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下水は「宝の山」考えた名古屋市 汚泥→高騰の肥料、年1千トン目標

 下水げすいは「たからやま」では――。そうかんがえた名古屋市なごやしが、下水処理げすいしょり過程かてい汚泥おでい肥料ひりょうまれわらせた。汚泥おでい植物しょくぶつ育成いくせい不可欠ふかけつな「窒素ちっそ」や、大半たいはん輸入ゆにゅう依存いぞんするものの価格かかく高騰こうとうする「りん」が豊富ほうふふくまれることにけた。年間ねんかん1せんトンの販売はんばい目指めざかんがえだ。
 下水汚泥げすいおでいひとのし尿にょうなどを体内たいないみ、分解ぶんかいした大量たいりょう微生物びせいぶつ死骸しがいで、市内しないでは1日にやく2まんトン発生はっせいする。現在げんざいでも、焼却灰しょうきゃくばいをセメントの原料げんりょうにしたり、乾燥かんそうさせて固形燃料こけいねんりょうなどに再利用さいりようしたりしている。
 これまでも肥料成分ひりょうせいぶんふくまれていることはられていたが、成分せいぶんにばらつきがおおきく、ニッケルなどの有害物質ゆうがいぶっしつふくまれることから、活用かつようされることはすくなかった。また、ほか肥料ひりょうぜての生産せいさん販売はんばいみとめられていなかった。
 ところが、ウクライナ危機きき世界的せかいてき穀物需要こくぼつじゅよう増加ぞうか影響えいきょうで、りんなど肥料ひりょう原料価格げんりょうかかく高騰こうとう。こうした状況じょうきょうけ、くに昨年さくねん下水汚泥げすいおでい積極利用せっきょくりようすることに方針ほうしん転換てんかんつくった肥料ひりょう品質ひんしつ定期的ていきてき成分分析せいぶいんぶんせき保証ほしょうすることを条件じょうけんに、幅広はばひろ流通りゅうつうみとめられるようになった。
 名古屋市なごやしは、すでにつくっている固形燃料こけいねんりょうをそのまま肥料ひりょう転用てんようできると判断はんだん同市港区どうしみなとくにある専用せんよう処理施設しょりしせつで1日やく7トンの肥料を作る計画けいかくだ。担当者たんとうしゃは「肥料ひりょうメーカーと協力きょうりょくし、利用りよう拡大かくだいつとめたい」と話す。 
                                                          (2024年8月26日朝日新聞 寺沢知海)
 


〈ことば〉
下水処理…家庭かてい工場こうじょうからながれる、使つかったあとのよごれたみずを、再利用さいりようできる
     ように浄化じょうかすること。
窒素、りん、ニッケル…元素記号げんそきごうじゅんにN、P、Ni
高騰…価格かかくがはっきりわかるほど上がること。
微生物…顕微鏡けんびきょうでないとえないほどちいさな生物せいぶつ細菌さいきん酵母こうぼ原生動物げんせいしょくぶつ
    ど。
死骸…ひと動物どうぶつんだからだ。
穀物需要…こめむぎ、アワ、ヒエ、キビ、まめなどを必要ひつようとしてもとめること。
 



1下水汚泥とは、どういうものをさしますか。
2下水汚泥には、どんな有効成分が含まれていますか。
3これまで下水汚泥が利用されてこなかったのは、なぜですか。
4今回、国が方針ほうしんえて下水汚泥を利用りようすることにしたのは、なぜです
 か。
 


*もう一度読んでみよう。

  下水は「宝の山」では――。そう考えた名古屋市が、下水処理の過程で出る汚泥を肥料に生まれ変わらせた。汚泥に植物の育成に不可欠な「窒素」や、大半を輸入に依存するものの価格が高騰する「りん」が豊富に含まれることに目を付けた。年間1千トンの販売を目指す考えだ。
 下水汚泥は人のし尿などを体内に取り込み、分解した大量の微生物の死骸で、市内では1日に約2万トン発生する。現在でも、焼却灰をセメントの原料にしたり、乾燥させて固形燃料などに再利用したりしている。
 これまでも肥料成分が含まれていることは知られていたが、成分にばらつきが大きく、ニッケルなどの有害物質も含まれることから、活用されることは少なかった。また、他の肥料に混ぜての生産・販売も認められていなかった。
 ところが、ウクライナ危機や世界的な穀物需要の増加の影響で、りんなど肥料の原料価格が高騰。こうした状況を受け、国は昨年、下水汚泥を積極利用することに方針を転換。作った肥料の品質を定期的な成分分析で保証することを条件に、幅広い流通が認められるようになった。
 名古屋市は、すでに作っている固形燃料をそのまま肥料に転用できると判断。同市港区にある専用の処理施設で1日約7トンの肥料を作る計画だ。市の担当者は「肥料メーカーと協力し、利用の拡大に努めたい」と話す。 
 


〈こたえ〉
1人のし尿などを体内に取り込み、分解した大量の微生物の死骸
2窒素、リン
3成分にばらつきが大きく、ニッケルなどの有害物質も含まれるから。
4ウクライナ危機や世界的な穀物需要の増加の影響で、りんなど肥料の原料価格が高騰したから。



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