東京都庁所在地は“東京” ひとつの自治体
東京都庁所在地は“東京”である。自治体東京とは東京都の中の自治体部門という捉え方をすると理解しやすい。大変シンプルな題材なのだが、インターネット界隈を見ると誤解している人が多く見受けられる。
押さえておきたい点が、東京都とは純粋な都(県)としての役割と東京1自治体(市)の2つ役割を担う特殊な行政機関である。対して各23区は出張所に加えて少しばかり権限が付与された団体に過ぎない為、独立した自治体と認められていない。各23区の区長はあくまで選挙で選ぶことができる市の出張所の長という程度である。
【“都庁”の“所在地”と“都庁所在地”は別もの】
東京都の条例によれば、都庁の所在地は「東京都新宿区西新宿二丁目」と明記されている。“都庁”の“所在地”=(都庁がある住所)は単純に都庁がある住所を記しているだけで、“都庁所在地”=(都庁がある自治体を意味する単語)に対する問いを述べている条例は存在しない。事実とは異なるが、仮に都庁の所在地=都庁所在地と誤って解釈してしまった場合、都の条例に則り「東京都新宿区西新宿二丁目」と一字一句漏らさず記載する必要があり、一部を切り取って使用することは許されないということになる。
23区は東京都の中に東京市1市の自治体が内包された特殊な団体であるため、“都”として定められた条例が存在する。例えば、『屋外広告物条例68条1号』 30万円以下の罰金が科されるというもので、要するに無許可で広告のビラを張り付けてはいけないと定めた条例である。本来であれば自治体、市町村ごとに設けられる条例が、23区の場合は都の条例で一括りにされている。同じ東京都内でも多摩・島嶼部の場合は市町村ごとの条例で無許可広告に関する条例が発布されている。
各23区は自前で水道事業を持つことができないため、東京都水道局が全23区一括で事業を行っている。地方の規模が小さい複数の市や郡単位で水道事業を行っている例があるが、これは個別に水道を持てない各23区とは異なり、権限が付与されつつも個別に水道を持たない(財政上の理由で持てない)選択をした違いがあり、独立した自治体の市町村と各23区とは明確に違う。つまり全23区でようやく独立性が極めて高い公共団体であると言える。
地方自治法第281条第2項において、特別区は“普通地方公共団体である市に準ずる権限を有し”と記述されていることから、法律上も各23区が“独立した自治体”とは認められていない。
オリンピックの開会式および閉会式に招かれる代表者は国家元首および「公的自治体の長」であることが定められている。記憶に新しいと思うが、東京オリンピックの場合、出席した人物は国家元首として天皇陛下、自治体の長として東京都知事が隣席し、区長は選ばれなかった。そのことからも東京都の中に内包された「東京」が1自治体扱いであると世界的に認められている。余談ではあるが、2024年開催のパリオリンピック大会の場合はパリ市長が選ばれあいさつを行った。パリ行政区の長は出席していない。過去のオリンピックも同じで州知事や県知事、区長が出席した例はない。
続いては教科書について、文部科学省の認定を受けた教科書でも都庁所在地は「東京」の記載が通っている。日本国内の学校で使用される教科書は文部科学省の厳しいチェックを通らないと出版が認められない。(少数ではあるが、職員のチェック漏れがある箇所が発生したり、ある事柄に対する国の見解が変化した場合、後に出版差し止めになる例がある。)ちなみに学校や学習塾で配布される資料集や問題集は民間発行の本と同じ扱いで、教科書とは異なり文部科学省のチェックを受けていないため、仮に誤りの記述をそのまま掲載していても国から発刊中止や注意を受けることはないが、国・省庁・国土地理院の見解に反している状態である。
以下のことから日本オリンピック協会(=世界に向けて)と文部科学省(=日本国民に向けて)ともに東京が一つの自治体に等しい団体であると国によって認められている。※下記2点リンク先参照。
結論として、東京という市は現存しないが、東京という自治体を内包した団体は存在する。東京都の中の自治体部門を慣例として『東京』と呼び、その呼称を国をはじめ複数の国の関連団体が認めている。各都道府県庁所在地は自治体でなければならない。つまり東京都庁所在地は東京である。