【私が出会った海外ルーツの子どもたち】高校受験直前に知った偏差値のこと。
みなさん、こんにちは。
MIKIです。
この記事は2019年2月9日に公開した記事です。
今回、加筆修正をして公開しています。
当時の状況であり、現在とは違う可能性が大きいです。
その点をご留意の上、お読みください。
これまで私が出会ってきた海外ルーツの子どもたち。
そんなに多くないけど、子どもたちを通して知った日本社会の断面。
海外ルーツの子どもたちや家族と接する人たちへの参考、そして、これが「多文化共生社会」へ少しでも生かされることを願って、ここに書きたいと思います。
今日は日本で高校進学を控えた女の子と進学事情を知らずにいた両親のお話です。
初対面のとき
仮名 チエミちゃん
ルーツ ブラジル
学年 中学3年生
将来の夢 幼稚園の先生
★ 面倒見のいいお姉さんタイプ
出会ったのはチエミちゃんがまだ小学生の頃。
日系ブラジル人の両親と弟とともに、小学校低学年の頃に来日した。
私は当時、関わっていたボランティア団体で日本語を教えていた時に、チエミちゃんのお父さんと知り合った。
休日にバーベキューに招かれて、チエミちゃんとあったのが初対面。
日本語でのコミュニケーションも問題がなく、両親より日本の学校で習ったチエミちゃんの方が日本語は上手だった。
両親もチエミちゃんの日本の学校での成績に心配はしていない様子だった。
バーベキューに来ていた年下の子どもたちの面倒もよく見るお姉さんタイプのチエミちゃん。
将来の夢は「先生になること」と話してくれた。
第一志望は底辺校???
時は経って、みんなで恒例のバーベキューをしていた夏のある日のこと。
チエミちゃんのお母さんと話していた。
私「そういえば、チエミちゃん、中学3年生だよね。高校はもう決めた?」
チエミちゃんのお母さん「うん。家から近い〇〇高校にしようと思ってる。」
お母さんが口にしたその学校の名は、地元ではあまりいい噂を聞かない高校。
私はびっくりし、なぜその学校を選んだか、尋ねたら
「だって、家から近いし、自転車でも行けるから。」
そうか、確かに自転車で行けるけど、第一志望がそこでなくてもいいはず。
大きなおいしそうなお肉を横に置き、少し丁寧に話をすることにした。
「日本には高校のレベルがあるんだよ。」
私はお母さんに中学校での進学説明会に行っているか、進路希望調査などのことを聞いた。
案の定、「日本語ができない」を理由に説明会へは行っていないし、進路希望調査のことは全く知らなかった。
日本の高校は偏差値があり、田舎の高校でも成績によって入れる高校が違うことを説明したら、目を丸くして、びっくりしていた。
お母さん「 こんな田舎でも、レベルがあるの!? 」
はい。あるんですよ。
で、先ほどの〇〇高校はこの地域では一番下の高校であること、校風もおすすめしないことを説明したら、やっと
「こりゃ、大変だ!」
と気づいてくれた。
ブラジルでの高校進学
以下の話は当時の話であり、時代と地域によって違うことがありますので、ご注意ください。
お母さんがブラジルでの高校進学について話してくれた。
ブラジルの高校は私立の場合、いろいろと条件があるけど、田舎の公立の高校は近いところを選ぶことが多いわよ。サンパウロ市とか、大きな街だったら、いろんなレベルがあるみたいだけど。
お母さんはブラジルで公立の高校を卒業してから、ブラジルで就職し、1990年の入国管理法の改正後、日系人として日本へ働きに来ていた。
自分の経験を日本で育っている自分の子にも当てはめて考えていたのだ。
「進学ガイダンス」が必要だ!!
日本で子育てをしている海外ルーツの家族の場合、こうしたケースが少なくない。
「日本も同じだろう」という考えでいるのだ。
日本で働きながら、子育てをするというのは簡単なことではない。
日々の労働で身も心もいっぱい、いっぱい。
決して子どもに興味関心がないわけではないが、子どもの将来を「きっと自分の時と同じ」と思い至ってしまうことに非難はできない。
当時、私はこうした家族が多いのではないかと考え、ボランティア団体と話し合い、独自の「進学ガイダンス」を開催した。
そこでは、海外ルーツの高校生を呼び、高校受験のことや高校生活について日本語とポルトガル語で講演してもらった。
予想通り、多くの海外ルーツの家族がいて、悩んでいたことがわかった。
そして、チエミちゃんは
チエミちゃんに話を戻そう。
チエミちゃんと二人で少し話した。今まで、親とは進学のことは話してこなかったとチエミちゃんは言う。
理由は「だって、ママたち忙しそうだから」。
日本語で難しい(立ち入った)ことを話しても、わかってもらえない。
私「でも、チエミちゃんのことが大好きなパパとママなら、大丈夫、話してごらん。」
そこから始まった親子会議。良い方向に向かいそうな気配に安堵したのを覚えています。
その後、チエミちゃんは自分の夢を追い、家族は最大限に応援をし、保育士の免許が取得できる短大へ進学した。
今では子どもたちに囲まれて、日々忙しく働いている様子だ。
見逃されやすい環境の子どもたち
きっかけはバーベキューの時の雑談から見えた日本社会で取り残されていた子どもとその家族。
来日直後とは違い、日本語の会話もできるし、学校の勉強も大きな問題はない。
でも、日本では当然として考えられていること、今回は「高校には偏差値(レベル)がある」ということを知らずにいた両親に育てられていた。
決して、両親が悪いわけではない。しかし、こうした子どもは見逃されやすい。
見逃されやすい子どもは、一見、問題なさそうで、周りも親も、もしかしたら子ども本人も気づいていないことがある。
一人でも多くの人がこうした環境に置かれている家族、子どもがいることを知ってほしい。
そして、私は走り続ける。