81_短時間TRPG-4 新たなる希望 ~ TGFF2023秋祭 15分無料体験の衝撃 ~
TRPGは他のボードゲームと比較すると、プレイ時間が長いと言わています。1セッションに約3時間から-5時間かかるとすれば、30分程度で遊べるカードゲーム、約1-2時間のボードゲーム、約3時間のマーダーミステリと比較して確かに長いです。2000代のTRPG雑誌で「1時間TRPG」の必要性が書かれていた記事もあったように思います(出典不明)。記事を読んだ当時は短時間セッションは難しいと思っていました。
2010年代に入り、TRPGフェスティバル(前身のJGC)やゲームマーケットで『1/10スケール・クトゥルフ神話TRPG』を代表として、いくつかのTRPGシステムで60分無料体験会が開催され始めました。つい先日、12月9日と10日に開催されたゲームマーケットでも体験会が盛況だったそうです。
前置きが長くなりましたが、2023年10月8日(日)にTGFF秋祭に参加しました。TGFFはゲームデザイナーの北沢慶さんが個人的に企画運営しているイベントです。マーダーミステリ 、ボードゲーム、TRPGなどを時間の許す限り何回でも遊べるのが特徴です。TRPGでは『ソード・ワールド2.5』『新クトゥルフ神話TRPG』のような定番から、商業作品『夜のあしあと』先行体験、同人TRPG、海外のマイナーTRPGまで様々なシステムがラインナップ。時間的には90分卓と3時間卓および無料体験会が準備されていました。過去開催にあった6時間卓が無くなったのは時代の変化でしょうか。個人的にはゲーム慣れした人向けのイベントと思っていましたが、主催者X(旧ツィッター)を拝見すると初心者もけっこう参加していたようです。私はTGFF秋祭2023で3回の短時間TRPGセッションを遊びました。
◆エピソード1『D&D』15分無料体験会
最も衝撃的だったセッションが『D&D』15分無料体験会でした。参加する前は15分でどのような体験ができるのか半信半疑でした。開始時刻の少し前にテーブルへ行くと、各席にキャラシートを置いてあります。ハーフリングを選んで着席。体験会が始まると、DMはファンタジー世界観やルール説明を一切しません。5人のPCたちが仲間であり、人探しの依頼を受けた場面から始まります。探す対象は、モンスター見物に出かけた貴族の御曹司。聞き込みなどの情報収集シーンを省略して、黄金ドラゴンを前にビビっている御曹司を見つけ出します。ここからが本編。提示された状況でどう行動するかを、キャラの立場で考えて行動宣言します。必要ならば、DMが20面体サイコロを振ることを指示します。ここで面白かったのは、PCたちが説得交渉や言いくるめを試みたこと。盗賊の説得や戦士の言いくるめは技能値が低くて成功しません。戦士は戦闘が得意といっても、ドラゴン相手に真正面から戦うと勝ち目が低いため戦闘行動を選択しません。ただ一人、行動宣言とキャラ能力が一致していた魔法使いの活躍により状況を解決しました。
ルール説明なく、緊迫感ある場面を提示して『D&D』世界のPC として行動宣言させる趣向は短時間の体験会として良い趣向でした。各プレイヤーの持ち時間を考えると、5人だと1人につき1行動できるかどうか。プレイヤー3人のほうが適正人数だったかもしれません。
プログラムによると、ダンジョンマスター(DM)の嵯峨さんは合計7回の15分体験会を実施したようです。その後に90分セッションもDMされており、その行動力を称賛したいです。
◆エピソード2 同人TRPG『煌王国の双究士 ーデュアルナイツー』
TGFF秋祭2023で最初に遊んだ卓は『煌王国の双究士 ーデュアルナイツー』(GM:竜樹さん)。2023冬コミ発表の同人TRPG先行体験版です。科学技術の代わりに魔法の発達した20世紀風世界で、PCたちは物理攻撃と魔法の両方を習得した警察官という設定。いろいろ異なるが、賀東招二先生の『コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED』を連想する興味深い世界観です。当然、プレイヤー4人全員にとって初めて遊ぶシステム。しかし、同人TRPGに参加しようというゲーム慣れしたメンバーのようでした。
同人制作者が準備した、暴走した土木作業用ゴーレム制止任務というチュートリアルシナリオを遊びました。GMの竜樹さんが一度プレイヤーとして遊んだシナリオなので、進行はスムーズでした。データ量の多いサンプルキャラを詳しく説明せず、各プレイヤーは直感で選択。イベント解決では短時間セッションを意識して、潔くリソースをガンガン消費していくスタイルで進めました。特技などを使うと6面ダイスをたくさん振れるので、爽快感がありました。
多く説明し過ぎないGMの説明技術と時間を意識したプレイヤーたちの相互協力が予定通り90分でセッションできた要因でした。シナリオ難易度が低めだったことも要因の一つです。勝てるかどうかわからないギリギリだと長考になってしまう可能性もあったでしょう。
◆エピソード3 海外未訳TRPG『クトゥルフダーク』
TGFF秋祭2023で3つ目に参加した卓は『クトゥルフダーク』(キーパー:かしさん)。タイムスケジュール的に最後の時間帯のイベントです。パンフを見ると、珍しいシステムを3種類GMしているようです。ルールはたった1ページ。データなしで判定方法が6面体ダイス1-3個振るだけ軽量システム。基本1個、職業によって得意そうな行動ならば1個追加、プレイヤー任意で狂気ダイス1個追加できます。
シナリオは大正15年が舞台で、PCはポルトガル人の血を引く宣教師、電話交換手の女性、雑文書きの文士の3人が兼業で探偵業をやっているという導入設定でした。集まりが早く10分前倒しで始まり、進行が押して20分延長したので実質2時間でした。軽量システムなので、短時間セッションに向いています。けれど、即興で職業を活かした行動宣言をするので、プレイヤーの発想力が必要だと思いました。
余談ですが。電話交換手のプレイヤーさんはTGFF当日および前後の連休期間にCoC6eも7eも『トレイル・オブ・クトゥルー』など多数のクトゥルフ神話TRPGシステムを遊んだと言っていました。まさにTRPGプレイヤーの鑑みたいだと思いました。同卓の人たちも感心していました。
TGFF入場料は1500円。それに加えて『煌王国の双究士 ーデュアルナイツー』『クトゥルフダーク』は1セッション2000円の参加費を支払っています。映画1本相当の料金で能動的にインタラクティブな楽しみを3回も体験できた贅沢な1日でした。他のエンタメと比べてTRPGはそう高くない気がしました。
◆エピソード4『異世界転生RPG サンサーラ・バラッド』
2019年7月14日にTGFFで1時間体験卓『異世界転生RPG サンサーラ・バラッド』に参加しました。2019年12月発売の商業TRPGの先行体験。GMはゲームデザイナーの千葉直貴先生。前半20分は簡単な世界観説明とキャラ作成。作成と言っても、5人のプレイヤー全員が同じサンプルキャラを使用し、このTRPG最大の特徴「チート能力」表でd100を振る程度。地の申し子、改変能力、召喚、強力無双、植物操作と個性豊かなチート能力のPCが揃いました。メインプレイが始まると、20分ほどは独特のロールプレイをオファーし褒め合うルールを確認して、PC同士が交流ロールプレイして場を暖めます。ラスト10分間はチート能力を駆使してドラゴンと戦い、勝利して1時間以内にセッション終了。特技データなども多いTRPGシステムですが、「チート能力」に限定した異世界転生モノらしい雰囲気の体験会でした。
◆短時間TRPGセッションのコツ
紹介した話の他に、私はTGFFで3時間セッションにも何回か参加しました。普段遊んでいるサークル内でのTRPGセッションや一般的なコンベンションと比較すると3時間は短いです。これまで参加した経験から、短時間セッションをうまく進行するコツが5個あると思います。
(1)参加者全員が時間制限を意識する
(2)GMが説明を簡略化する
(3)GMが計画的に事前準備する
(4)プレイヤーが進行に協力的
(5)プレイマナーが良い
逆に、下記がセッションが長引く要因です。これらは短時間セッションではあまり見られないです。
・GMが世界観を語り続ける。
・GMがセッションで使用しないルールまで説明する。
・GMが情報を出さない。
・プレイヤーの行動宣言に対してGMが考え込む。
・PCが依頼を受けないとゴネたり、報酬アップ交渉を始める。
・プレイヤーがPCの行動を長考する。
・プレイヤーたちが作戦会議を始めて長時間話し合う。
・セッションと関係ない雑談に脱線する。
5時間以上かける長時間セッション、PC間のロールプレイをじっくり演じたり、達成困難な目的のため知恵を駆使して相談したり、ギリギリ紙一重の熱いバトルなども楽しいTRPGセッション体験です。しかし、新しいTRPGシステムの試行体験、1日で複数の卓をバラエティ豊かに遊びたいとき、諸般の事情で時間制限があるときなど、短時間セッションを遊ぶのも楽しいと思います。
個人的には、2023年は3年振りに対面セッションに参加できたことが嬉しかったです。オンラインセッションと対面セッションの両方を遊ぶ、二刀流のTRPGユーザーが増えたのではないでしょうか。これも新たな可能性と考え、今後のTRPG界全体の発展を期待します。