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建設業界においてDXが推進される理由とVRの活用方法
こんにちは。株式会社日本XRセンター、リサーチ担当の花木です。
本日は建設業界においてDXが進む理由と、VRの活用について解説します。
建設業界でDXが推進される理由
1.人材不足
国土交通省の報告書「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によると、建設業者数は1997年に685万人だったのに対し、2022年には479万人と約200万人減少しました。また、同資料では、2022年の建設業就業者のうち29歳以下が11.7%で、55歳以上が35.9%と他業界と比較しても高齢化が深刻化しています。
建設業界の労働人口の減少には以下のような原因があると考えられます。
・危険で過酷な環境で働くイメージ:屋外や高い場所での作業は、危険が伴うとともに、真夏や真冬では過酷な環境で作業しなければならない。
・長時間労働、不規則な勤務時間:深夜帯の工事や長期間に渡る労働などから、建設業界を敬遠する若者が多数いる。
・給与水準が比較的低い:他業界と比較しても、建設業における大工などの職人は比較的給与水準が低く、特に日給制を採用している企業では、天候や体調不良などの影響を受けやすく、安定した収入を得ることが難しい状況。
一方で、建設業界の需要は近年大きく増加しています。
2025年の万博開催や2027年以降のリニア中央新幹線開通に加え、熊本県や北海道における半導体製造向上建設など、民間の建設投資も活発になっており、ますます建設業界の需要が高まることが期待されます。
参考:
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001602250.pdf
2.労働力不足やコスト削減に対応するための生産性の向上
建設業界が国内外問わず、長年生産性の低さに課題を抱えており、他業界と比較して技術革新が遅れている部分があります。
しかし、近年では抜本的な労働生産性向上に向けて建設事業各段階でDXが推進されています。
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BIM(Building Information Modeling)により、3Dモデルを活用して設計・施工プロセスの可視化を行い、関係者間の情報共有が円滑になりました。
3.危険、過酷な作業現場で頻発する事故の防止
建設業は危険な場所での作業を伴い、事故防止や安全管理の徹底は非常に重要です。
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厚生労働省と国土交通省の発表によると、令和3年の死亡災害の業種別内訳を見てみると、建設業が33%が最も高い数値でした。また、建設業の死亡災害事故の型別内訳を見てみると、「墜落・転落」が38%で最も多く、その次に「崩壊・転倒」、「はさまれ・巻き込まれ」が続きました。
また、近年では外国人労働者の死傷者数が増加傾向にあり、建設業では特にそれが顕著に見受けられます。外国人労働者への安全性の教育には言葉の壁があり、コミュ二ケーションの欠如が背景にあると考えられます。
安全性の確保には以下のようなDXが活用できます。
・センサーやIoT、AIなどのDX技術を導入することで、リアルタイムで危険を察知できる。
・VRを活用した模擬訓練で、危険な状況への対応能力を向上させる。
・VRトレーニングは日本語だけでなく、様々な言語での対応が可能なため、外国人労働者向けに英語や多言語でのトレーニングの提供も可能。
VRを活用した事例[安全トレーニング]
①古河ユニック[VRを活用したクレーンの訓練システムを開発]
古河ユニック株式会社とシンフォニア株式会社は、小型運動式クレーンのVRトレーニングシステムを共同開発しました。両社ともに「クレーン事故ゼロ」を目指した取り組みをしており、新しいVR訓練システムの開発に向けて協業しました。VRヘッドセットとクレーン操作デバイス「液晶ラジコンJOY」を用いて、リアルな小型クレーンの操作を学べます。
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VRトレーニングの導入により期待できること:
クレーン操作の事故率低下、作業効率の向上
オペレーターが危険な現場での実習
クレーンの準備などを行うことなく、手軽に訓練が可能
初心者でもスムーズに操作に慣れることができる
若年層や他業界関係者にも、クレーン業界への興味と関心を高める効果も期待される
②大林組[データ技術を活用した研修拠点の開設]
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大林組は、協力会社組織の林友会が運営する技能職向け訓練校「大林組林友会教育訓練校」に、デジタル技術を活用した研修拠点「O-DXルーム」を開設しました。建設現場での安全性向上や人手不足の解決に向けて、VR技術を用いた研修を実施します。
[研修内容]
建設業開発のマルチプレイを活用した玉掛け共同作業を実現
5人同時に異なる役割の体験が可能
決まったシナリオではなく、物理シミュレーションを駆使した自由な玉掛け作業により、実際に近い体験が可能
すべての行動を保存し、行動履歴を再現する、振り返り確認が可能
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https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230301_1.html
VR導入のメリット:
体験後に録画した体験の様子を見ることで、振り返り学習が可能。
受講者の習熟度・技術力の向上が期待される。
VRを活用して研修することで、省人化に貢献できる。
③Skanska[ルームスケール型のVRトレーニング]
スウェーデンに本拠を置く多国籍の建設および開発会社のSkanskaは、「ルームスケール型」のVRを開発し、仮設工事監督者やコーディネーターの安全かつ柔軟な環境でのトレーニングに活用しています。このトレーニングプログラムでは、鉄鋼の支柱や湿ったコンクリートを支えるために設計された仮説足場など、6種類の仮説現場を体験できます。
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VR導入のメリット:
・実際に安全トレーニングを現場で実施するよりも、コストや時間の両方を削減することができる。
・単なる動画視聴よりも、より没入感のあるVRを使ってトレーニングすることでより効果的な安全研修が可能。
・実際の訓練場では実現不可能な危険なシナリオも体験することが可能。
参照:
④Bechtel[VR安全トレーニング]
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世界的な建設会社であるBechtelは、ニューヨーク拠点の建設安全技術会社であるHuman Condition Safetyと提携し、新しいVR安全訓練を開発しました。労働者は、危険な作業手順のシミュレーションでVRヘッドセットを着用して訓練を行い、安全にリスクの高い作業状況を繰り返し練習できるようになりました。
このVRトレーニングを使用することで、労働者は霧のかかった朝に20階建ての建物からクレーンで梁を下ろすといった難易度の高い作業を、その作業を行う前に練習することができます。
参照:
VRを活用した事例[施工の効率化]
①伊藤組土建[VRとARの先端技術を活用した工期短縮]
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北海道の建設業大手の伊藤組土建は、VRとARを組み合わせ、現場の風景に建築物や道路などの完成モデルを表示させる専用ゴーグルを導入しました。これにより、現場の工事関係者が施工方法や手順を事前に確認することが可能になりました。
2003年に約30万人いた道内の建設業従事者は、2022年には約22万人に減少しました。帝国データバンク札幌支店の調査では、正社員が不足しているとした道内建設業の割合は業種別で最多の71.4%に上っており、人手不足が非常に深刻化しています。また、2024年には産業時間の上限規制の対象が建設業にも拡大されました。
専用ゴーグルは人手不足に悩む建設業界の作業効率を向上することが期待されています。
[専用ゴーグルの活用方法]
専用ゴーグルをかけて目の前の工事現場を覗くと、設計図を基に自社で作った3次元モデルのデータを加工した映像が風景の上に表示され、これから造る建築物が見える。
工事関係者がゴーグル越しに見える手を動かすことで、着工から完成まで段階ごとの映像を見比べられる。
②Mortenson[3DモデリングにVRを導入]
アメリカの建設会社Mortensonは、設計上の欠陥を早期に発見するために3DモデリングにVRを導入しました。
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従来のBIMは、建設プロジェクトを表す3Dモデルを平面的なスクリーンに映し出します。ここには電気系統や機械的な配管、空調システム(HVAC)などのインフラ要素も盛り込まれているのが一般です。
これらは確かに便利ではありますが、建物を立体で表現できても、建物の中を詳細に把握するのは限界がある、とMortensonは感じていました。
例えば、以下のような課題が挙げられます。
・スキルの壁:従来のBIMプロジェクトは理解するのが難しいため、複雑なソフトウェや設計モデルの知識がない関係者は、自分が何を見ているのか分かりづらい。
・アクセスできる人が限定的:従来のBIMツールの場合、チーム内のVDC (Virtual Design and Construction) 担当者しかアクセスできないことがあり、フィードバックを集めるのが非常に難しい。
・深刻な問題が見つけられない:3Dモデルを2Dで見たときに、モデルの作りが直接反映されていないために安全上の問題などを見落とす可能性がある。
これらの課題を解決するために、Mortensonは設計上の欠陥を早期に見つけるために3DモデリングにVRを導入しました。 その結果、イリノイ州におけるデータセンター建設プロジェクト1件だけで3万ポンド以上を節約しました。
③鹿島建設[VR空間を利用した遠隔現場管理システム]
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鹿島建設は、2021年5月よりVRを活用した遠隔現場管理システムを行っています。システムに360°カメラとライブストリーミングサービスを適用することで、VR空間内のコミュニケーションを360°ライブ映像で行える機能を追加しました。360°機能により、これまでの限定的な画角では確認しきれない可能性のあった箇所も見落とすことなく、遠隔からの参加者それぞれが、あたかも現場にいるかのように周囲の状況を確認できるようになりました。また、参加者同士がプラットフォーム内で自由にコミュニケーションを取ることができるため、迅速な合意形成が可能となりました。
VR導入のメリット:
複数人がいつでも遠隔から360°ライブ配信映像内に同時参加できる環境を構築
移動時間の短縮
関係者のスケジュール調整手間の削減
大幅な生産性の向上を実現
④清水建設[VRと3Dスキャン活用の遠隔施工検査システム]
清水建設は、積木製作と共同で「メタバース監視システム」を開発しました。VRヘッドセットと3Dスキャンデータを組み合わせ、施工中の建物検査に遠隔地から対応可能となりました。
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このシステムは、「メタバース」部と「XRチェッカー」部の2つで構成されています。
「メタバース」部では、現地を3Dスキャンによって得られた点群データと、設計に使用されたBIMデータを統合することで、現在の建物の状況を確認することができます。また、遠隔地にいる関係者との音声コミュニケーションや、検査報告書、工程写真の確認も可能です。「XRチェッカー」部門では、BIMデータと点群データの整合性を自動的に測定・確認し、許容範囲を超えたズレがある箇所を色分けして表示することで、状況の可視化を実現します。
これらの機能は、居場所を問わず施工中の建物の検査に対応しているため、建築生産の効率化に寄与できるとともに、検査の効率化・高度化も促進されます。清水建設はすでに実際の建物を対象とした実証実験を行っており、一般財団法人日本建築センターから「実用に供し得る」との評価を受けています。
参照:
https://www.moguravr.com/shimizu-and-tsumiki-3d-vr-metaverse-system/
⑤奥村組[VRで施工をシミュレーション]
奥村組は2015年にBIM推進グループを立ち上げて以来、わずか3年で35件の工事にBIMを活用しました。VRや3Dプリンターで施工性を徹底検証することで、これから作られる建物の鉄骨や足場を原寸大で立体的に広がって見ることができます。首を上下・左右に振ると、まるで現場に立っているかのように現場を内側から見回せます。
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VR用のデータは、Revitで作成したBIMモデルデータを、オートデスクの「Revit Live」というソフトで変換することで簡単に作ることが可能です。
VR導入のメリット
・施工計画や手順が適切か、工事現場の安全性に問題がないかなどが、リアルに検証できる。
・施工性を徹底検証することができ、効率の良い建設が可能。
⑥Balfour Beatty[未来の建設設計を探究]
Balfour Beattyは、VRを活用して未来の建設設計を探究したり、Vinciと協働でVRを活用したスマートモーターウェイの現場での安全基準向上に努めています。
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完全没入型シミュレーションは、高速道路の建設と維持管理プロジェクトを安全にし、訓練の改善を通じて現場での事故を防ぐことを目的としています。プログラムでは、異なる現実のシナリオが提供され、ユーザーは危険な状況をさまざまな視点から見ることで、安全な作業区域の理解を深めることができます。
VRを活用した事例[プロモーション]
①奥村組[一般市民へのPRにVRを活用]
奥村組は2018年1月28日に開催された「大阪国際女子マラソン」に協賛し、大会中は特設ブースを設け、VR体験会を行いました。
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13歳以上の子どもや大人は、実寸大で立体視できる本格的なVRゴーグルを使って大阪市内の工事現場などを、バーチャル体験しました。また、12歳以下の子どもたちにも、スマートフォン用の簡易ゴーグルを使って工事現場の様子を見てもらう、といった様々なPRを行いました。こうした企画は、普段は入れない工事現場の中を身近に見られるとあって、大好評を博し、マラソンというイベントの中で、建設業の魅力を大いにPRするのに成功しました。
これからの建設業界におけるVRの活用
ここまで現在建設業界がどのようにVRを活用しているのか説明してきましたが、ここからはこれからの建設業界におけるVRの活用に焦点を当てていきたいと思います。
VRは以下の段階でさらなる活躍が期待できます。
1. 設計・プランニング
建築物の設計をVRで再現することで、クライアントや設計者、施工者が完成イメージを直感的に理解できます。これにより、デザインミスや要望のズレを事前に防止できます。例: 設計図をVR空間で立体的に確認し、スペースや動線の最適化を検討できます。加えて、クライアントへのプレゼンテーションにもVRを活用することで、クライアントが完成後の建築物を仮想的に体験でき、納得感が得られやすくなります。
2. トレーニングへの応用
建設現場は常に危険と隣り合わせで、徹底した安全管理が必要不可欠です。実際の現場環境を再現したVRシミュレーションを使用することで、作業員が危険を伴う状況を仮想的に体験し、安全対策を学べます。
3. コミュニケーションの改善
リモートコラボレーションにより、遠隔地の関係者が同じVR空間で設計や進捗状況を確認し、議論を行えます。これにより、情報共有が効率化します。例えば、 海外の設計者と施工者がVR内で同時にプランを検討することで、時間とコスト両方の削減に貢献し、効率の良い開発が可能となります。また、関係者間の合意形成も効率よく行うことができます。クライアントや施工者、設計者が同じVR環境で建築プロジェクトを確認し、誤解を防ぎながら意思決定を行うことが可能です。
これらは全て顧客の満足度向上にも貢献でき、VRは今後も進化することで建設業界においてさらに広範囲での活用が期待されます。
VRを使った共創や、VRを使ったDXにご興味のある方は、ぜひこちらまでお問い合わせください(thomas@vrarri.com)。
他の業界事例も以下にまとめてありますので、ご興味ある場合はぜひご覧ください。
航空DXとVRの利用事例:https://note.com/nihonxrcenter/n/n7b9f68aa8276
建設DXが進む理由とVRの活用例:https://note.com/nihonxrcenter/n/n4156595e92aa
アメリカの小売業界におけるVRの利用事例:https://note.com/nihonxrcenter/n/ndfdc601bf473
詳しい業界事例については、以下のリンクまたはQRコードからお問い合わせください。
![](https://assets.st-note.com/img/1737506630-YKRI7GPdg8WMBnVviDzlbUat.png)
日本XRセンターについて
・サンフランシスコ、インド、日本を拠点にVRコンテンツを開発(高いクオリティと圧倒的なコストパフォーマンス)
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