【記者コラム】ペットボトルの水
今年5月の連休明けに、新潟市中央区の開志専門職大学で約50人の1年生を前に特別講義をする機会があった。大学側からオファーをいただき、社内で調整した結果、私が担当することになった。講演内容はメモの取り方や、文章の書き方ということで、私の記者経験が少しでも学生の参考になればと思い、オファーをお受けすることにした。
実は、私は昨年3月に上越市倫理法人会でもネット新聞の取り巻く状況について講演をさせていただいたことがある。その経験もあり、今回の大学講義もお受けしたのだが、結果的に大学の特別講義はまずまずの出来だったと思う。
学生からは「どんな本を読んだらいいか」「メモを取る時に、滑舌の悪い人がいる場合はどうしたらよいか」といった素朴だが重要な問いも出て、学生たちは真剣に聞いてくれていたんだなと感じとることができた。
ひるがえって、今のマスコミ状況はどうか?
日本の現状は、まさにアメリカの3S政策を思い出す。3S政策とは、screen(スクリーン)、sport(スポーツ)、sex(セックス)を用いて大衆の関心を政治に向けさせないようにする政策とされるが、日本においては、主にGHQが日本占領下で行ったとされているものが知られている。
昨今、スポーツ紙のこたつ記事の増加や、テレビでのメジャーリーグ大谷翔平の過剰報道など、「思考停止」とも言わざるをえない大手マスコミの状況が見える。TBS系の「報道特集」はスポンサー探しに苦労しているとも聞くが、お笑いバラエティだけでなく、硬派な番組も成り立つ世の中でなければ、「民度」が低いと言われても仕方がないのではないだろうか。
ある東京都の団体主催のオンライン講演会で、元全国紙記者だったかたが、「新聞とはいわばペットボトルの水だ。YouTubeのような炭酸水ではなく、公共の水道よりも安心感があり、付加価値がある」と語っていた。
我々、地方メディアも「ペットボトルの水」として、政治、経済、事件報道などを通じて、読者の報道リテラシーを高めることにつながるように努めたいと思う。
(編集部・梅川康輝)
にいがた経済新聞 2024年10月13日 掲載
【にいがた経済新聞】