第18章、第二都市(中庭、学校)ー1、「2匹いたのね。」
木花 咲子さんの部屋
校舎に向かって、渡り廊下を歩いて行く。
右手には、大きな針のように細い三日月
月の女神ルナがいるので、三日月なのに煌々と周囲を照らし、幻想的な雰囲気だ。
「わあ、すごい・・・。」
校長先生、市長さん、姫子さんたちは、大きな三日月に感嘆の声を上げる。
私も大きな三日月を見て、次に、来客や職員用のドアの方を見る。
そこから、明かりが漏れている。(下記の校舎1階の見取り図参照)
私は川原 幸子さんにした質問(15章-1「木花 咲子さんって、寮のどの部屋にいるの?」)を、校長先生にもしてみる。
校長先生は気恥ずかしそうに
「前に生徒だけが増えて、寮の部屋がいっぱいになったことがありましてね。で とりあえず1週間だけ、という約束であそこに移ってもらったんですけど、自分はあそこが性に合ってるって言ってね、それで、ずっとあそこなんですよ。」
横から、食堂で働いている中年女性の百合子さんが
「食事もわざわざ、ここまで取りに来て、持って帰って食べるのよ。」
「いつ頃からですか?」と私
校長先生が
「あれは、2年ぐらい前だったかな?」と、思い出そうとしていると
ルナが校舎の出入り口を指差し
「見て! もう、始まってるわ!」
幻覚
校舎の中の廊下を、由美ちゃんが全速力で、校長室がある方に向かって走って行くのが見える。
ルナが走り出し、私と、私の部下とアルテミス以外が、慌てて校舎に向かって走り出した。
「澪木、行かねえのかよ?」とマーズちゃん
「うん、この辺でいる。」
「マーズ様、早く行きましょう。」
私は生徒用の下駄箱の前の廊下で、由美ちゃんが走って行った方を見る。
「どうするんです?」と副隊長
「あ、いや、イモ虫こっちに来るかなって、来たらどうしたか見たくて。」
「楽しみね。」
横には、アルテミスとアーチャーが立っている。
(アルテミス・・反対したのに・・・アーチャーは非番か?)
「まったくだ。」
いつの間にか、キングもいる。
「キング、寝たんじゃなかったの?」
「お前は・・・あれだけ騒々しかったら眠れぬわ。」
(聞いてたな。私たちの話を・・・。)(17章-1)
(午後3時って・・えっと・・・・。)
「会議をしていた時ね。」とアルテミス
(そうなんだ。)
部下たちが、それぞれの武器を手に構える。
私は慌てて
「これは幻覚だから、あの時の午後3時の再現だから刀は抜かなくていいよ。その代わり、しっかり視てて、何が起こったのか。」
部下たちは構を解くが、刀は持ったままだ。
その頃には、戻って来た女神たちや部下たち、校長先生や姫子さんたちが呆然と中庭で、イモ虫の行方を目で追っている。
私は、寮の3階1番奥の女神たちの部屋(上の見取り図内の赤い星がある、今はキングの部屋)の方へと、駆け出した。
後ろから、部下たちだけでなく他の人たちもついてくる。
(2匹いた。これがドアがなかった真相だったんだ。)
「2匹いたのね。」とアルテミス
アーチャーも、うなずいている。
「じゃ、もう1匹増えたってことですか?」
市長さんが、頭を抱えている。
寮の左側(木々がある方)へと回ると
「マジかよ。」
私の後ろで視ていたマーズちゃんが、血の気がない顔でつぶやく。
「俺、隊長(私)があのドアにこだわった訳がわかりましたよ。2匹いたんすね。」とアオバ
「うん・・・。」
「2匹も・・・・・。」とヨシツネ
「1匹だと思い込んでましたね。」と副隊長
「うん、あのまま気にしないままにしておくと、後の方で大変なことになってた かもね。」と私
「でも、ドアにこだわっただけじゃ難しいだろ?」とマーズちゃん
「それでも気にした方が良い。何かのきっかけで、わかるかもしれないし。何も気にしないよりは、2匹いるって知った時のショックは違うと思う。」
「確かにな。」
部下たちもうなずいている。藍白やタガメ、鎧姿のアーサーたちも私たちの話をきいている。
「澪ちゃん! 来て!」
オフィーリアが、中庭の方から駆けて来る。その後ろには、ナナとミミがいる。
藍白とタガメが、いち早く駆け出した。
「次は、あのイモ虫か!」
マーズちゃんがつぶやき、その場にいる全員が渡り廊下の方へと駆け出す。
校長先生や寮から出て来た第二都市の人たち、女神たちと部下たちは真っ青な表情で、その様子を見上げている。
姫子さんが、たまりかねた様子で
「どうにか、できないんですか?」と、私にきいてくる。
私はうなずき
「これは、一昨日、起こったことを再現しているだけなんです。つまり幻覚です。」
「ええー?! 」
女性たちが声を上げ、再び校舎に目を向ける。
私も、ライガがどっちの方向に逃げていくのか、注意深く見守る。
やがて、あれだけ聞かれていた悲鳴が聞かれなくなっていく。
「(だめだ! 見失う)アーサーさんたちは、運動場の方でどこに逃げるか視てもらえますか?」
「はい。」
アーサーたちが下駄箱の方へと駆けて行く。ルナも後ろからついて行く。
「私たちも行くわ!」
フローラとその部下たちも駆け出した。
「マーズちゃんは、あっち!」
私は、職員や来客用の出入り口を指差す。
「了解!」
マーズちゃんとその部下たちが駆けて行く。
「私たちは中へ。」
「はい!」
私の部下たちが一斉に返事をし
「僕たちも行きます。」
藍白とタガメも校舎内へと入った。
次回
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