オーフ・ザ・レコード物語;20XX年のゴッチャ 登場人物と作者、ジャーナリズムについて少し記す
作中の登場人物には往々にしてモデルが存在する。
完全に架空のキャラクターも多々居るが、実在の人物を念頭に置いて描いた者もいる。
但し、一人だけとは限らない。複数の人物をモデルにし、それに想像力を加えて、キャラクターを作り上げているケースが殆どである。
一例を挙げれば、主要舞台の一つ、麻布十番の外れのバー「オーフ・ザ・レコード」と店主の「ルーク」は実在しないのだが、「ルーク」のモデルは複数存在し、その一人は作者自身である。
申し添えれば、新野司郎というペン・ネームを使う私は「ルーク」程の高齢でもないし、バーの経営もしていない。国際ニュースを専門とするジャーナリスト上がりのライターの一人に過ぎない。
***
ジャーナリズムの世界は徹頭徹尾ノン・フィクションの世界である。そこにフィクションを交えれば、捏造と断罪されてしまう。取材の段階では現実に沿った想像力めいたものが絶対に必要だが、報道する時点でそれは禁じ手である。確実に事実と思われること、限りなく真実に近いと信じられることしか報ずることが出来ない。
推測・憶測を多少交えることがあっても、そういう憶測もあると明確にしなければならないし、それら憶測の類を主要テーマとし、あたかも事実であるかのような印象を与える報道をしてはならない。
当然である。
しかし、長年、このジャーナリズム、ノン・フィクションの世界で仕事をしていると、実はストレスが溜まる。勝手な言い草に過ぎないかもしれないが、取材の過程で駆使した想像力の賜物、結果的に架空となるストーリーが山のようになって頭の中に蓄積していくからである。
本作品「20XX年のゴッチャ」には、この山積した架空のストーリーの数々をさらなる想像力で膨らませ、これでもかとばかりに詰め込んだ。これが近未来空想小説と称する理由である。
結果、長くなり過ぎたのは大いなる反省点だが、本作品は作者のカタルシスなのである。
###
©新野司郎
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?