周期表の話

皆さまはじめまして。私は大学院で化学系の研究をしている者です。名前は二ヒコテとでも呼んでいただけると嬉しいです。国語は苦手なので文章作成にはあまり自信がないですが優しい目で気楽に読んでいただければ幸いです。

化学と言えば周期表!周期表の話をしなくては!周期表はただ原子を順番に並べたものではありません。だって「周期」表ですから。周期があります。周期表を知ることは物質そのものを知ることであります。

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上図は誰もが一度は見たことがあるであろう周期表です。見ているだけで半日は潰せますね(キショ発言失礼)。少し周期表について軽く見方を話します。この辺は高校では触れるかと思います。

周期表の縦の列は「」で、1から18までの族があります。価電子の数が等しいので縦の列に性質の似た元素が並びます。同族元素には固有の名称が付いているものもあります。1族元素(水素除く)はアルカリ金属、2族元素(ベリリウム・マグネシウム除く)はアルカリ土類金属、17族元素はハロゲン、18族元素は貴ガスです。なぜ「アルカリ」金属と言うのか。理由は簡単です。水に溶かすと塩基(アルカリ)性になるからです。ハロゲンはギリシャ語で塩hálsと生み出すgenélssの造語で、halogèneは塩を生み出す元素なのです。食塩(NaCl)がハロゲン化合物なので納得の由来です。貴ガスは私が教わった当時の教科書では希ガスでした。希ガスは英語でRare Gasと言います。英語の意味通り希少なガスだったのです(抽出するのが難しいので)。ただ実際はアルゴンは空気中に約1%存在しているなどそこまで珍しくはないので今では反応性が乏しいという意味から希ではなく「貴」が使われています。貴金属の貴と一緒の意味です。英語ではNobel Gasと言います。ちなみに貴金属がNobel Metalです。
横の列が「周期」で、1~7までの周期があります。周期は電子殻に最大で何個電子が入るかで変わります。同周期の元素は電子殻の数が等しいです。

このように周期表は各々の元素がもつ性質に基づいて分類されています。ではどのように分類したのか?今からは周期表成立の歴史について書こうかと思います。4記事続いて歴史の話となってしまい申し訳ありませんm(_ _)m

近代の実験に基づく客観的な化学が確立した時代、元素の概念が定まったためラボアジエは当時見つかっていた33種類の元素を金属・土類(水に溶けず還元しにくい金属の酸化物)・非金属の3つに分類しました。イギリスの化学者デービーとスウェーデンの化学者ベルツェリウスが更に元素の概念を詳しく掘り下げていったこともあり、元素の特徴に基づく分類に焦点が当てられるようになりました。

周期表成立の歴史において、初期に活躍したのがベルギーの化学者スタスとドイツの化学者デベライナーです。スタスは原子量の測定を中心に研究を行いました。これにてドルトンの示した原子量があまり正確ではないことが発覚したわけです(後にベルセーリウスが約2000種類の化合物から分子量を測定するという超人的な実験を行う契機となります)。デベライナーはスタスが測定した測定の結果から元素分析を行いました。そうすると、性質の似た元素が3つずつの組を作ること、更に原子量は等差数列のように増えていくということに気がつきました。性質の似た3つの元素を三つ組元素と呼びました。例えば三つ組元素LiーNaーKの原子量はそれぞれ7.0ー23ー39なのですが、16ずつ原子量が増えていることが分かるかと思います。更にフランスでバラールらによって臭素が発見された際、デベライナーはClとIの間に原子量が81くらいの似た性質をもつ液体元素が発見されるであろうと予言していました。これが見事的中したのです!(三つ組元素ClーBrーIの原子量はそれぞれ35.5ー79.9ー127です)これが族の考え方に繋がります。

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次に大事なのはフランスの地質学者シャンクールトアです。1862年に元素を原子量の順で螺旋状に並べることで1回転を16個に分割した円柱で同じ線上に現れる物質がある(下図を参照してください)ことを見つけました。これを地のネジ(地の螺旋)と呼びました。これは所謂周期の概念なのですが、シャンクルートアが化学者ではなかったので当時はあまり注目されませんでした。イギリスでは化学者ニューランズがシャンクールトアとほぼ同時期に性質の似た元素が8番目毎に現れるというオクターブの法則を学会に発表しました(8回毎に同じ音階がやってくるオクターブの関係と一緒なのでそう名付けられました)。このオクターブの法則も周期の発見なのですが、当時はこれでもかという冷遇っぷりでした。後にドイツの化学者マイヤーが1869年に周期律があることを発表し、今ではニューランズは再評価されています。

らせん

そして最後に紹介するのはロシアの化学者メンデレーエフです。私が尊敬する化学者の中でも5本の指に入ります。メンデレーエフはなんとなく授業で扱う教師の方もいたのではないでしょうか?私としてはメンデレーエフの話を飛ばす教師はありえない!とまで思っています。メンデレーエフは1869年に当時知られていた63種類の原子を単体や化合物の性質に基づき分類した周期表を発表しました。水銀と金の位置が逆だったくらいしか相違点がなかったほど正確なものでした。驚くべきなのは当時はまだ原子の構造は何にも分かっていない時代ということです。トムソンが電子を見つけたのは19世紀末、ラザフォードとボーアが原子模型を発表したのは20世紀に入ってからの話です。メンデレーエフの凄いところは分からないところを無理して埋めず、空欄にした状態で発表したということです(?=45など)。

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更にメンデレーエフの凄いところは一部空欄にして暫定元素を予言したのですが、その予言が引くレベルで的中したのです!しかも何個も!

メンデレーエフがエカアルミニウム(エカはサンスクリット語で1なので、Aの次の周期に来る同族元素をエカAとしました)として予言した元素はGa(ガリウム)、エカケイ素として予言した元素はGe(ゲルマニウム)の特徴がほぼ一致しました(ガリウムはボアボードランが閃亜鉛鉱から、ゲルマニウムはニルソンがガドリン石から発見しています)。更にエカホウ素として予想した元素は今の周期表と位置は異なるが、Sc(スカンジウム)とほぼ一致したのでメンデレーエフの発表した周期表は当時の中ではものすごく正確なものだと認識されたのです。

ちなみに2019年はメンデレーエフが周期表を発表してからちょうど150周年ということもあり国連やUNESCOが総出で 「#IYPT2019」のハッシュタグを付けてメンデレーエフの功績を広めようとしたようです。もちろんメンデレーエフの功績は素晴らしいが、メンデレーエフ以前の化学者にもスポットライトを当てたいと思い敢えて今回はさまざまな化学者(シャンクールトアは地質学者)の名前を出しました。なのでいつも以上に読みにくくなっているかもしれませんし、途中で飽きてここまで読んでいない方もいるかと思います(次回からはもう少し短くします)。最後まで飽きずに読んで下さりありがとうございます。

皆さまとの出会いに感謝、略してC₁₀H₂₂です!

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