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#58 聴導犬に会いに行く(後編)

今回は後編です。
前編はこちら。

中編はこちら。

こんにちは。学生アルバイトの横田です。
中編では、補助犬についての概要と、補助犬使用者を取り巻く実情をまとめました。
今回は聴導犬にフォーカスし、佐渡の聴導犬ユーザーから伺った生の声をお伝えします。

このたび取材を引き受けてくださったのは、佐渡にお住いのTさんご夫妻と聴導犬の守(まもる)。
Tさんと守は、手話サロンひるかめに参加していただいたこともあります。

■Tさん
3歳の頃、感音性難聴と判明する。補聴器を装用しながら、聴導犬を利用している。2016年から守とともに生活を始める。奥様は2010年から2020年まで聴導犬のエルモを利用、2023年には2代目聴導犬のジャックの訓練が開始される。

■守(まもる)
ヨークシャーテリア。2015年生まれで、現在7歳。2016年に聴導犬認定試験に合格し、Tさん宅に迎え入れられる。
音が鳴ったら音源を確認し、確認後ユーザーを呼びに行く。Tさん自宅内では、玄関チャイム、目覚まし、キッチンタイマー、扉のノック音、火災警報、炊飯器、夫婦間の呼びかけを担当している。

聴導犬とユーザーを取り巻く実情

中編でも少し触れましたが、身体障害者補助犬法や障害者差別解消法により、交通機関や施設は補助犬の同伴を受け入れる義務があるものの、実際には聴導犬の同伴が断られることが多いというのが現状です。

Tさんは実際に経験した事例として、全国展開しているチェーン店に行った際、企業のHPには補助犬の入店を認める旨が記載されているにもかかわらず、店舗では入店を断られ、本部と店舗で対応にずれがあったというお話をお聞きしました。

長く暮らしている佐渡でも、そういったことが少なくないため、Tさんはあらかじめ要約筆記者に依頼して電話で施設に確認をしてもらい、聴導犬の同伴を断られた場合は、新潟県障害福祉部障害福祉課及び佐渡保健所に報告することで、施設側に指導をしてもらっています。またTさん個人としても、初めて入る店には聴導犬について知ってもらうための資料を渡したり、入店可能であった店をリストアップしたりと、工夫をしているそうです。

聴導犬への理解を広めるために

社会全体の聴導犬への理解はまだまだ足りないのが現状であるとTさんは述べます。そして、聴導犬への理解が進まない原因として、ユーザーの少なさがあるのではないかとおっしゃっています。

中編でも触れたとおり、厚生労働省が発表しているデータによると、2022年10月1日現在、新潟県では2頭、日本全国で58頭の聴導犬が稼働しています。日本全国で盲導犬が848頭稼働していることと比べると、聴導犬の数が多くないことが分かります。
Tさんはユーザーが増えない理由として、聴導犬に関する知識や情報を得る機会が少ないこと、ユーザーの声が聴覚障害をもつ当事者に届かないこと、当事者の中に犬に助けてもらわなくても生きていけるという価値観があること、聴導犬育成団体(全国に約20)に手話ができる人が少ないことなどを挙げています。

「補助犬ユーザーにも補助犬の理解を広めるために努力する義務がある。」補助犬を取り巻くこのような状況を変えるためには、ユーザー自身も行動しなければならないと考えるTさんは、小・中学校での講演や福祉関連のイベント、地域行事に積極的に参加し、PR活動をしているそうです。補助犬について知らない人にその存在を知ってもらう、この同伴拒否0運動の重要性を語ってくださいました。

聴導犬の役割

上でも紹介しましたが、聴導犬の守の仕事は、Tさん夫妻には聞こえない音の情報を伝えることです。しかし、守が担う役割はそれだけではないとTさんは言います。

「夫婦二人とも聞こえないので、緊急時の音を知らせてもらえる安心感はとても大きいです。聴導犬の助けなしでは、災害訓練の時に、緊急連絡がきても気が付かないことがありました。緊急の情報を逃さない安心感は、普通のペットを飼っていてもなかなか得られないものだと思います。」

また、聴導犬を連れていることで、外見ではわかりづらい聴覚障害にも気づいてもらえる、聞こえないことを理解してもらいやすいということも大きなメリットとして挙げられていました。

Tさんのお話を聞いて、聴導犬は音の情報をユーザーに伝えるだけでなく、ただそこにいるだけで果たす役割があることを知りました。補助犬の存在がユーザーの不安を減らし、ユーザーの安心安全な生活を支えていることが分かりました。

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今回の取材を通して、僕自身も聴導犬について学ぶことができましたし、記事を読んでくださった皆さんにも聴導犬の存在を知っていただくことができました。
この記事がTさんの同伴拒否0運動の手助けになれば幸いです。

最後になりますが、取材を引き受けてくださったTさん、ありがとうございました。

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文:横田大輔
Twitter:@chan____dai

監修:Tさん

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