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#91 旅するろう者─韓国 ソウル編─

「ろう者の中には、海外旅行に出かける人が多い」という話を聞いたことがあります。
もちろん、すべてのろう者が海外に行くわけではありません。中には「飛行機には絶対乗りたくない!」という人もいますが、「言葉が通じなくて不安だから」という理由を挙げる人はあまりいないようです。
日頃から、コミュニケーションにおける社会的障壁を感じているため、海外で言葉が通じないことへの不安が少ないのかもしれません。

前回の「ベトナム ハノイ編」に引き続き、今回は「韓国 ソウル編」です。新潟空港からの乗り継ぎで訪れましたが、せっかくなので数日滞在することにしました。



1. 約20年ぶりの韓国

初めて韓国を訪れてから約20年が経ち、今回は2度目の渡韓です。今回は韓国語を勉強中ということもあり、看板の文字を読めるようになったことに感動しました。ただ、文の読解に時間がかかり、自分の勉強不足を痛感する場面もありました。日本語が得意でないろう者が日本語を読む時の感覚に近いのではないか、と言語の壁を再認識しました。


2. 韓国手話

韓国手話と日本手話は非常に似ていると言われることがあります。
単語を比較すると、およそ50%が全く同じもしくは似ている単語であるというデータもあるようです。

しかし、韓国手話を見て50%理解できるかといえば、そうではありません。韓国のろう者と交流する際には、私に合わせて国際手話や日本手話で話してもらっていましたが、韓国人同士の韓国手話での会話が始まると、全く理解できませんでした。

とはいえ、ろう者の身体的な感覚は世界共通だと思う場面もありました。


3. 手話通訳

滞在中、幸運にも韓国のろう者が参加するイベントに招待されました。手話通訳は当然ながら韓国手話なので、開始前は少し不安でしたが、実際には「これはわかる!」という瞬間が何度もあり、イベントを楽しむことができました。

韓国手話がわからない私でも内容を理解できたのは、通訳者が、日本人である私向けにCL表現(空間や動作を使った表現)を多めにしたり、指文字を減らしたりと、視覚的に伝わるよう工夫してくれていたおかげです。また、通訳者の明るい雰囲気が会場全体を盛り上げていたことも、理由にあげられます。もちろん私だけではなく、参加していた他のろう者たちも素晴らしい笑顔でした。

後で知ったのですが、この手話通訳者はCODA(コーダ)とのことで、ろう者と共にいる姿に、全く違和感がないのも納得でした。



円安の影響はあるものの、コロナ禍が落ち着き、国境を越えたコミュニケーションは以前よりも簡単になっています。異文化理解のためには「郷に入れば郷に従え」、異なる文化や習慣に触れることで視野が広がり、自分自身を見つめ直す機会にもなります。

今後も、日本国内だけにとどまらず、国際交流を続けていきたいと思います。


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文:臼井千恵

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