【Interview】東雲 久遠さん
作品「宇宙のカレー屋」を描かれた東雲 久遠(しののめ くおん)さんのお話を聞きました。東雲さんの絵は、弥彦村社会福祉協議会の担当相談員である渡辺さんの提案がきっかけで、2024年度の長期作品貸し出し応募(NASC主催)に至ったそうです。応募された絵のこと、これまでのことについて2人にお話を聞きました。
「宇宙のカレー屋」と影響を受けたものについて
宇宙とカレー屋という組み合わせが不思議なこちらの絵。テーブルにはカラフルなパフェとホットケーキが並び、満面の笑顔が目に入ります。その背後には、真っ黒の宇宙や地球らしき球体が見え、対照的な雰囲気の組み合わせが独特の印象を与えます。
NASC:この絵はどういう経緯で描いたんですか?
東雲さん:もともと、通っている福祉作業所の展覧会向けに描いていたけど、ちょっとトラブルがあって出せなくなってしまったものがあったんです。今回の募集があると渡辺さんに聞いて、それを描きなおしてみよう、と思いまして。
NASC:宇宙の中にカレー屋さんがあるという世界観ですよね。どうして宇宙とカレーだったんでしょうか。
東雲さん:最初にカレーを描いたんです。その後人物を描いて、テーブルを丸く描いていたら、なんか足りないなと思いまして…人物を目立たせるために黒く塗りつぶしていたらあれ宇宙にしたらいいんじゃない?と思いつきました。普通に描くと見る人にとってはありきたりだなってなってしまうから、非現実感を入れた方が面白いかなと思いまして。あとは漫画的な・・・もともと自分、アニメとか漫画が好きで、それに影響を受けているんですよ。
少し緊張しながらも、落ち着いて優しく答えてくださった東雲さん。絵は水彩色鉛筆やカラーペンを使って描いているそうです。
NASC:影響を受けた漫画などはありますか?
東雲さん:あの……ロボット漫画が好きで。よく模写もしているんです。
東雲さんが見せてくれたファイルには、好きな漫画のキャラクターの模写の他、オリジナルの人物やキャラクターの絵、さまざまな動物を細かく詰め込んだ世界観の絵などがありました。
模写ではなく今回のようなオリジナル作品を描くとき、どんなところからテーマや構図を考えているのか聞いてみると、「基本的に身近にあるものから考える」と話していました。(カレーのモチーフはラグーンで提供されているカレーから発想したとのこと)何を絵に入れていくのかは、描いていくうちに徐々に決まっていくことが多いそうです。
これまでの経験と絵
すでに近隣の施設などで絵を展示したり、SNSで自ら発信し絵の依頼を受けたりもしている東雲さん。いつから、どんなふうに絵を描いてきたのかについて伺いました。
NASC:小さい頃から絵を描くのが好きですか?
東雲さん:小学校一年生くらいからですね。窓から見える景色をたまたま描いたら先生が大絶賛してくれて。そこからうまくなりたいと思って勉強して描き始めたんですが、その後いじめられたことがあって、中学と高校では絵を封印していました。
NASC:そうだったんですね。
東雲さん:(大人になって)地域生活支援センターやすらぎに入って、何気なく描いた絵を同じ施設内の女の子がうまい!と言って画材も買ってくれたんです。それでまた描くようになりました。
NASC:画材を買ってくれるなんて、すごいですね。
東雲さん:色の塗り方や影のつけ方などを見て、すごい!といろんな人が褒めてくれましたね。
その後、東雲さんは福祉作業所に自ら「飾ってくれませんか?」と絵を持っていくなど積極的に発表の機会を増やしていき、それに伴って絵を通したつながりも増えていきました。
東雲さん:コワーキングスペースをやっている方とタッグを組んで活動していたこともありました。今はちょっと疲れて辞めているんですが。
Instagramにアップしたオリジナルキャラクターの絵をフォロワーの方がAI化してくれたり、Twitterを見て気に入ってくれた方が絵を依頼してくれたりもしているそう。インタビューの中でも、まわりの方からの声をふまえ、どうしたら面白いと思ってもらえるかについての言葉が多く、「まわりからの期待に応えたい」という気持ちが東雲さんの中で大きな原動力になっているような気がしました。
相談員さんとの関係性
相談支援員の渡辺さんからの視点や普段の東雲さんとのやりとりについても伺いました。
NASC:渡辺さんと東雲さんはどんなきっかけで知り合ったんでしょうか。
渡辺さん:3年ほど前、モニタリングで出会いました。その後もインスタグラムの話を聞いて、絵を描くのが好きなんだなあと。モニタリングは半年に一回ですし、特に絵を見る機会もなかったんですが、地域生活支援センターさんで絵を展示したと聞いて……社協でやっている週に一回の「居場所」でもソフトクリームの絵を皆さんにお披露目したり、広報誌にマスコットキャラクターのやえちゃんを描いてもらったりするようになったんです。
いろいろなところに展示することが活躍の場になるのではないかな、と思って今回の募集を紹介しました。
NASC:そうだったんですね。相談員さんから発表の機会が提案されるのは、なかなか珍しいことのように思います。
東雲さん:今日のように、これまで描いた絵を一度に見せたこともあまりないですよね。
渡辺さん:そうですね。間近でたくさん見たのは初めてですね。
NASC:渡辺さんからは東雲さんにとっての表現活動ってどんなふうに見られていますか。
渡辺さん:人に見ていただくことで自分を表現して、気持ちが落ち着いたりもっと前向きになっていただけたらなという気持ちですね。
NASC:普段接する中で、東雲さんはどんな方か、何か印象を教えてもらえますか。
渡辺さん:根が真面目な方だなと思います。体調が悪くなると(モニタリングが無くても)すぐに来てくれますし……。僕にとって、気を遣わずに接することができる人です。
絵を発表したい気持ちをオープンにしてくれる人としても貴重な存在だ、と話す渡辺さんからは、東雲さんの様子をほど良い距離感で見守りながら、できることを提案している様子がうかがえました。
インタビューを通して、絵についての思いや経験をたくさん話してくださった東雲さん。図書館の展示コーナーで発表したい、など今後の予定も話しており、これからも意欲的に外へ発信しながら絵を描いていくのだろうと思いました。そんな東雲さんを相談員の渡辺さんが近すぎず遠すぎない距離で見守っていること、うまくいかない時に顔を出せるような関係でいることも表現活動の支援のあり方のひとつだと感じました。(井上)
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