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『新潟市西区のむかしばなし』第3話「ゆびきり遊び」

【第3話】ゆびきり遊び

《行動範囲》寺尾 寺尾東 寺尾上一丁目 上新栄町

そしてつぎの日

朝もはやくから僕たちは 山に道をつくろう と 盛りあがっていた

山のてっぺんにのぼる道 だ

どうせやるなら まっすぐな道にしよう 山のてっぺんまで まっすぐにのぼる道にしよう と 話はすすみ

「おもっしぇーな!」

「はよ見てみてえ!」

と みんなの言葉が はずむ

おなかもすていたので 今回も ふた手にわかれることにした

みち組 と めし組

山に道をつくる「みち組」と 海へめしをとりに行く「めし組」だ

「で だれがみち組になるん?」

しーん

みんな めをそらす

ちからしごとは やりたくない

だれも みち組に なろうとしない

ここで暮らして三日目 さすがに みんな 疲れていたのだ

道は 見てみてえ けど ちからしごと は やりたくねぇ

みち組は いや ら

おれ めし組になって のーんびり海で サカナたちと 遊びて

困ったふたりの姫様が「ゆびきり」で決める と いった

ゆびきりげんまん

うそついたら

はりせんぼん

のます

ゆび きった

シロツメ草をつかった 遊びだ

まず みんなで野原に行く

そこで それぞれが これだと思ういっぽんのシロツメ草をえらび いったいいちの勝負をする

シロツメ草をからめて にらみ合い

ゆびきりげんまん

うそついたら

はりせんぼん

のます

ゆび きった

歌のあとに ちからいっぱい ひっぱる

シロツメ草の切れたほうが 負け 切れなかったほうが 勝ち

でも

勝ったほうが みち組

みち を つくる

ふたりの姫様がいう

永遠に 途切れない道を つくりたい

僕たちは

朝っぱらから

野原のど真ん中で

「みち組」か「めし組」かの勝負をかけた

ゆびきりを始めた

ふたりの姫様がうたう

ゆびきりげんまん

うそついたら

はりせんぼん

のます

ゆび きった

シロツメ草が ぷつり と 切れる

「おっしゃ!めし組!」

「あいや みち組らてや 」

ふたりの姫様が

くすりと 笑う

みんな ふたりの姫様を意識し始める

ふたりの姫様を もっと笑わせたくて

「かかってこいやあ!」

おおげさに なる

ふたりの姫様が

笑顔で うたう

ゆびきりげんまん

うそついたら

はりせんぼん

のます

ゆび きった

シロツメ草が ぷつり と 切れる

「おっしゃー!めし組!」

「みち組らねっかて おれ 」

ふたりの姫様が

めとめを合わせて

笑いころげる

みんな 嬉しくなる

ふたりの姫様が笑うと なぜか 僕たちは 嬉しくなるんだ

嬉しくて あきらめがついて しまいにゃ みち組 だろうと めし組 だろうと どっちでもよくなる

ゆびきりげんまん

うそついたら

はりせんぼん

のます

ゆび きった

シロツメ草が ぷつり と 切れる

「へ わかったて みち組出たっけ しゃーねてがんに おれみち組やるっけ おめさんたちはよめしとり行けて!」

みんなで おなかを抱えて笑いころげて いちにちが始まった

笑いころげて始まったいちにちは

いちにちじゅう

楽しい!

楽しくて ずっと笑顔でいるものだから

ヘビたちにでくわしても 笑顔でこんにちは

楽しい気持ちはヘビたちにも伝わる

ヘビたちも 楽しい気持ちになってゆく

あまりに楽しいものだから

みち組も めし組も

あっという間にやることを終わらせ

ひと足さきに海から戻っためし組は 駆け足でみち組のもとへむかい 道づくりのあと片付けを手伝った

刈りとった草がたくさん余っていたので みんなですそのまで持ち帰った

草は 火を起こすのにつかうのはもちろん 寝床 屋根 何にでもつかえて便利

草を抱えて 道を行ったり来たりしているうちに 道もしっかりとふみ固められた

汗びっしょりだけど みんな笑顔だ

完成した道をながめながら みんなで拍手をした

楽しい気持ちのまま

日が暮れて

夜が来た

みんなで火をかこみ

サカナを 焼く

ぱちぱちと 音がする

みんなで めを閉じて 音に耳をかたむける

少しずつ いいにおいがしてくる

サカナの焼ける

海のにおいだ

しばらくめを閉じたまま 海のにおいを じっくり と あじわう

じっくりと じっくりと

そしてめを開き 焼きあがったサカナをみつめ 感謝する

「ごちそうさん いただきます 」

手を合わせて 命をいただく

「ごちそうさん いただきます 」

今を生きるために 僕たちは命をいただくんだ

口の中で サカナの命を 噛む

いくども いくども 噛む

めを閉じて 口の中の音に 耳をかたむける

サカナが 海できいていた すべての音が聴こえてくる

もしくは サカナの演奏 だ

いつまでも聴いていたい サカナの 命の演奏

噛んで 噛んで いくども 噛んで

やがて 飲み込む

からだじゅうに サカナの命がめぐる

「ごちそうさん でした 」

ごちそうさんに 手を合わせる

「ごちそうさん でした 」

楽しかったいちにちが もうすぐ終わる・・・と そのとき ふたりの姫様が提案をした

明日は なにも しない

みんな しん と なる

ふたりの姫様が 決めた と 言う

明日は なにも しない なに してもいい しらない ぴょん

そう言って にこっ と 笑う

「おっしゃー!」

みんな嬉しくって 笑顔でとびはねた

明日もめいっぱい 楽しもう 楽しもう

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