ひめゆり(2021/7/10昼)
※ネタバレ注意!
驚いたことに今回が初ひめゆり。ロビーに置かれている沢山の飾り花にこの作品に関わる人がどれだけ多いか、実感させれれる。
幕開けの客電の落とし方から「どうやって観客を1945年の沖縄に疑似タイムスリップさせるか」の気配りが見えてくるし、歌いだす前の芝居にも色々想像させられる。
学校の朝礼(?)から始まる物語。教頭先生の言葉も、そこに続く先生と生徒たちが全員で同じことを言うところにもう間違いがたくさん。神谷先生の「学校を捨てるか」の一言がまた罪深い。
卒業式も史実準拠なのね。今回のはるちゃんは素朴に優踏生してたというより自信満々でプライド持って県内トップの級長やってたイメージ。その県内トップが土壇場で右往左往するのがはるかなみさで、かなり意図的にどん底の笑いを演出しにきているけど「17歳で~」で自分がうっかり吹くとは思わなんだ。そして米兵が明らかに野良猫とか餌付けするテンションでしかないのがまた皮肉。
キミちゃん。1幕では素朴な女のコたったのが2幕で途端に透明度が上がる。最後の最後で軍曹に逆らって、ガス弾からもとっさの動きで生き残るあたり本質的に生きる力が強い子なのかもな。そしてそれを意図せず他人に与えられるのが、婦長さんとの共通点か。
吉澤さんの婦長は聖属性と魅了スキルの合わせ技で圧倒してくる。まず赴任早々、複数の女学生をたらし込むとは恐ろしい技量(違う
ふみちゃん。ある種この子が一番劇中で化ける役どころなのかも。自分の「帰りたい」ではなく妹の「帰りたい」で明らかに変わる。撤退でもまず死ぬのはやめようと誰よりも最初に言うし、帰りたい理由も妹が病弱だからだった。一言で言い表せば慧眼のお姉ちゃん。沢山のものが失われた劇中で何かを勝ち得た数少ない人物だと思う。
檜山さん。あの地獄絵図の病院に隠形して第一声まで存在を気づかせないという演出がまたすごい。ある種そこまで心が死んでいたのがキミとのやりとりで苦悩や悔恨を取り戻して、最後は人として死ねたのだとしたら。この人もこの物語の中で何かを勝ち取ったひとりかもしれない。これは余談だけど彼にしろ杉原さんにしろ上等兵が寝ている別途は2段じゃないのは演出なのか。でも階級で扱いが露骨なのがらしいといえばらしい。
ゆきちゃん。美味しい役どころ。小鳥の歌はすべてが終わったあとのガマの中を描いているのか?そういえば沖縄に雪は降らないけど、ゆきちゃん。このネーミング、なんだか意味深。
滝軍曹はどこ出身で、生まれはいつごろなのかしら?本土から満蒙移住組?二幕早々で壊れかけてたけど、決定的に壊れたのは「あの」一瞬だったんだろうな。全く以て弁護する気は起きないけれど。
手術って考えてみたら杉原さんの独壇場よね、でもわざわざ足かかげないで(泣)そして正気に戻ったらあんな女たらしボイスのイケメンで。あんなのに感謝されたらキミちゃんもギリギリひとたまりもないじゃない!撤退ギリギリまで探し回っちゃうじゃない!(待て
CDで分からなかった部分。病院の場面の細かい動きとか。『米軍なんて怖くない』落ちが鉄の暴風で、「コウフクシテクダサイ」の返答が「生きて虜囚の~」で集団死。手榴弾使ってるのが現代の練炭集団自殺に近いものを感じたけど、実際ある意味そういうものなのかもしれない。
サチさんの最期、子供に手が届かないのが哀しい。スパイだと言われる直前に泣き止みかけてたのがまた切ない。
一幕で放った言葉の因果が巡ってきた先生たちの悔恨を浄化するような婦長の『夢を見ましょう』ここで二人目の夢が先生、と言うのがものすごい救いだっていうのが実際の舞台で伝わって、涙腺にきた。
キミの『生きている』にでてきた「すべての望みは~」に対する言葉が婦長の「希望は消えない」これがフィナーレに繋がるのか。そしてフィナーレは題通り学徒たちだけで歌い上げられる。
とりあえずここまでつらつらと書き連ねてきたけど、とても重厚で濃密な観劇体験だった。願わくば脚本だけでも売っていただきたいです。学徒たちの動きをもっと捕捉したい。
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