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戸籍時報連載『旧市区町村を訪ねて』19「山奥に広がる暮らし」愛知県豊根村〜富山村〜(文・写真:仁科勝介)

こんにちは。コンテンツビジネス推進部のMです。弊社刊行「戸籍時報」との好評連動企画、「旧市区町村を訪ねて」。
いつもたくさんの「スキ」をありがとうございます💛
今回、令和6年11月号掲載の第19回は、愛知県豊根村から、奥三河の深い山々に囲まれた土地でしか出会えない景色や世界を届けてくださる記事です。
いつものとおり、仁科さんの素敵なお写真をここではカラーでご紹介しています。
今後の連載も、ぜひお楽しみに!

~~本連載の著者は、写真家の仁科勝介さん。2018年3月から2020年1月にかけて、全国1741の市区町村を巡った彼が、2023年4月から再び、愛車のスーパーカブで日本中を旅しています。
 今回の旅のテーマは、1999年に始まった平成の大合併前の旧市区町村を巡ること。いま一つのまちになっているところに、もともとは別の文化や暮らしがあった。いまも残る旧市区町村のよさや面影を探します。
 仁科さんの写真と言葉から、今そこにある暮らしに少し触れてもらえたら嬉しいなと思います。~~

『山奥に広がる暮らし』

愛知県豊根(とよね)村は,県北東部の奥三河に位置し,深い山々に囲まれた村だ。2018年に,市町村一周の旅で市街地へ訪れたことがあったが,これまで愛知県に抱いていた,平野部や都会のイメージからは全く異なる緑の自然に囲まれたその姿に,日本の広さをつくづく感じたのだった。

そして今回,旧市町村を旅する中で,旧富山村のことを知って驚いた。地図を見る限り,遠いと思っていた豊根村の市街地から,さらに遠いと思われる場所に位置していたからだ。豊根村の市街地から細い道を東へ25kmほど進み,静岡県との県境である天竜川の斜面沿いに集落があるという。静岡県からのアクセスも簡単ではないようで,とにもかくにも遠そうだ,という印象をもった。

いざ,豊根村の市街地から旧富山村へ向かった。予想通り,道のりが非常に細くて険しい。急なアップダウンの道がどこまでも続く。不思議な雰囲気のトンネルを抜けてからは,坂道が続き,下っても下ってもずっと景色が変わらない。今どこにいるのかわからず,不安になるほどだった。

そして,ようやく旧富山村の集落が見えたとき,思わず声が出た。山並みから天竜川がひらけ,山の斜面に集落が立地している。山や川は,集落を包み込んでいるようだった。遠目に見た建物たちはとても小さく見えた。

集落を歩いてみる。人通りはほとんどなく,たまにニワトリの鳴き声が聞こえた。しかし,茶畑があり,新しい重機も保管され,手作りの観光案内板もあった。
人口は少なくとも,ここにも小さな暮らしがある。そのことを,今回の訪問で知り切れるわけではないけれど,直接目で見ることができて嬉しかった。

▲ 旧富山村の集落が見えた。山や川が集落を包み込んでいるようだった。

帰りも行きと同じ道を戻り,豊根村の市街地へ着いたとき,とてもホッとした。
この日,そもそも豊根村の市街地へ訪れることもひと苦労だったが,そんな感覚は失われるほど,旧富山村は深い山奥に位置していたのだった。

合併に関わらず,こうした山奥のさらに奥に位置する小さな郷が,ほんとうはもっとたくさんあるのだと思う。自分の生活と関わりがなければ,そういった土地を知るきっかけも少ない。

小さな日本ですら,知らない世界がほとんどを占めていて,少しずつ新しい世界と出会いながら,今日を生きている。
そんなことを,こうした土地へ訪れると,静かに感じるのだった。

(かつお╱Katsusuke Nishina)



仁科勝介(にしなかつすけ)
写真家。1996年岡山県生まれ、広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年春より旧市町村を周る旅に出る。
HP https://katsusukenishina.com/
X(旧Twitter)/Instagram @katsuo247



本内容は、月刊『戸籍時報』令和6年11月号 vol.860に掲載されたものです。

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