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大人数の仕事は対話に頼ってはいけない
少人数で進める仕事は書き物を残さず対話だけに頼ってしまうことがほとんどだと思う。しかし、対話だけで仕事をすると人数が増えてきたときに破綻する。
対話の数は人が増えると指数関数的に増えていく。
二人のときは、1本
三人ならば、3本
四人になると、6本
五人だと、10本…
n個の要素から2個のものを取る組み合わせの数だけ対話の経路が増えていく。
こんな時は人の集まりを階層化・樹状構造にして、対話の経路を減らす。これが組織化するということだろう。しかし組織化しただけでは情報を正しく伝えることはできない。対話の連鎖には根本的な問題がある。
伝言ゲームの問題
人から人へと言伝に情報を伝えると、最後には全然違う内容になってしまうことは経験済みであろう。対話による情報伝達の限界である。
対策はいくつかある。
一つは文書化である。文書や図表による情報伝達は対話に比べて大きな利点がある。
対話のように人が集まるのを待たなくて良いので非同期・並列に動ける。そして正確である。伝言ゲームの問題はおきない。同報できるので、何人でも好きなだけ情報を伝達できる。
これが、効率・スピードにおいて絶大な効果を発揮する。
もう一つはルール化と訓練。軍隊を想像してもらうとわかりやすい。教典に基づいてどう動くかを身体と頭に染み込ませる。最小の情報伝達で素早く正確に動ける。
これは会社でもスポーツのチームでも同じ。巨大企業は「系列」という形で戦い方を大規模に共有している。
文章力・読解力という問題
文書化には問題がある。構成員の文章力・読解力に依存することである。正確に的確に情報を伝え読み解く能力。これがないと文書化の威力は半減する。場合によっては混乱のもとになる。
日本語は論理的な言語であり、使いこなせば正確に効率的に物事を伝えられる。ただし、大日本帝国のときのような情緒的な文書ではだめ。西洋流の言語技術から学ぶべきことは多い。
組織力の低下
ルール化・訓練についても問題がある。雇用が流動化し、阿吽の呼吸で「協力して課題をこなす力」が弱くなっているように感じる。若い頃から同じ釜の飯を食べて育った組織と、契約でゆるく繋がっただけの組織では情報伝達の正確さや速さに雲泥の差がある。
まとめ
大人数で大きな仕事をするときの問題と対策についての一般論を述べた。日本の企業で問題が起きると「コミュニケーション不足が原因」という雑な結論で現場に詰め腹を切らせることが多いと感じる。
すべからくリーダー・マネジャー・組織の問題と捉えて対策しなければいつまでも改善していかないことを知るべきである。
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