新宿毒電波通信 第三号 特集
積極的平和祈念会議
山本 拓也
8月の都庁プロジェクションマッピングのテーマは「戦争」でいきましょう、と電通マンが提案した。都の広報部の面々は皆頷く。
「具体的には『張作霖爆殺事件』を題材にしたプログラムとか良くないっすか? 領土拡大を目指してニッポンが一番イケイケだった頃の事件だし、国民に勇気を与えられるじゃないっすか!」
「素晴らしいですね! 爆殺シーンなんて派手だし、バズりますよ! あっ、でもあまり過激にするとコンプラ的に……。何時ぞやのパリ五輪では、開会式のギロチンの演出が炎上したなんてこともありましたし……」
「実写が生々しいならアニメにすれば大丈夫っすよ。さらに登場人物を動物化してほのぼのキャラにしたら、爆殺で肉片が飛び散ってもギャグっぽくなるし、ノーリスクじゃないっすか? 『誰も傷付けない爆殺』をコンセプトにしましょう!」
「さすが、細やかな配慮が行き届いてますね! いつもながら、アジャイルでフレキシビリティが高くて、勉強になります!」
「さらに、クライマックスの爆殺シーンに合わせて、都庁の屋上からレプリカの赤紙を大量にばら撒いて血飛沫を表現したら観客もみんな爆さ…、いや爆上がりっすよ!」
「最高です! そうだ、赤紙に再生紙を使って『持続可能な爆殺』というコンセプトも加えましょう!」
会議はいよいよ白熱していった。戦時下の電力統制の為に会議室のエアコンは止まっていて、電通マンの顎髭から汗が滴り続けていた。