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戸籍時報連載『旧市区町村を訪ねて』21『韮山を支えた江川家』静岡県伊豆の国市~韮山町~(文・写真:仁科勝介)
明けましておめでとうございます。コンテンツビジネス推進部のMです。弊社刊行「戸籍時報」との好評連動企画、「旧市区町村を訪ねて」。
いつもたくさんの「スキ」をありがとうございます💛
本年もこの連載をどうぞよろしくお願いします。
今回、令和7年1月号掲載の第21回は、静岡県伊豆の国市から。有名な歴史遺産に触れ、その築造にも貢献した地元の偉人に思いを馳せた記事となっています。
いつものとおり、仁科さんの素敵なお写真をここではカラーでご紹介しています。
今後の連載も、ぜひお楽しみに!
~~本連載の著者は、写真家の仁科勝介さん。2018年3月から2020年1月にかけて、全国1741の市区町村を巡った彼が、2023年4月から再び、愛車のスーパーカブで日本中を旅しています。
今回の旅のテーマは、1999年に始まった平成の大合併前の旧市区町村を巡ること。いま一つのまちになっているところに、もともとは別の文化や暮らしがあった。いまも残る旧市区町村のよさや面影を探します。
仁科さんの写真と言葉から、今そこにある暮らしに少し触れてもらえたら嬉しいなと思います。~~
『韮山を支えた江川家』
伊豆半島の内陸部に位置する伊豆の国市は,2005年に田方(たがた)郡の伊豆長岡町,大仁(おおひと)町,韮山(にらやま)町が合併し,現在の姿になった。
今,韮山という地名を聞いて,最初に思い浮かぶのは,韮山反射炉ではないだろうか。韮山反射炉は『明治日本の産業革命遺産』として2015年に世界遺産に登録された,大砲鋳造炉だ。私も一度訪れたことがあったし,今回も訪れたいと思っていた。
ただ,その前に「江川邸」という場所が気になり,訪れてみることにした。邸宅の庭のさいかちの木の葉がかわいらしい。外観はとても立派で,主屋に入ると天井が突き抜けるように高く,自分の体が小さく感じられた。
ちょうど,係の方が案内してくださった。屋根の高さは最大12mであり,小屋組みという工法が用いられ,それが今でいう免震構造になっているという。こうしたつくりによって400年以上,地震がありながらも建物を支えてきたというのだから,感嘆させられる。
そして,私が最も気になっていたのは,この立派な建物を持つ江川家は,どのような存在なのだろう,ということだった。
係の方によると,江川家は,伊豆韮山を本拠とする江戸幕府の代官の家系で,現在も42代目の当主がいらっしゃるそうだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1734663001-JLX9Nbwi1ZQ4ugtn83RsBlHf.jpg?width=1200)
また,歴代の当主の中で最も有名なのは,36代当主の江川英龍という人物だ。
韮山反射炉の築造にも彼の存在が大きく関わっていた。また,絵や茶道を好む文化人の要素も持ちあわせている一方,普段の彼は質素倹約を好み,なおかつ勉強熱心だったという。
さらに英龍は韮山で塾も開き,教育にも力を注いでいる。門下生には,幕末から明治にかけて活躍した人物が数多くいる。だからこそ,江川家の存在は地元の人々の心に根付き,今も江川邸が大切に残されているのだろうなあと感じた。
お家柄というものが単なる権威の象徴になってしまったとき,人々はその家の言うことに従うかもしれないけれど,真についてはいかないだろう。だが,英龍をはじめとする江川家の歴史や考え方に触れていくと,人々が自然と親しみ,そして信頼感を持つような,あたたかさと強さが感じられた。
江川邸を訪れて,大分県日田市で近世日本最大規模の私塾を開いた,廣瀬淡窓をはじめとする廣瀬家が思い浮かんだ。
廣瀬家の家訓は「心高身低(しんこうしんてい)」だ。
志は高く,身は低く。ほんとうに立派な人たちは,自らのことを大きく宣伝しない。そのような,切に,世のため人のために尽くした人たちが,日本のそれぞれの土地にいて,今がある。そのことを忘れずにいたい。
(かつお╱Katsusuke Nishina)
仁科勝介(にしなかつすけ)
写真家。1996年岡山県生まれ、広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年春より旧市町村を周る旅に出る。
HP https://katsusukenishina.com/
X(旧Twitter)/Instagram @katsuo247
![](https://assets.st-note.com/img/1734663126-rJYyV2ILNZp0Fw8nG7vXdzWk.jpg)
本内容は、月刊『戸籍時報』令和7年1月号 vol.862に掲載されたものです。
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