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東京都庭園美術館にて、竹久夢二生誕140年記念のYUMEJI展を観る。もはや守られない屈強な現代女性ですら、なぜ夢二のくねっとした可愛さに惹かれるのか。


来週、東京自習会の美術鑑賞サークルで、弥生美術館のマツオヒロミ展を

観に行く予定なのですが、弥生美術館は竹久夢二美術館と併設で、
ちょうど、面白そうな企画展をやっています。

今、都内複数の美術館で「動物」テーマの日本画を中心とした美術展が開催されていますね。
ということで、
ステーションギャラリーの「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクション」も行く予定なのですが、
美術展は関連性のあるものを続けて観ると、各美術館の司書さんたちの観点が違ったり、同じテーマで違う美術展を観ると楽しいのでおすすめです。

そんなわけで、数年ぶりに(遠いので)白金台という非常に瀟洒な場所にある、瀟洒を極めた建物である東京都庭園美術館のYUMEJI展へ。
建物そのものが芸術品、美術品である朝香宮家の自邸で、「暮らしの中に美しいものを」にとことんこだわった夢二の作品を、いわゆる「夢二式」の
くねっとした儚げな美女の絵だけではなく、包括的に堪能できるという贅沢。

時代が着物から洋装へ。建物が洋館へ。窓、カーテン、テーブルのある風景へ変わっていく。女性の髪形も日本髪から、大人だけど前髪のあるスタイルへ、そしてパーマネントを当てたモダンなショートへ、描かれるものが変わっていく。晩年、海外で彼が観た西洋の女たちには儚さはない。

絹の帯に油彩で描かれた可愛らしいイチゴ。夢二の、「画家」だけでなく
「グラフィックデザイナー」の側面がよくわかる展示が多かったです。

夢二の美人画を見ていると、西洋風にくるりんと上がった睫毛より
少しうつむいた女性の横顔の、下向きの睫毛って恐ろしく色っぽいものだなと思いました。のっぺりした面長の顔に長い下向きマツゲ。
秘めた情念を感じますね。

雑誌の挿絵。自ら開店した「カワイイイラストつきのグッズ」を揃えた店。
高級な絵画を裕福なパトロンが買って、上流社会の社交の場で鑑賞される形だけでなく、
庶民が買える便箋、千代紙、絵葉書、絵本、雑誌、小物を複製された安価な価格で提供するビジネスの草分けなわけですね。

浮世絵の頃から日本にそういう文化は勿論すでにあったわけですが、
浮世絵はどっちかといえば「ブロマイド」「ポスター」的な役割であり
写真のかわりに近い。「カッコイイ」文化。

夢二は模様、ワンポイント、総柄含め、とことん、女子の「カワイイ!」を刺激したわけですね。現代の我々も、魅了され続けている。

男性から見た理想の女性像が中心であるにも関わらず
「儚げ」「風が吹いたら折れそうな弱そうな細さ」「一途に男を想う」「伏し目がち」特徴的なやや人間離れしたデザインのS字カーブの「くねくね」

女らしさ、が大嫌いなイマドキ女子たちが多くなった現代で、なぜ夢二がウケ続けるのか。

①「可愛い」の教祖が産みだす破壊力には勝てない

②かつての男性側の目線で、美女の絵を「可愛い」と愛でており、当時の女性の「あんな華奢な色っぽい美人さんになりたい」という「憧れ」とは違う

③正直、現代女性は疲れている。声の大きい強靭な心身をもつ女性たちが勝ち取ってきた男女平等についていけない弱い女性たちはそこそこおり
弱く綺麗なカゲロウのような女性であれば守ってもらえるのに・・・
綺麗に従順にしてれば嫁の貰い手があって一生安泰、いいなァ・・・
(最近のウェブ漫画の広告の、異常なシンデレラ展開の多さにもこれは思う)
④可愛い綺麗なものが大好きな私、カワイイ

このあたりだと推測しますが・・・・(毒舌ですみません)

会場は「ステキねぇ・・・・」「ほらコレ、カワイイ~」「ね~」
「フインキ」を楽しむ女性客が多い印象でした。

当時のリアルタイムの購買層もそうだったんじゃないでしょうか。
夢二のイラスト(あえてイラスト)の「オシャレさ」を
生活の中にとりいれることで自分が御洒落になった気分になる。

ずばり「アガる~」

大事なことです。つまらない日々の暮らしをアゲてくれる「可愛い」は
昔も今も必要です。

夢二晩年になると
常に新しいことを追求し、「常にプロセスの中にいたい」と進み続けた開拓者の疲れも見えてきますし
洋装になり、酒場でスカートから突き出た脚を組みニヤニヤする逞しい女性の姿も描かれますし、大地を踏みしめて赤子に乳をやる女であったり、
「現実の女」とすったもんだあった後の夢二も変化も面白かったです。

集大成とされる立田姫のふりむき美人像はフクロウもびっくりの首の回転角度ですが、西洋も観た、イマドキのモダンなガールも観た、最終的に
伝説、神話に題材を求めた夢二のキモチが、ちょびっと切ない。


今回、最近発見されたアマリリスを含め、「夢二の油絵」にかなりスポットが当たっていて、とてもよかったです。生涯を通じた数は少ないですし、
試行錯誤がにじみ出る、絵は師匠がおらず独学であった彼の悩みと
それを打ち消そうとするような強い筆致がどの油絵もとてもよかった。

早い時期から、日本画で夢二は裸婦は描いていましたが
生活の中で、湯あみ、整髪、授乳で晒した上半身であり
西洋で油絵で描いた、少し眉根を寄せてけだるそうに
描くなら描きなよ。。。といった表情の 全裸だが下半身が不自然なことで
不思議とセクシャルなムードがない静物画のような裸婦像、妙に良かったです。

お土産コーナーで、この裸婦のクリアファイルを手にとった女性が
「使いづらっwww」と連れに笑って買うのを辞めてました(笑)
これ買って他人にあげるとなかなかのハラスメントになってしまう現代でございます。

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