もはやキワモノではない? EUに懐疑的な右翼が躍進、どうなる欧州
欧州連合(EU)に懐疑的な右翼や右派の躍進が確実となった欧州議会選。EU内で指導力を発揮してきたマクロン仏大統領は国内での与党大敗を受け、下院の解散に踏み切った。民主主義の理想を追い求めてきたEUは、どこへ向かうのか。
「今夜のメッセージは、(EU本部がある)ブリュッセルの指導者に向けられたものだ。この偉大な愛国運動は、世界中で起きている国家への回帰に従ったものだ」。欧州議会選の開票が始まった9日夜、フランスの右翼政党「国民連合(RN)」のルペン前党首は、事実上の勝利宣言をした。
今回の結果の背景には、右翼、右派政党が、ルペン氏の言う「ブリュッセル」への市民の不満の受け皿になったことがある。
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻で、欧州では食料やエネルギー価格が上昇。住宅価格の高騰なども追い打ちをかけ、市民生活を圧迫した。
また、移民・難民の流入規模は、約10年前の「欧州難民危機」に並ぶ水準にまで達しており、各国の右翼政党などは「自国民を優先すべきだ」などと市民に訴えた。
EUが打ち出す先進的な環境政策では、農地の一定割合を休耕地にし、化学農薬の使用半減などを義務化。規制を受けた農家にとって生産コストの上昇が負担となったうえ、域外の安い農産物との競争を強いられるなど、そのしわ寄せが表れた。
こうした流れに、RNのような勢力はEUの理念である欧州統合に疑問を投げかけ、「自国第一主義」を唱えながら庶民の味方をアピールした。
過激な主張からこうした勢力を「極右」や「キワモノ」と受け止めるこれまでの風潮は薄れ、リベラル勢力に代わる新たな選択肢となった。
RNに投票したフランス北東部モゼル県のアラン・グランデさん(62)は、「『極右』というレッテル貼りの時代は終わりだ」と語り、こう訴えた。「右翼、右派勢力の勝利は、サイレントマジョリティーにとっての勝利でもあるのです」
(2024年6月11日朝日新聞ブリュッセル=牛尾梓)
〈ことば〉
懐疑的…ものごとの意味や価値に疑いを持つこと。
右翼、右派…保守的、国粋主義的な思想やそうした思想を持つ人(たち)。
躍進…急速に進歩、発展すること。
踏み切る…決断してある行動に移る。
回帰…ひとまわりして元に戻ること。
高騰…価格が、はっきりわかるほど大きく上がること。
強いる…おしつける。強制する。
しわ寄せ…あることの結果生じた矛盾や不利な条件を解決しないでほかに押
しつけること。
理念……ものごとがどうあるべきかについての根本的な考え方。
1 5行目「偉大な愛国運動」とは、具体的にはなにをさしますか。次からあて
はまるものを1つ選びなさい。
① 国家への回帰に従った行動。
② 右翼、右派政党が市民の不満の受け皿になったこと。
③ 国民戦線(RN)が、欧州統合に疑問を投げかけたこと。
④ 右翼、右派政党が欧州議会選で勝ったこと。
⑤ サイレントマジョリティーが欧州議会選で勝ったこと。
2欧州連合(EU)、国民戦線(RN)の主張について、次のことばに合うのはどちらですか。「EU」「RN」で書きなさい。
① 民主主義 ( ) ② 自国第一主義 ( )
③ リベラル勢力 ( ) ④ ブリュッセルの指導者 ( )
⑤ 国家への回帰 ( ) ⑥ 先進的な環境政策 ( )
3欧州議会選で右翼、右派政党が勝った理由はなんですか。次から正しいも
のを3つ選びなさい。
① マクロン仏大統領が国内での下院の解散に踏み切ったこと。
② ロシアによるウクライナ侵攻によって食料やエネルギー価格が上昇する
など、各方面で市民生活が圧迫されたこと。
③ 移民・難民の流入規模が、約10年前の「欧州難民危機」に並ぶ水準にま
で達していること。
④ 世界中で国家への回帰という現象が起きていること。
⑤ 化学農薬に対する規制が厳しくなって、農業経営がきびしくなったこ
と。
⑥ EU域の内外で安い野菜が出回っていること。
*もう一度読んでみよう。
欧州連合(EU)に懐疑的な右翼や右派の躍進が確実となった欧州議会選。EU内で指導力を発揮してきたマクロン仏大統領は国内での与党大敗を受け、下院の解散に踏み切った。民主主義の理想を追い求めてきたEUは、どこへ向かうのか。
「今夜のメッセージは、(EU本部がある)ブリュッセルの指導者に向けられたものだ。この偉大な愛国運動は、世界中で起きている国家への回帰に従ったものだ」。欧州議会選の開票が始まった9日夜、フランスの右翼政党「国民連合(RN)」のルペン前党首は、事実上の勝利宣言をした。
今回の結果の背景には、右翼、右派政党が、ルペン氏の言う「ブリュッセル」への市民の不満の受け皿になったことがある。
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻で、欧州では食料やエネルギー価格が上昇。住宅価格の高騰なども追い打ちをかけ、市民生活を圧迫した。
また、移民・難民の流入規模は、約10年前の「欧州難民危機」に並ぶ水準にまで達しており、各国の右翼政党などは「自国民を優先すべきだ」などと市民に訴えた。
EUが打ち出す先進的な環境政策では、農地の一定割合を休耕地にし、化学農薬の使用半減などを義務化。規制を受けた農家にとって生産コストの上昇が負担となったうえ、域外の安い農産物との競争を強いられるなど、そのしわ寄せが表れた。
こうした流れに、RNのような勢力はEUの理念である欧州統合に疑問を投げかけ、「自国第一主義」を唱えながら庶民の味方をアピールした。
過激な主張からこうした勢力を「極右」や「キワモノ」と受け止めるこれまでの風潮は薄れ、リベラル勢力に代わる新たな選択肢となった。
RNに投票したフランス北東部モゼル県のアラン・グランデさん(62)は、「『極右』というレッテル貼りの時代は終わりだ」と語り、こう訴えた。「右翼、右派勢力の勝利は、サイレントマジョリティーにとっての勝利でもあるのです」
〈こたえ〉
1 ④
2 ① EU ② RN ③ EU ④ EU ⑤ RN ⑥ EU
3正しいもの … ②、③、⑤