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【記者コラム】起業家が大量流出する新潟は「サレ妻」なのか?

先日ある方と話していて、こんなことが話題にのぼった。

「新潟県は、起業する人より他の県外に流出する起業家の方が多い」

新潟県といえば、「開業率」(『新規に開設された事業所』を年平均にならした数の『期首において既に存在していた事業所』に対する割合)が全国的にも最低ランクなのをご存じだろうか。

厚生労働省の「雇用保険事業年報」に全国開業率の推移が掲載されているが、2018年度の調査では全国平均4.4%に対して新潟県は2.9%で47都道府県中46位。2009年の調査では47都道府県中最下位だった。

現在は「第4次ベンチャーブーム」と言われるほど起業・創業の分野が熱を帯びている。それを考えると、新潟県の実情はさびしい限り。

経済メディアの編集部にいると、普段からスタートアップやベンチャーのニュースリリースも数多く扱っていることから、新潟の新規開業率がそれほど低いとは気付いていなかった。県や民間シンクタンクでは、その理由を①廃業率の低さ②起業志望者の県外流出の多さにあると分析している。

廃業率の低さは決して悪いことではないのだが、地元経済の新陳代謝が進まないのは悩みでもある。経済が「内向き」なのだな、とも感じる。

そして懸案の人口流出同様、起業家もまた県外に流出している。どれだけ手厚いスタートアップ支援や起業家育成を行っても、結局はマーケットの大きい首都圏に出ていかれる。そう思うと砂漠に水を撒いている気分だ。

リモート就労やダブルローカルがこれだけ浸透しても、歯止めがかからないのは、地域として決定的に魅力が乏しいのかもしれない。そう考えると、手厚くする場所は「そこ」ではなかったんじゃないか、という気もする

夫に不倫された妻のことを、最近は「サレ妻」と呼ぶらしい。

さんざん予算を投入して、起業家が一人歩きできるまでサポートしたところで最後に出ていかれる新潟は、さながら、かいがいしく尽くして結局よその女に走られる「サレ妻」のようではないか。

せめて新潟の「都合のよさ」が世に知られ、住まないまでも交流人口や関係人口の増加に繋がってほしい。それに繋がるアクションにも積極的に取り組んでほしい。

サレ妻のせめてもの意地、見せませんか。

(編集部・伊藤直樹)

にいがた経済新聞 2024年6月30日 掲載


【にいがた経済新聞】


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