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【Interview】みどりの家・塚原真人さん

 2022年2月に開催された真柄ふれ愛アール・ブリュット展に初めて作品を出品した塚原真人さん。新潟日報メディアシップにて、多くの人に塚原さんの作品を見てもらう機会となりました。
 今回はそれ以来約3年ぶりに、塚原さんの通う村上市の「みどりの家」を訪れ、お話を聞きました。塚原さんは自身の絵をファイルに入れてたくさん持ってきてくれました。

塚原真人さん

【塚原真人(つかはらまさと)さんプロフィール】
1978年生まれ。村上市在住。小さい頃から絵が好きで、テレビや映画などから好きな場面を言葉とともに描く。アール・ブリュットむらかみ展(2022,2023)や真柄ふれ愛アールブリュット展(2022)などに作品出品。2023年12月にNHK番組「no art, no life」に取り上げられた。

 塚原さんがこれまで描いてきたのは、好きな映画やドラマ、テレビ番組などから好きなシーンの言葉とキャラクターを鮮やかな色に塗り上げたもの。昭和の映画で荒波がしぶきをあげていたり、任侠ものだったり、トラやクジラが迫りくる画だったり、何かしら迫力や荒々しさを伴うものが多い印象です。共通するテーマについて聞くと、「(映画やドラマで)爆発のシーンとか、恐ろしいシーンとかを見てすげえなあ、と思う。バイオレンス(が一つのテーマ)ですね。」と答えてくれました。

普段の塚原さんの絵

 そんなこれまでの絵と違い、今回は初めて「震災復興」というお題を与えられて一枚の絵を描きました。それが今回の訪問のきっかけにもなったこちらの「復興へ向かうトキ」です。

『復興へ向かうトキ』(2024)

 鮮やかな赤色で塗られた力強いトキの絵を見ながら、本人に直接お話を伺いました。

――――とても心のこもった絵ですね。改めてどういった経緯で絵を描かれたのか教えてもらえますか?

今年の元旦、能登半島沖地震がありまして、観光名所や町がつぶされてしまって……行方不明の方も亡くなった方もいて、被災地の皆さんも元気がなく暗―い感じだったんですよ。ところが、空から1羽の鳥が飛んできて。それがトキだったんですよ。そのトキが被災地のみんなに『がんばれー!がんばれー!負けるんじゃないぞー!しっかりするんだぞー!』と言って元気をあげようと来たんです。能登の皆さんも『うんわかった、これからも元気だしてがんばるから』と言って、それでトキも『また戻ってくるからね』と消え去っていきました。

――――トキが皆さんのもとに向かったんですね。何かもとになった画はあるのでしょうか?
ないです。震災のニュースを見て。

――――まわりの影もトキですか?
カモメです。夕焼けの中で飛んでいる。

――――この絵はいつごろ描かれたんですか?
きっかけは園長(小池さん)だったんです。園長が「復興のテーマでかいてみない?できる?どうかな?」と言ってきて、私も、そうだなー、描いてみようかなと。それで思わずこれにしたんです。これでやってみよう、って2,3日でできたのを見せたら、「これいいね!」と園長から言われまして。

――――2,3日でこれを描いたのはすごいですね!お題をもらって描くことはこれまでもあったのですか?トキの写真を見て描きましたか?
いえ、初めてです。写真見ましたね。トキの色が難しかったです。

――――なんでトキだったんですか?
地震発生のときに(ニュースを見て)、このままだったら大変だなあ、どうしたもんかなあって自分も思っていたので・・・あ、トキにしよう!ってひらめいたんです。

――――「これいいな、描こう」というひらめきはどうやって出てくるんですか?迷いませんか?
結構迷いますね。これ、いいなとかこっちがいいなとか。自分的には決まるんですが。

――――今、制作はどこでやっていますか?
下書きを書くのは施設で、絵具は自宅です。一回鉛筆で下書きをするんですが、それはお昼休みの時間に書いています。

――――こだわったポイントはありますか?
言葉は筆ペンで書きました。

真柄ふれ愛アールブリュット展(2022)での展示

――――また展覧会に出そうと思いますか。
はい、これからも出そうかなって思ってます。職員さんたちもいいじゃん、やってやってと言っています。

 最初の質問に対してすぐに、能登へ向かったトキの物語をまるでその姿を実際に見たかのように語り始めた塚原さん。塚原さんのひらめきや想像力には私たちには見えていない広がりがあるのだと感じました。
 約1時間でしたが、塚原さんのずっと聞いていたくなるようなリズム感ある語りと人柄の好さをたっぷり受け取ることができたインタビューの時間でした。


文:NASCスタッフ 井上

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