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ガウディの原点は自然美にある ダイナミックな建築思想、それは狂気か天才か


 聖堂内せいどうないあしれると、そこは「もり」。はしら樹木じゅもくのように上部じょうぶ枝分えだわかれし、天井てんじょうにはしげる。ステンドグラスから差しひかりは、太陽たいよううごきで刻々こくこく色調しきちょうわる木漏こもだ。外観がいかん装飾そうしょくにも動植物どうしょくぶつがあしらわれ、うつくしい自然しぜん要素ようそちている。
 ガウディは子どものとき重度じゅうどのリウマチで学校がっこうけず、祖父母そふぼむら静養せいようした。サグラダ・ファミリア聖堂せいどう会長代理かいちょうだいりエステベ・カンプス(76)は「子ども時代じだい自然しぜん観察かんさつつづけたことが、ガウディの原点げんてんにある」と指摘してきする。
 木はがっていても雨風あめかぜの中で力強》く立っている。「なぜ|柱《はしらっすぐじゃないといけないのか」。建築学校けんちくがっこう教師きょうしうったえたガウディ。教師きょうし卒業式そつぎょうしきで「狂気きょうき天才てんさいか分からないが、これまでだれかんがかなかったことを考えている人だ」とひょうしたという。
 世界遺産せかいいさん登録とうろくされた「降誕こうたん正面しょうめん」で、天使像てんしぞう植物しょくぶつとびらなどをがけた彫刻家ちょうこくか外尾そとお悦郎えつろう(70)は「ガウディが天才的てんさいてきなのは、機能きのう構造こうぞう象徴しょうちょう問題もんだいつね一度いちど解決かいけつしていること」とはなす。たとえば降誕こうたんもんはしら構造的こうぞうてき補強ほきょうする台座だいざのカメは、あまどいの機能きのうち、不変ふへんの象徴でもある。外尾によれば、ゆっくりでも休まずに聖堂の建設けんせつつづけようというメッセージでもあるという。

 外尾そとおは「苦悩くのうなかから自然しぜん謙虚けんきょつめ、ダイナミックに建築けんちくかしたガウディの姿勢しせいは、きびしい自然しぜんからまなび生きてきた日本の文化ぶんか精神性せいしんせいにもつうじる」と指摘してき。「ガウディの自然観察しぜんかんさつの力をぜひ見てほしい」とう。 (敬称略)(2023年12月5日中日新聞 バルセロナで、加藤美喜、写真も)
 


〈ことば〉重度…重い、病気などの程度が高いこと。
     リウマチ…関節が炎症を起こし、動かなくなったり変形したりす
          る病気。
     原点…おおもとになる点
     指摘…それと示すこと。
     狂気…気が狂っていること。
     天才…生まれつきすぐれた才能を持っていること。
     台座…物をのせておく台。
     機能…はたらき、作用。
     構造…組み立てつくること。
     象徴…形のないものをほかの形で表すこと、表したもの。
        シンボル。    
 



1「機能と構造と象徴の問題を常に一度に解決している」とあるが、どのよ
  うに解決しているのか。柱の台座のカメについて説明せつめいしなさい。
2ガウディの建築の原点は何だと言われていますか。
3「考えつく」は「考えて、なにかが心に浮かぶ」という意味です。
 同じ意味の言葉に次のようなものがあります。
 ① いいことを思いついた。
 他にも「そのような状態じょうたいである」ことを示す使つかい方があります。③~⑤は
 擬音語ぎおんご擬態語ぎたいごがもとになっています。もとになった言葉を考えてみよ
 う。
 ② まどにはりついたシールがとれない。
 ③ このつくえは、がたつくから使えない。
 ④ ねつがあるのか、なんだかふらついて歩けない。
 ⑤ あせ背中せなかがべたつく。 
 


*もう一度読んでみよう。
  聖堂内に足を踏み入れると、そこは「森」。柱は樹木のように上部が枝分かれし、天井には木の葉が茂る。ステンドグラスから差し込む光は、太陽の動きで刻々と色調が変わる木漏れ日だ。外観の装飾にも動植物があしらわれ、美しい自然の要素で満ちている。
 ガウディは子どもの時、重度のリウマチで学校に行けず、祖父母の村で静養した。サグラダ・ファミリア聖堂の会長代理エステベ・カンプス(76)は「子ども時代に自然の観察を続けたことが、ガウディの原点にある」と指摘する。
 木は曲がっていても雨風の中で力強く立っている。「なぜ柱は真っすぐじゃないといけないのか」。建築学校で教師に訴えたガウディ。教師は卒業式で「狂気か天才か分からないが、これまで誰も考え付かなかったことを考えている人だ」と評したという。
 世界遺産に登録された「降誕の正面」で、天使像や植物の扉などを手がけた彫刻家の外尾悦郎(70)は「ガウディが天才的なのは、機能と構造と象徴の問題を常に一度に解決していること」と話す。例えば降誕の門の柱を構造的に補強する台座のカメは、雨どいの機能を持ち、不変の象徴でもある。外尾によれば、ゆっくりでも休まずに聖堂の建設を続けようというメッセージでもあるという。
外尾は「苦悩の中から自然を謙虚に見つめ、ダイナミックに建築に生かしたガウディの姿勢は、厳しい自然から学び生きてきた日本の文化や精神性にも通じる」と指摘。「ガウディの自然観察の力をぜひ見てほしい」と言う。


〈こたえ〉
1台座のカメは、「門の柱を構造的に補強」している。…構造
 雨どいの機能を持っている。           …機能
 カメは長生きなので、不変の象徴である。     …象徴
2自然観察
3 ③ がたつく…がたがたする
 ④ ふらつく…ふらふらする
 ⑤ べたつく…べたべたする



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