2023年3月時点で電気料金の高騰は「燃料調整費」が大きな要因
企業であろうと個人であろうと関係なく、電気料金は使う人全員から徴収されるものです。
この1、2年で電気料金が高くなったのは家庭であろうと企業であろうと変わらないでしょう。
個人での電気料金の支払いが寒冷地の北海道で月に8万円や10万円といった金額になったことも報じられていますが、なぜ、よく理解しづらい部分がある電気料金の高騰について解説してみようと思います。
2022年の電力卸売価格は過去5年対比で倍以上
以下は、先進国のエネルギーデータを扱う機関の一つであるIEA(International Energy Agency,世界エネルギー機関)が2023年2月に出した電力市場に関するレポート『Electricity Market Report 2023』内にある各国の年間卸売価格の2017年-2021の平均額と2022年の価格を比較したものです。
表の見方としては、紺の棒グラフが2017~2021年の卸売市場における平均額で、水色が2022年の金額になっています。
これは卸売市場の平均値で、新潟でんきを扱う新潟エナジーのような小売電気事業者の立場で見ると調達価格、つまり原価です。
ここに託送料金送と呼ばれる電力会社が送電線を使って電力を供給するために必要な費用をはじめとした各種経費に加え、電気料金の明細に記載されている燃料調整費(燃料価格の変動に応じて徴収する費用)が上乗せされて企業や個人で利用する電気料金として請求されます。
IEAの制作した図ではUSD/MWhと記載されていますが、これをkWhに直すと1MWh=1,000kWhですから、グラフ上では細かい数字は分かりませんが仮に2017−2021期間の平均を90ドルとし、5年間の平均為替レート109円を当てはめると$9,810/MWh=9.81円/kWh。
2022年の価格は、仮に$180とし、年間の平均為替レートである131円を当てると$23,580/MWh=23.58円/kWhとなります。あくまでも試算でしかありませんが、過去5年間平均と比較し2022年の電力卸売価格は2倍以上も高騰しているのです。
日本を軸に左側と右側の国々で、卸売価格が高騰しているものの、イタリアは3倍以上も高騰しているのに対し、アメリカは2倍となっているものの100ドルを超えていません。
この違いはどこから起こるものかといえば、今回の高騰は化石燃料が高騰化したことによって引き起こされているものであり、化石燃料の輸出大国であったロシアからの輸出を多く受けていた日本と欧州各国が大きな煽りを受けたことになります。
アメリカは自前でシェール革命によって採掘が困難とされていたシェールガスやシェールオイルの採掘技術が発展したことによって大量のエネルギー資源を生産できるようになっていることから、電気料金は日本よりも安いのです。
他にはインドも石油や天然ガス、石炭などの国内に資源を保有していますし、ノルウェーも水力発電が欧州最大の国ですし、オーストラリアも石炭や天然ガスの埋蔵量が世界で最大級とされている資源保有国のため、安穏としているわけではないものの資源を保有できない日本と比較すると安心できる状態であることは間違いなさそうです。
日本の発電構成は、ガスと石炭の合計が65%以上と、依然としてガスが主流です。
しかし、再生可能エネルギーによる発電は増加しており、2022年には前年比4%増となる見込みです。2025年には、再生可能エネルギーによる発電量は2022年比で21%に達し、石炭とガスによる発電量の減少を一部相殺するとIEAは予想しています。
燃料費調整額について
燃料費調整制度における「燃料費調整額」の計算式は以下の通りです。
「燃料費調整単価」とは、「連続する3ヵ月間」の平均燃料価格をさします。これを、その「3ヵ月間」の最後の月から起算して3ヵ月目の価格に自動的に反映させるのです。
たとえば、2023年3月の燃料費調整額の計算に用いられている「燃料費調整単価」は、2022年10月~12月の平均燃料価格ということです。
なぜ、3ヶ月なのか。
これは電気を利用する私たちが調達費用の高騰によって大きく負担を強いられないように電気料金負担を軽減する目的のためです。
さらに「『基準燃料価格』+50%」という金額の上限が設定されており、「基準燃料価格」は料金設定時の平均燃料価格(基準となる3ヵ月間の平均)です。
「基準燃料価格」と現在の燃料価格との間には約3ヵ月のタイムラグがあるので、その間に燃料価格が急騰した場合は、「規制料金」の上限を超過した額を電力会社が自腹を切って支払う必要があります。つまり、電気を売れば売るほどに経費が高くなるのです。
いよいよその負担に電力会社が耐えられなくなった場合に、国に「値上げの認可」を申請することになるのですが、既に電力大手10社の電気料金はすべて「規制料金」の上限に達してしまっています。
現状は大手電力会社5社(東北、北陸、中国、四国、沖縄)が4月からの家庭向け電力の規制料金の値上げを認可申請しているものの、経済産業省は「厳格かつ丁寧な査定」をすることとなり5月以降になる見込みです。
また、東京電力と北海道電力が6月からの値上げ申請を行っているため、全国各地で影響を受ける可能性があります。
新潟でんき(新潟エナジー)へご相談ください
世界情勢や燃料価格に関して個人や法人ができることはありませんが、消費電力を抑えるための設備投資を行うことや再生エネルギーによる自家発電の導入など、対策として取れる手段は確実に存在します。
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