映画A KITEについて
先日映画A KITEをようやく読みました。
1990年代、私もまだ生まれていない頃の作品で平成ダークSF作品でした。
話はそこまで面白いとは思わなかったのですが、キャラの設定と作画の素晴らしさに1990年代らしい塞ぎ込んだ暗澹さが相まって好きな作品だなと思いました。
全体的な感想
まず作品の全体的な感想として、50分というアニメ2話分という枠の中で最大限に人間の悍ましさと、それでもそこに残る未来への希望を見せてくれた刺さる人には刺さる作品です。
1990年代のダークな雰囲気とSF、近未来感、作画の美しさ、少年と少女と武器、女子高生と暗殺、オタクが大好きな要素てんこ盛りです。
未来への鬱屈としたどうしようもない不安が漂っていて、そんな中でも最後はほんの少しの希望を見せてくれた、相反するさまが魅力的でした。
物語のあらすじ
あらすじは、両親を殺された天涯孤独の少女が、後見人に暗殺者として育てられ、人を殺しながら日々を送り、自身と同じような境遇の青年と出会い、過去に決着をつけ、未来へと向かう話です。
物語の魅力
この物語の最大の魅力は、人間の醜さとそれに立ち向かう少年少女たちの儚さ、青さにあると思っています。
天涯孤独の少女である主人公は、自身の両親を殺した相手をそうとは知らずに後見人として頼り、殺人のすべを学びます。後見人の男と主人公との間には肉体関係がありました。少女は自身の親を殺した犯人が後見人だと知った後も、肉体関係を結ぶことに耐え、復讐の機会を狙います。あまりにも過酷な設定ですが、それがより物語の暗さを引き出し、美しいものとしています。4,50代の男と性行為をするという設定も、コンプラが緩い平成初期だからこそ生まれたものでしょう。
結局少女は自身と同じ境遇の青年と出会い、傷を舐め合うような、それでも純粋な愛を築き、二人は後見人の男を殺し、逃げることを選択します。最終的に彼らは後見人に対して復讐を遂げることはできましたが、青年は後見人が作った新しい暗殺者の少女に殺されてしまう。そして少女は、帰ることのない少年をずっと待ち続ける、そんなエンドになっています。
希望は容易く消えてしまう、それでも人は希望に縋って生きていくしかできないのかもしれないと感じさせられました。
後見人の男が犯した悪行に対して天罰は下りますが、人を殺してきた少年少女も決して幸せになれないのかもしれません。彼女がこれから先、新しく作られた殺人者に追われることになったとしても、帰ることのない少年を待ち続けることになったとしても、幸せであってほしいと思います。
蛇足
作画が作品の雰囲気とマッチしていてパーフェクトブルーやマルドゥックスクランブルが好きな人に見てほしいと思いました。上睫毛から下睫毛に至る一本一本までもが描かれる引き込まれるような印象の瞳が美しくて、醜い大人との対比がすごかったです、、風景なんかの描き込みもすさまじく、個人的には平成レトロ好きの方におすすめしたい作品でした。