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【記者コラム】フジテレビ問題が対岸の火事ではない理由
この冬一番の強い寒気で新潟が記録的な大雪、石破茂首相と米国トランプ大統領が初会談、そのトランプは米国がパレスチナ自治区ガザを所有する構想をぶち上げ・・・
ここ数日、注目度の高いニュースが続いたのだが、やはり2025年上半期で「フジテレビ問題」を超えるトピックは、現段階でないと言えるだろう。
フジテレビの幹部社員がタレントに、自社の女性社員を「上納」したのでは、という疑惑について、異例の10時間を超える記者会見。その後にこの事件をスクープした週刊文春が訂正記事。「トラブル発覚後も、当該のタレントを起用し続けたこと自体が問題」という見方・・・
そうした中で現在どうなっているかと言えば、第三者委員会で実態調査が実施され、その内容がまとめられ報告されるのは3月末と見られている。その中には巷間同社の権力二重構造の元凶とされる日枝久取締役相談役の出処進退も当然含まれる。
この間に、フジテレビの広告クライアント80社以上がCMを差し止め、今や同局の番組はAC(政府広告)だらけになった。CM出稿を止めていた企業の中では先日、キンライサーがCM再開を発表したものの、多くのスポンサーは第三者委員会報告の行方を踏まえてCM再開の判断をする姿勢なのだという。
これが招くものは何か。ジャーナリストの佐々木俊尚さんがVoicyで「おそらくテレビ史上初めてテレビCMの効果測定がされる」と話した。広告の効果測定―その広告によって、販売や集客など、いかに消費行動に繋がったか―は、WEB広告では比較的出やすいのだが、インターネット以前のテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などマス媒体では、それほど明確なものではなかった。
大手企業は、これまで地上波テレビCMに巨額を払っていたが「フジテレビのCMが2カ月ストップしたけど、売上に全く影響がなかった」という事態がもし起きると、どうなってしまうか。「大手企業の広報宣伝部、大手広告代理店、テレビ局という三位一体の構造が、いよいよ破壊される可能性がある」と佐々木さんは言う。
これは果たして「テレビCMの功罪」だけで済む話なのだろうか。他のキー局はどうなのか、ラジオはどうか、新聞・雑誌は、というように「広告宣伝」そのものが試される時代になりはしないだろうか。
表題で「対岸の火事ではない」としたのは、われらがにいがた経済新聞も、まさしくこの「リトマス試験紙」を免れないということだ。にいがた経済新聞はほぼ100%に近く、クライアントの広告出稿によって運営できている、支えられている。
まず1つは、媒体としての信頼度を担保すること。信頼に足る、実力ある新聞であることは最低限。その中で、いかにクライアントの皆様が「広告を出したくなる」紙面づくり、企画づくりをするかがますます求められる。思考停止したまま、危機感無く同じことを繰り返していては、時代の流れに振り落とされ、見向きされなくなることは必至だ。
ここからいよいよ「媒体社とスポンサー企業(加えて、広告代理店)の関係性にメスが入る」そんな2カ月になる。
伊藤直樹
にいがた経済新聞 2025年2月9日 掲載
【にいがた経済新聞】