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「政治系」動画 新たな金脈 ユーチューブ「切り抜き」 再生数荒稼ぎ
元となる長い動画の一部を抜粋し短く編集したユーチューブの「切り抜き動画」。兵庫県知事選では斎藤元彦知事の街頭演説や記者会見の切り抜き動画による拡散が増え、再選の原動力の一つとされた。この1、2年は政治家や選挙を題材にした「政治系」が人気を集めており、切り抜きの投稿者は「ユーチューブで金を稼ぐのなら政治系。別ジャンルの投稿者も参入し、まるでバブルだ」と話した。
#公式超え
切り抜き動画が流行したのは2021年ごろ、インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者の西村博之氏の切り抜き動画が人気となったのがきっかけだった。西村氏が視聴者の質問に答える形で世相を批評する公式チャンネルの動画を、西村氏と無関係の投稿者が手短に編集して、自らのチャンネルに投稿。1時間を超える動画の内容が手短に分かるとして視聴者に支持され、複数の切り抜きチャンネルの再生回数は月計3億回に上り、西村氏の公式チャンネルの再生回数を大きく超えるようになった。
(略)
#収益独占
21年から「ひろすき」のチャンネル名で西村氏の切り抜きを投稿している男性は「23年ごろから広島県安芸高田市長だった石丸伸二氏の切り抜きが流行し、政治系の人気に火が付いた。今は完全に政治系がブームだ。再生回数の伸びが全く違う」と話す。
また西村氏ら著名人の切り抜きを制作して収益を得ようとすると、本人の許可を得て収益の一部を還元する必要がある。しかし政治系の切り抜きは、議会中継や街頭演説など一般公開された動画を素材にするため、収益を独占できることも魅力だという。
#奪い合い
ゲーム業界やネット関連などの解説動画を投稿している「ナカイド」さんは「ゲーム実況などの投稿者が人気に目を付け、政治系にくら替えして再生回数が10倍や100倍になった例もある」と明かす。「切り抜きの流行で似通った動画があふれ、ユーチューブそのものへの評価が下がりかねない。視聴者の目を引くために、ほとんど内容と関係のないようなタイトルの動画も増えている」と話す。
一方「動画投稿は、いわば視聴者の『可処分時間』の奪い合い。興味を引く動画を作り、ユーチューブ以外の娯楽に奪われないように心を砕いている」とした上で「政治とユーチューブやSNSの相性は、とても良い。切り抜きは政治家本人の発信ではなく、第三者が紹介するので視聴者の信頼を得やすい。政治系動画の規制が必要との声もあるが、実効性があるかどうかは疑問だ」と分析した。
( 2025.01.04 中日新聞 核心)
〈ことば〉
拡散……散らばって広がること。広げること。
バブル…1980~1990年初頭の、日本の好景気の時期。不動産や株などの資産
価値が実体経済と離れていて、やがて泡のように沈静化した。
収益…事業などによって得た利益。
還元…元に戻ること。
目をつける…特に注意して見る。
くら替え…仕事、勤め先・所属などを別のものに変えること。
1 切り抜き動画が人気なのはなぜですか。
2 最近政治系の切り抜き動画が多くなっているのは、なぜですか。
3「『可処分時間』の奪い合い」とは、どういうことですか。次から1つ選
びなさい。
ア 人が自分の思うように時間を使うこと。
イ テレビや配信動画、SNSなど、視聴者には選ぶ媒体が多くあるこ
と。
ウ 切り抜きは政治家本人ではなく、第三者が紹介するので信頼性が高
いということ。
エ 視聴者のあいた時間を、自分の投稿した動画の視聴に当てさせるこ
と。
オ 暇な時間に動画を見たりゲームをしたりすること。
*もう一度読んでみよう。
元となる長い動画の一部を抜粋し短く編集したユーチューブの「切り抜き動画」。兵庫県知事選では斎藤元彦知事の街頭演説や記者会見の切り抜き動画による拡散が増え、再選の原動力の一つとされた。この1、2年は政治家や選挙を題材にした「政治系」が人気を集めており、切り抜きの投稿者は「ユーチューブで金を稼ぐのなら政治系。別ジャンルの投稿者も参入し、まるでバブルだ」と話した。
#公式超え
切り抜き動画が流行したのは2021年ごろ、インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者の西村博之氏の切り抜き動画が人気となったのがきっかけだった。西村氏が視聴者の質問に答える形で世相を批評する公式チャンネルの動画を、西村氏と無関係の投稿者が手短に編集して、自らのチャンネルに投稿。1時間を超える動画の内容が手短に分かるとして視聴者に支持され、複数の切り抜きチャンネルの再生回数は月計3億回に上り、西村氏の公式チャンネルの再生回数を大きく超えるようになった。
(略)
#収益独占
21年から「ひろすき」のチャンネル名で西村氏の切り抜きを投稿している男性は「23年ごろから広島県安芸高田市長だった石丸伸二氏の切り抜きが流行し、政治系の人気に火が付いた。今は完全に政治系がブームだ。再生回数の伸びが全く違う」と話す。
また西村氏ら著名人の切り抜きを制作して収益を得ようとすると、本人の許可を得て収益の一部を還元する必要がある。しかし政治系の切り抜きは、議会中継や街頭演説など一般公開された動画を素材にするため、収益を独占できることも魅力だという。
#奪い合い
ゲーム業界やネット関連などの解説動画を投稿している「ナカイド」さんは「ゲーム実況などの投稿者が人気に目を付け、政治系にくら替えして再生回数が10倍や100倍になった例もある」と明かす。「切り抜きの流行で似通った動画があふれ、ユーチューブそのものへの評価が下がりかねない。視聴者の目を引くために、ほとんど内容と関係のないようなタイトルの動画も増えている」と話す。
一方「動画投稿は、いわば視聴者の『可処分時間』の奪い合い。興味を引く動画を作り、ユーチューブ以外の娯楽に奪われないように心を砕いている」とした上で「政治とユーチューブやSNSの相性は、とても良い。切り抜きは政治家本人の発信ではなく、第三者が紹介するので視聴者の信頼を得やすい。政治系動画の規制が必要との声もあるが、実効性があるかどうかは疑問だ」と分析した。
〈こたえ〉
1 長い動画の内容が手短に分かるから。
2 著名人の切り抜きを制作して収益を得ようとすると、本人の許可を得て収
益の一部を還元する必要がある。しかし政治系の切り抜きは、議会中継や
街頭演説など一般公開された動画を素材にするため、収益を独占できるか
ら。
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