見出し画像

7.時間が止まるような美味しさ

『ビラ・バーガー』 経営者:ユシマ・コウイチ氏 / 聞き手:けさらんぱさらん研究所 所長 にへどん

にへどん:
 本日は、最近、若い人の間で大人気の、南極のエビの肉のハンバーガーを販売している 『ビラ・バーガー』 の経営者でいらっしゃいます、ユシマ・コウイチさんにお話を伺いたいと思っていましたが、まだユシマさん、お見えになっていないようですね。
 ユシマさんは、飲食業界でも有名な変わり者として知られている方なので、私はこのインタビューが決まってからというもの、まさに 『メガトン級の水爆を腹いっぱい詰め込んでいるような気分』 が続いているのですが、本日、大丈夫ですかねぇ・・・。
 あ、ユシマさんがお見えになったようです。

ユシマ:
 いやー、遅れてすみません。
 どうも、『宇宙人のスパイ』 に見張られているようだったので、遠回りをして奴らを巻いてきたのです。

にへどん:
 それは大変でしたね。それはそうと、本日はよろしくお願いします。
 さっそくですが、大人気の 『ビラ・バーガー』 ですが、ユシマさんはこの人気の原因をどう分析していますか?

ユシマ:
 やっぱり味です、まずは食材へのコダワリですね。
 うちのバーガーは、一般には “エビ肉を使ったバーガー” と言われていますが、皆さんが考えているようなエビとはかなり違ったエビなんですよ。
 とてもジューシーで肉感があり、甘みと旨味が豊富な 『ビラ・エビ』 という南極に住む、超大型のエビを使っているんですよ。

にへどん:
 南極に住んでいるエビなんですね。
 そういえば、ユシマさんはかつて南氷洋で漁をする漁師さんでしたよね。
 “南極のエビを使っている” というのは、そのときのご職業と関係があるんですか?

ユシマ:
 え、漁師ですって? 何を言ってるんですか。
 私は20代で既に 『5つの博士号』 を取った、 『地球の頭脳』 と呼ばれる大天才ですよ。
 私が若い頃働いていたのは、南極に建てられた 『TDF科学センター』 です。そして、その時に、偶然発見したのが 『ビラ・エビ』 だったんです。

にへどん:
 あ、どうもすみませんでした。
 私が入手したデータでは、ユシマさんは南氷洋で漁業を営む遠洋漁業の漁師さんだと書かれていたのですが、これは間違いだったようですね・・。
 ホントに申し訳ございません。

ユシマ:
 もしかしたら、『宇宙人のスパイ』 が私の経歴を入れ替えたのかもしれませんねぇ、まったく困ったもんです。

にへどん:
 なるほど。だとすると『宇宙人のスパイ』 には油断も隙もありませんねぇ。
 で、話を戻しますが、その 『ビラ・エビ』 という南氷洋に住むエビですけど、現在は、どのようにして仕入れているんですか? 

ユシマ:
 私が働いていた、つまり 『世界の頭脳』 として研究をしていた 『TDF科学センター』 には、『マックス号』 という最新鋭の調査船がありましてねぇ、その船が調査捕獲した 『ビラ・エビ』 を分けてもらっているんですよ。

にへどん:
 あれ、『マックス号』 っていうのは、私の資料では、ユシマさんが以前乗っていた漁船の名前として書かれていますねぇ。
 この資料だと、『マックス号』 の船長は 『コウダ・ムネマル』 という方で、『タツコ』 という愛人を囲うために、密漁やら密輸やらを繰り返して、最近では 『ゴモラ共和国』 ともイザコザを起こした人物となっているんですが、もしかしてこれも 『宇宙人のスパイ』 による情報改ざんなんですね。いやー、恐ろしいなぁ。

ユシマ:
 まったく、恐ろしいです。
 おそらくその宇宙人は けさらんぱさらん研究所のレーダーをも破壊しようとしているのかもしれませんよ。

にへどん:
 ま、うちの研究所にはレーダーなんてないんで、それは大丈夫だと思いますが・・・。とにかく気を付けたいと思います。
 ところでユシマさんのお店の 『ビラ・バーガー』 ですが、素材だけでなく、調理法にもかなりのコダワリがあるようですね。

ユシマ:
 そうなんです。一番のコダワリは、私が発明した 『ユシマ・ダイオード』 という調理器具を使っているということです。
 これは、最新鋭の電子工学を活用し、『ビラ・エビ』 をふっくらとジューシーに調理するための器具なんです。
 これが無いと本当の 『ビラ・バーガー』 はできません。

にへどん:
 ユシマさん、大変ですよ。私の資料だと、『ユシマ・ダイオード』 の事も、"中古調理器具屋から安い値段で買いたたいて手に入れた旧式のフライヤーにユシマさんが勝手に名前を付けたモノ" と書かれています。
 まったく、どこまで 『宇宙人のスパイ』 はやらかしてくれるんでしょう。
 もしかしたら彼らは、その 『ユシマ・ダイオード』 の秘密を狙っているのかもしれませんよ。ユシマさん、お気お付けくださいね。

ユシマ:
 ありがとうございます。でも大丈夫です。私には TDFから派遣された 『フルハシ』 さんという頼もしいボディーガードがいますから。

にへどん:
 それは安心ですね。あれ、でも 『フルハシ』 さんですか・・・。
 私が以前インタビューした 某食材メーカーの社長さんと同じ名前だなぁ。
 私の資料だと、『ビラ・バーガー』 にも 『フルハシ』 さんの会社はいくつか食材を卸しているので、ボディーガードじゃなくて 単なる営業活動で定期的にユシマさんをお尋ねしているだけのような気もしますが、ま、いいですね、そんなこと。
 ところで、先ほど教えていただいたように 『世界の頭脳』 とまで呼ばれたユシマさんが、何故、『ビラ・バーガー』 を立ち上げようと思ったのですか?

ユシマ:
 それはですね、ある事件がキッカケなのです。
 私が南極の 『科学センター』 で働いていた時に、例の 『宇宙人のスパイ』 によって襲われたことがありましてねぇ。
 その宇宙人の額から発せられる光線で意識不明にされたことがあるんですよ。多分、私の頭脳から情報を抜き取ったんでしょうねぇ。
 で、目が覚めた時に 『ここはどこです、どうしてぼくはここに? 私はロケットに乗っていたのでは』 とつぶやいたらしいのですよ。
 それ以来、なぜか 巨大エビ のことが気になりましてねぇ。『地球の頭脳』 として生きるよりも 『ビラ・バーガー』 の経営者として生きる道を選んだわけです。
 このあたりは にへどんさんの資料ではどのように書いてありますか?

にへどん:
 いやー、『宇宙人のスパイ』 は実に恐ろしいですよ。私の資料では “巨大エビの密猟をしていた時に、滑って転んで頭を打って意識を無くし、その後、よくわからない妄想を口にするようになったので、漁船をクビになり、実家の両親の定食屋を継いだ” となっていますよ。
 そして “コウダ船長が密猟した南氷洋の巨大エビを横流ししてもらい、試行錯誤したうえで、今、大人気の 『ビラ・バーガー』 が誕生した” ということです。
 どちらにせよ、食材としての 『ビラエビ』 が良かったのと、その調理法を開発したユシマさんの料理人としての腕は、素晴らしかったということは間違いないですけどね。

ユシマ:
 ま、料理人としての腕が良かったのは間違いないでしょうね。なにせ、漁師時代はずーっと料理番をやらされていましたから。
 ま、ドジなんで漁師の仕事ではいつも失敗ばっかりしていたんで、船長から 「お前は飯の支度だけしてればいい」 って言われたからなんですけどね・・・。

にへどん:
 あれ、やっぱりユシマさんは元漁師だったのですか?

ユシマ:
 え、そんなこと言いましたか?
 あ、もしかしたら 『宇宙人のスパイ』 によって 『心を植え付けた』 のかもしれません。いやー、ホントに宇宙人は恐ろしいです。

にへどん:
 ほんとに恐ろしいですね。お互いに気を付けたいものです。
 ユシマさん、本日は素敵なお話をありがとうございました。

ユシマ:
 はい、ありがとうございました。
 『ビラ・バーガー』 をまだ食べたことが無い方は、是非、この機会に “まるで 『時間が止められた』 ような気分になる味" を是非、お試ししてください。

【ご参考まで】
●「世界の頭脳」と呼ばれ「20代で既に 5つの博士号を持つ」天才科学者ユシマ博士は、ウルトラセブン第5話「消された時間」に登場した人物。
●彼の開発した「ユシマ・ダイオード」を使って日本支部のレーダーの精度を格段に向上させるために、ウルトラ警備隊の南極基地から日本支部に向かう途中、ビラ星人により意識を乗っ取られ、日本支部のレーダー施設を破壊すべく工作活動を行った。
●マックス号は、ウルトラセブン第4話「マックス号応答せよ」に登場する地球防衛軍が誇る新造原子力船の名前。
●マックス号の船長を演じたのが幸田宗丸さんで、ゴドラ星人が化けた女性(ダンをスパナでぶん殴りウルトラアイを盗んだ)を演じたのが水上竜子さん。
●フルハシ氏へのインタビューはコチラ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?