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大阪夫婦こぼれ話

これは主人が学生の頃…もう、二十年以上前の話になります。

主人はカラオケ店で深夜までのアルバイトを終え、徒歩で帰路についていました。

車道を走る車の数こそいくらかありましたが、歩道を歩くのは主人だけでした。

しかも生憎の天気、雨。

傘の隙間から入ってくる雨の雫を感じつつ、ぼんやり歩いていると


キキィー!


街路を照らしていた電灯の光が雨で散乱し、人影に見えたのでしょうか?

主人の側で、イキナリ車が急停止したのです。

呆気に取られて見ていると、またたく間に

ドン!

ドン!

夜の静寂に、何かを破裂させたような音が響きました。

前の車の急ブレーキにたまらず後続車が次々とぶつかり、玉突き事故となりました。

すると、いちばん前の車の運転手は何を思ったのか?

ブルルン、ドゥーーーン…

なんと、アクセルを踏みその場を立ち去ろうとしました。

驚く間もなくさらに、二番目の車の運転手が


「待てやゴルァーー!!」

怒声を浴びせつつ、前の車を追いかけ始めました。
ニ両の車は、主人の視界からすぐに消えました。

後に、主人は事故に巻き込まれた三台の車で、二番目がいちばん「怒る」理由が分かる、と言います。

なんの過失もないのに、前も後ろも傷付いている。

ただ、すぐに怒って追いかける胆力が自分にあるかどうかは分からないそうです。
(それが最善の方法なのかも)

呆気に取られる主人。

ようやく、最後尾の運転手も車を降りて、目の前で突然始まったカーレースで車が去った方を、呆然と見詰めていたそうです。

途方に暮れる運転手が、ふと後ろを振り向くき、主人と目が合いました。

しばらく見つめ合う二人。


「……うん…なあ?」

「いや……ねえ」


彼らは初対面でありながら、
お互いの「言いたいこと」を理解し合いました。

吊り橋効果に近いものがあったのかと思います。(ちょっと違うかも)

「おニーチャン、車のナンバーとかみた?」
「いや…すんません」
「そうかー…。まあ、行き?気ぃつけや」

一期一会ながら、忘れられない衝撃の出来事だったらしいです。


個人的には、逃げた運転手をすぐに追いかけるというアクションを取った、血の気の多い二番目の男の人に、「事故、その後」の話を聞いてみたいです。


終わり

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