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不見識な石炭火力反対運動が発展途上国を破滅させる危険性
温暖化や環境破壊などが注目を浴び、Twitterでは先進国で豊かな日本の一部の学生らが石炭火力の反対運動をしている。
私個人的に安全保障上の観点でも電力が十分に供給されるのであれば、クリーンエネルギー(再生エネルギー)に転換しても良いと考えているが、先進国の日本でも現状では難しい。
ましてや、発展途上国では今現在も石炭火力に依存している国は多く、それらの国が原発ゼロ・石炭火力ゼロとなれば経済は混乱し、生活もままならなくなる事は馬鹿でも想像できる。
その為、日本の一部の学生らが日本国内の電力事情に異議を唱えて運動する事には自由にして貰って結構だが、他国の電力問題に関わる事まで口を出したりする事に違和感を抱く。
例えば、このツイート。
📢署名にご協力ください📢
— Kana Seino (@sin_k24) February 4, 2022
住友商事とJICAに、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業からの撤退を求める署名を開始しました!
グローバル・サウスのオーガナイザーたちと一緒に開始したキャンペーンの第一弾です。
ぜひご協力ください!#ClimateStrike #FridaysForFuture #PeopleNotProfit pic.twitter.com/4Ud3MuF97g
日本企業のバングラデシュ火力発電事業の撤退を求めるツイートなのだが、少しバングラデシュの電力事情について調べてみた。
下記の参考資料を見ると、バングラデシュは2007年4月の時点では多くが自国の天然ガスで電力を賄っている。
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それでは最近のバングラデシュの電力事情というと、こういう状況となっている。
バングラデシュでは、過去10年間に設置された新たな発電設備により、その発電容量が大幅に増加したものの、国内の電力供給は電力需要に対して未だ追いついていない。バングラデシュ政府はその不足を埋めるため、発電事業へのさらなる民間セクターによる投資を促進していく。
上記の2007年の電力事情から、この引用元の記事公開までの間は約13年程あり、その間のバングラデシュは電力不足を解消する為に発電容量を大幅に増加する投資を行ってきた事が分かる。
バングラデシュが何故、このような投資をしているのかというと人口増加と自国のエネルギー資源と経済が不足しているというのがある。
爆発的な人口増加
1960~2020年のバングラデシュの人口増加は世界で8位となっており、その爆発的な人口増加をチャートで見れば手に取るようにわかる。
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このように人口が大幅に増えた事で自国のエネルギー資源での発電が追いつかなくなるのは当然と言えるだろう。
自国のエネルギー資源不足
バングラデシュの自国エネルギーは石油、石炭、天然ガスとなっているが、現状ではこのような状況に陥っている。
バングラデシュは石油、石炭ともに国内資源(確認埋蔵量)に乏しいが、天然ガスについては若干の国内資源を持つ。BP統計によると、2015年の一次エネルギー消費量は前年度8.7%増の石油換算3,071万トン、消費量の約8割を天然ガスに依存している(図2参照)。2015年末時点の天然ガス確認埋蔵量は約2322億m3で、可採年数(R/P)は8.7年である。2014年の生産量は268億m3、生産量も消費量と同量である。天然ガス消費量の消費速度が大きく、枯渇する恐れがあるとされている。なお、石油はほとんど輸入に依存している。
可採年数とは枯渇性資源の残余量を時間で表したものという事は何も対象しなければ枯渇するので、バングラデシュがこれまで天然ガスの発電容量を増やす投資をしてきた事が分かる。
経済
バングラデシュ経済は好調と言われているが、中国のように急速な経済発展の裏で農村部は低所得者が多く、何十年前の暮らしをしている人達もいる。
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低所得者層の多い農村部では薪や動物のフン等のバイオマス燃料が主流である。このまま森林の伐採を継続した場合、2020年にはバングラデシュの森林が消滅するのではないか危惧されている。
低所得層は石油を買う事も難しいので、薪や動物のフンがエネルギーとなってしまっているのがバングラデシュの現状である。
とても先進国の日本では考えられない生活をしている人達がバングラデシュには多いという事が分かるだろう。
そこで残るは冒頭のツイートの内容にあった日本企業の石炭火力(撤退)についてだが、この記事を見て欲しい。
住友商事は発電所の土木工事と補機供給、海洋土木工事と港湾建設を担い、東芝プラントシステムと五洋建設に工事を発注。東芝は蒸気タービン・発電機の供給と据え付け、IHIはボイラーの供給と据え付けをそれぞれ担当する。
五洋建設が受注したのは「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業パッケージ1、2(港湾工事)」。石炭船を受け入れるための総延長14キロにわたる航路浚渫、航路への埋め戻りを低減するための防砂堤構築、発電所用地の埋め立て・地盤改良などを手掛ける。工期は17年9月から24年1月までの77カ月。同社は事業の準備工事となる先行浚渫をバングラデシュ電力公社から受注し、4月に竣工させた。
ご覧のようにバングラデシュ電力公社から受注した案件という事が分かる。
また、超々臨界圧石炭火力発電事業とあるように通常の石炭火力では無いので、TOSHIBAの記事から説明文を抜粋しよう。
CO2の排出量を抑え、環境にも配慮した超々臨界圧火力発電
燃料を燃やして蒸気を発生させ、その力で蒸気タービン・発電機を回して発電するのが、火力発電の基本的な仕組みです。超々臨界圧発電方式は、その蒸気を超高温・超高圧化し、臨界圧と呼ばれる圧力を超えた状態にすることで、より大きなエネルギーにして発電します。これにより、同じ石炭の量から電気として取り出せる割合を高めることができます。通常の発電方式と比べて効率良く発電できるので、同じ量の電気を発電するために使用する石炭の消費量が抑えられ、よってCO2の排出量も抑えることができるのです。
(中略)
バングラデシュでは自国産ガスの枯渇が見込まれる中で、輸入燃料に頼らざるを得ない将来を見据え、同国のエネルギーミックスの多様化を目指す国策があり、高効率な超々臨界圧火力発電設備の導入につながった。
火力発電所建設に馳せる思い
以上のようにバングラデシュへの超々臨界圧石炭火力発電事業は日本の技術がバングラデシュ政府の国策とマッチした結果ということが分かる。
最後に
石炭火力発電反対にはバングラデシュの農村部の人もいるという情報がある。
私たち、インドネシア及びバングラデシュの農民組織・現地NGOは、日本が2050年カーボンニュートラル宣言(2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指すことを宣言)を出したにもかかわらず、新規の石炭火力発電所に対して資金供与を行なっていることについて、フランス政府に私たちの懸念を共有し、あなた方の支援を求めるため、本書簡をお送りしています。
一方でこのような情報があるのを知って欲しい。
バングラデシュの農村部では薪や動物フンがエネルギーになっているが、森林を伐採すると森林破壊や土砂崩れを起こしやすいと言われている。
また、薪などの需要があれば不法に伐採をする者たちも存在する。
環境破壊を防ごうと石炭火力発電事業の反対をしている人達が、森林破壊に繋がる生活をしている農村部の人達を巻き込んで反対運動をしているという何度も恥ずかしい話だ。
豊かな先進国の人達は余裕があるが、発展途上国の人達は試行錯誤しながら今を生きているのに何の代替え案も無しに発展途上国を発展を妨げるような事は無責任なのでは無いかと私は思う。
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