駆け出しの日本語教師が尋ねる「わかりますか?」
東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。
駆け出しの日本語教師だった頃、「大丈夫ですか?」「わかりますか?」とよく聞いていました。
自分でもわかってはいたのです。
「わかりますか?」と尋ねても、東アジアの学生なら、「わかりません」という答えは返ってきません。
本当に理解しているのかどうかについて、こんな言葉で本当のことを引き出すことはできません。
それでも、聞かずにはいられなかったのです。
自分が無意味な言葉を発しているという自覚はありました。
絶対にわかってないな、という顔をして、頷いていますから。
目がうつろ、泳いでいますから。
何か聞いては時間もかかるし先生に悪い、という気持ちがあったかもしれません。
質問するだけの日本語力がなかったのかもしれません。
わかった、という顔つきの学生だって、本当のところはわかりはしません。
自信があるだけかもしれないし、誤解しているかもしれないのです。
本当にひどかったと思うのは、そのようなことに薄々感じつつも、もう見なかったことにして進めていたということです。
学生が理解できていないことは、学生のせいではなく、自分のせいだということも痛感していました。
未熟な教師でした。悪い教師でした。
どれほど、どのぐらいの年月、「わかりますか?」と言っていたでしょうか。
その語彙なり文法項目なりが使えていれば、わかっているでしょう。
それを要求する質問をすればいいのです。
けれども、これが教師初心者のうちはできなかったんですね〜。
いやもう、あの頃の学生には心から謝りたいです。