【福祉施設の表現活動】フジライフサポート 吉原綾乃さん
うねうねと密集した線・模様を細かく重ね、どこか不思議な雰囲気のある生き物を描く吉原綾乃さん。タブレットを器用に使って拡大・縮小しながら、デジタルで描いています。絵について、吉原さんと職員の方からお話を伺うため、新潟市東区のある就労継続支援A型事業所フジライフサポートを訪問しました。ヒアリングにあたって事前に、NASCから質問シートをお送りし、当日は記入された回答を元にお話を伺いました。
蔦のモチーフとNFT事業
NASC:この曲線は蔦のイメージだったんですね。
吉原さん:はい。小さい頃家の近くにあったお店の壁が蔦で覆われていたのを見て気になったんです。人を描きたくても描けないので、植物を描いたり、人に羽をくっつけた架空の世界っぽいものを描いたりしていました。
NASC:黒一色の線の中で目の部分にのみ色が塗られているのは何か理由がありますか?
吉原さん:周りの黒い線が強すぎるので、いろんな色を複数混ぜると喧嘩しちゃうんですね。それで、一色だけ有彩色を入れると、人ってそこに無意識に目が行くんじゃないかなと思ったので書いてみました。
NASC:なるほど……!吉原さんとしては、動物の目に注目してもらいたかったということでしょうか?
吉原さん:あ、でも置く場所自体に意味はなくて、特に一番目立つであろうところに置きたかったという感じです。この子の場合は目の部分かな、と。
就労支援A型のフジライフスマイルでは、デジタルアートを販売して収入につなげています。職員の長崎さんによると、フジライフスマイルに来た頃の吉原さんは漫画やアニメからインスピレーションを受けた二次創作の絵をよく描いていたそうですが、そういった絵を販売するには、競争相手が多いことや権利の問題がありました。そこで"他にどんな絵を描けるか"と試してみる中で、蔦のモチーフが長崎さんの目に留まったと言います。
長崎さん:これはいいんじゃないかと思いました。「ゼンタングル」という細かな線で単純なパターンを描く作風が世間でも確立されていましたので。ゼンタングルの名前は「禅(Zen)」に由来していて、心を落ち着ける効果もあって、吉原さんに合っているんじゃないかと。
職員の長崎さんは、フジライフスマイルに入ってからテレビで放送されていたNFTについて知り、代表の方と話し合いながらNFT事業を立ち上げ、利用者さんの絵を販売するようになったそうです。吉原さんに新しいモチーフで描いてみることを提案したように、各利用者さんと絵の方向性やどんな作業をしていくかなどは話し合いながら進めています。絵の売り上げやお客さんからの反応は利用者さん自身に伝わるため、売れることも大事にしつつプレッシャーになりすぎないよう配慮していると言います。
絵を描くうえで大切にしていること
吉原さんにとって、絵を描くうえで大切にしていることを聞いてみました。事前の質問に対する答えは以下のように書いていました。
吉原さん:ここでNFTの絵を描き始めて、楽しかったんですけど、だんだん義務のようにもなってきてしまって。楽しみってなんだっけ…と思っていた時、家で描いていたらあれなんか楽しいなと。リラックスできる環境だからこそ楽しく描けるんだなと思ったんです。仕事じゃなくて息抜きのような。
NASC:そうなんですね。自分が楽しめるマインドを大切にしたいと。
吉原さん:はい、自分が楽しめなくなったら描くのは辞めて他のことに移るみたいな形ですね。今はいろいろ作業があって施設で(NFTの制作を)できていないんですけど、またいつか復活できる時があったらやりたいです。
インタビューの中で自分の絵について、吉原さんが細かく丁寧な描写で説明していたのが印象的でした。新潟県内でNFT事業を行っている福祉施設は数少ない中、今回の訪問で直接お話を聞けたことで、今後生まれる作品がより楽しみになりました。
吉原さんのNFTアートは以下のサイトから閲覧・購入ができます。ぜひのぞいてみてください。
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