ワクチンを武器に置き換えると見えてくること

ワクチンを武器に置き換えてくると見えてくることがある。
・武器が平和をもたらすので武器の性能を論じる派
・武器が平和をもたらすとは限らないので武器は不要と論じる派
彼らはお互いレイヤの違う議論を持ち掛けているのだが、どちらもレイヤの違いを確認して落としどころを見つけてから議論をしようとしてないように見える。その準備がないままにお互いが「エビデンスがある」というので、相手のエビデンスが持論を覆したり影響を与えることはなく、お互いが「あなたのエビデンスは不十分」という不毛な議論になっている。

厄介なのは、お互いが自分はインテリだと自認していること。インテリなら議論のレイヤと落としどころを決められるはずだが、決められないのでお互いに哲学というかメタ的な議論の能力が欠けている、ということか。エビデンスより先にすべき議論があるが、エビデンスを先に持ってくるところ、ディベートに勝つことを重視しているようにも見える。

各々の立場をこれまた冒頭の比喩になぞらえて比較しておくと、前者は武器を使用することが前提として存在している組織、つまり軍の代表者であり、後者は一般庶民よりかは攻撃されたり濃厚接触者になるといった現実から逃げやすい立ち位置の人、つまり資産家の代表である。

前者は、家族を守りたい、会社やコミュニティを守りたい、国を守りたい。敵を早急に一掃して自由や自由な経済を謳歌したい、と考えている。後者は、政府・マスコミが敵を過大評価しているせいで経済が停滞してしまっていて、人民の特に若者の人生が狂わされている、若者に武器を持たせて敵を退散させられるというのは幻想であり、権力が戦争を続けたければいつまでも続く。これを是正して自由や自由な経済を謳歌させたい、と考えている。
実は、お互いの目指すところはそこそこ近い。

また、資本家の中には前者寄りの者もいる。人民が最前線でいかに苛烈な目に遭っているかに思いを馳せられる人たちである。一方で軍人の中にも後者よりの人もいる。そもそも敵を作り出して戦争を扇動している一派がいることを見抜いてそのせいで人民が苛烈な目に遭っていることに思いを馳せられる人たちである。
実は、お互いの人民に対する思いやりもそこそこ近い。

では何が違うのか、はここまでで見えてきたと思う。
・前者は敵(ウイルス)が憎くて、武器(ワクチン)でやっつけたい
・後者は政府・マスコミ・陰謀を企てた奴など、大いなる力で人民を操るやつらが憎くて、こいつらを転覆させたい
構造は先の大戦などと同じと思われる。昔から前者が大多数で、後者が少数派である。

実際のところは、ウイルスも風邪・インフルより統計的には問題ないかもしれないし、変異株に対してワクチンは効いていないかもしれない。政府も間違うこともあるし、マスコミは勉強・調査能力がなくてマーケティングに従って報道するし、陰謀も全然あり得るけど戦争が起きてから指摘してどうするの?分かってたなら資本家として、多少世に影響を与えられる立場の人間として、止める動きしたの?みんな薄々気づいてても愛する人を守りたくて武器を手に取ってるよ。
というところは、まず、双方に対して指摘しておきたい。人民がマスコミに毒されきっている、というのも幻想だ。

また、お互い自分の不都合と向き合えていないところも過去と同じ構造の欠陥として指摘しておきたい。
・武器が効かなくなっている可能性があるのに効いていると言い張る人
・武器が暴発している可能性があるのに暴発しているかどうかは確かではないと言い張る人
・敵から被弾したのに大したことなかったと言い張る人
・全世界的に被害を受けているのに近所に空襲がないのを論拠に大したことないと言い張る人
御多分に漏れず、幅広く情報収集しているので判断能力がフラットだと自認している人たちに多いように思える。こういった人たちの見識は狭い。

さて、この二者が議論するのは、(現在の)保守とリベラルがかみ合わない議論をしている構造に似ていることに気づくだろう(保守が憎いものは外的と外乱誘致の勢力で、リベラルが憎いものは主に国内の権力)。では、どうすればいいのだろうか。

結果が出るかどうかは保証できないが、お互い自他の「憎い部分」について、「できているところ」と「できていないところ」を分析することである。
PDCAのCheckとその後のAction。場合によってはPlanまで進むかもしれない。

ソリューションエンジニアならしょっちゅうやっていることだ。なぜならソリューションエンジニアは
・領域を超えて意見調整して「解」を導き出す
のが仕事だからだ。哲学者もそれに近い。哲学者は
・世にないものさしを当てがって領域を無効にしてから「見解」を示す
といったところか。

一方、本件の当事者たちは職業柄上記をやっていないと思われる。おそらく
・真理を見出して敵を撃滅しつつその成果をもって最上位に位置する
・真理を見出して敵対勢力に見せつけて敵対勢力に是正を迫る
のが仕事だからだ。真理を見出してしまったらマウントを取らざるを得ない習性がある。

ソリューションエンジニア気質の人がテレビで討論することはない。問題解決とは、本当に地味で泥臭くて、メタ指向で、高度にテクニカルで、周りから何をしているかわからないように進行していくからだ。

自分はコロナウイルスに関する議論を見る場合は、論者にこのようなものさしを当てがって見ることにしている。

一番つらいのは身近でどちらの考えか聞かれる時だが、スタンスとしては

陰謀の線もあるだろうし、世界中の政府・マスコミ扇動もあるだろうが、現時点では資本家でもないので逃げおおせられないし、家族も会社も国も守るのはやぶさかではないのでワクチン打ちながらマスクしながら、疑義のかからない範囲で家から出て好きなことをやる、いい塩梅で活動する。戦争メタファーで考えると、平和活動をしても敵は撤退しないし、元々保守なのでこのようになるのが自然。

という感じですかね。だから世界中の人は潜在的には保守なんじゃないかと思う。

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