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『新潟市西区のむかしばなし』第12話「明るい道」

【第12話】明るい道

《行動範囲》寺尾 寺尾東 寺尾前通 坂井東二丁目

はなしは

はずみにはずんで

夜が来て

ぐっすり寝ていたら

太陽に笑いながらたたき起こされた

太陽はきっと 僕たちが明るい道をつくるのを楽しみにしているんだ

青空が きれい

僕たちが見たかった青空だ

お祭り日和 みんな元気だ

始めよう

「ぃよぉぉぉ!」

まぬけなけ声に みんな ぷっ と 笑う

おねがいします

めのまえの 草や土に 手を合わせて おじぎをする

ぱんっ ぱんっ

手をたたく

ふたりの姫様が

笹笛を鳴らす

可愛い音が 緑いちめんに響きわたり 草が踊る

草が 踊りながら「おいで おいで」と 僕たちを手まねく

さぁ さぁ さぁ さぁ

見せてごらん

君たちの

明るい道を

見せてごらん

「よいさー!」

草をちぎる 草をちぎる 心を込めて 手でちぎる

ざっ ざっ ざっ ざっ

草をちぎる ひょうしに合わせて しこをふむ

しこをふむ 土をふむ 心を込めて 足でふむ

どすん どすん どすん どすん

どすこい おまけだ どすん どすん

さーあ 楽しくなってきた

歌えや 踊れの 大さわぎ

歌にあきたら草をちぎり 踊りにあきたらしこをふみ

みんなの役目は 自由気ままに入れかわる とどまるところを知らない 大はしゃぎだ

ふたりの姫様も しこをふみだした

小さな足で どすん どすん

この世のものとは思えない可愛さだ

みんなのやる気がうんとわく

太陽もうんうん笑っている

川だ

もうすぐだ!

「おっしゃー!」

幼いふたりがわれさきにと

川へ 川へ 道を ひらく

ふたりに負けるもんかと ほかのみんなも すごいはやさで 草をちぎる

さっきまでしこをふんでいた ふたりの姫様が 踊りだす

けらけら と 笑いながら踊りだす

道だ 道だ よい 道だ

道だ 道だ よい 道だ

道が できるぞ よい道だ

よい道だ よい道だ よい道だ よい道だ

よい道だ よい道だ よい道だ よい道だ

よい道だ よい道だ よい道だ よい道だ

よい道だ よい道だ よい道だ よい道だ はあーぁ!

よよいの

よいっ

拍手がまきおこる

明るい道の完成だ

地べたにすわり込んで

僕たちは道をながめる

山のむこう は

おれんじ色の空

太陽の明かりが

みちを 照らす

明るい 明るい

未来 に

開く

【 おわりに 】

ありがとう。僕は今、君の体から離れた。君は今、いつもの君に戻っている。

ありがとう。ようやく君に・・・何て言えば良いのだろう。言葉ってたまに難しい。

とにかく、君に僕たちのことを知ってもらえたことが嬉しいんだ。

新潟市西区で暮らしていた僕たちのことを、やっと君に伝えることができた。

ありがとう。

本当にどうもありがとう。

その後、僕たちはたくさんの子供たちにめぐまれて、新潟市西区は子供たちの笑顔でみちあふれた。

誰の子供とか、そんなものは無い。みんなの子供たちだ。

子供たちのおかげで僕たちの暮らしはひろがって、新通、坂井にはイネの村ができて、大きな田園がひろがった。

いっぽう、海のほうにはシオの村ができて、五十嵐一の町から五十嵐二の町にかけて、綺麗な塩田がひろがった。

幼いふたりが、それぞれイネの村とシオの村のお世話をして・・・と。おっと、その頃の彼らはもう立派に成長をしていて、幼くはなかった。

村ができたら、本当は村をまとめる「きまり」をつくらないといけないのだけれど、「きまり」は楽しくないし衝突しょうとつをうむから、僕たちはつくらなかった。

そのかわり、バカが子供たちをしつけてくれたんだ。

バカは子供たちのヒーローだった。子供たちをつれて色々な場所に行ったり、色々なものをつくったり、ご先祖さんのお話をしたり、知らない草を食べるゲームも相変わらず楽しく続けていた。

天気のいい日は、みんなで集まってひなたぼっこをした。小針の、緑のはらっぱ。子供たちをひざの上に乗せて、のんびり、ぽかぽか。

子供たちは僕にいっぱい話をしてくれた。未来についてだ。

「こんなことやあんなことがしたい!」

子供たちはみんな夢を持っていた。

水道公園は、子供たちの秘密基地だった。いろんな動物たちがいて、子供たちは動物たちと仲良く遊んでいた。

子供たちはとにかくいっぱい遊んだ。

水道公園で遊んで、あきたらこんどは平島公園で遊ぶ。あそこは当時、川のほとりだったから、川でカワザカナやザリガニたちと遊べたんだ。夢のような遊び場だった。

水道公園と平島公園をまっすぐにつなぐ道が、今でも残っている。

この道は、子供たちがつくったんだ。

水道公園と平島公園のあいだを、たくさんの子供たちが何度も何度も駆けまわった足あとが、自然と道になったんだ。

一万年以上たった今でも、この道の上を現代の子供たちが歩いている。僕はそれが本当に嬉しい。未来が楽しみでわくわくする!

いっぱい遊ぼう!

めいっぱい冒険をしよう!

ちょっとくらい怒られてもかまうもんか。それくらいが丁度良い。僕もそうだった。

いっぱい遊んで、めいっぱい冒険をして、明るい明るい未来をつくるんだ!

ずいぶんとお話が長くなってしまった。ごめんね。ありがとう。おわりに、僕はいつも君のそばにいるから、困ったことがあったら僕を思いだしてね。僕は、よろこんで君のちからになる。

本当にどうもありがとう。

またね。

あ。

ふたりの姫様だ。

未来は いつも 明るい にひっ!!

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