たちが、歩いて来る私とキングに目を向けている。アーチャーは帰ったらしい。
「じゃ、ソウイチロウ、頼んだよ。」
「あ、あの絵は、いつ、外す予定ですか?」
「んー、ソウイチロウが情報を持って来たら」
「お、オス。」
「急げ! ソウイチロウ!」
キングの言葉を背に受けながら、A地区の方へ走って行った。
そこにいる全員、何か私に言いたそうなのだが、何を言ったら良いのか、わからないようだ。
寮の方から、校長先生と市長さんが来た。そして私に
「お部屋の方に行きますか?」
次回
第14章ー第二都市(寮の3階、1番奥の部屋)
1、「普通に使って、引き千切れる物じゃないんですよね。」
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