【背が低いよね】はセーフワードであるかのように悪意満々で振りかざされている
私も含め、家族全員が平均身長より小さめの「ちびっこ家族」です。当然、全員が高身長に憧れてきた。50代になった今の私にとっては身長よりも他にもっと気にしなければならない数値があるが、学生時代にスラリとした背の高さがあればどれだけ自分に自信が持てただろうかと思う。
今のご時世、相手の見た目にコメントする時は褒める意味で言わんとしていても「アウトになるのでは?」と言葉に出す前に一呼吸して考えなければならない。
しかし、ボディシェイミングとハラスメントの厳しい取り締まり網をすり抜け、「背が低い」のワードはグレーに塗られて令和の空気間を浮遊していないだろうか。
ある友人は事あるごとに「背が低い」を取り出してきて私に突きつける。
「息子さん背低いな、何センチくらい?」
「まきちゃんの旦那は背が低いから家の中でかさばらんやろ。うちの旦那は背が高いからいるだけで邪魔やねん」
「うちの旦那は背が高いから、まきちゃんとこみたいな天井低い車は乗られへん」
という『私の旦那は背が高いマウント』は、
なんでもない風な顔をして、しれっと行われる。
まるで
「背が低い」は気にしてないでしょう?
それほどブラックじゃないでしょう?
だって個性じゃん?
だから言っても全然OKやん?
ね?低身長家族さん!
と言わんばかりに。悪意プンプンのワードで頭をポンポン叩かれて、私はさらに小さくなるのだ。
これを「禿げてる」や「太ってる」に置き換えて、私が友人の旦那のことを話題にしたらどうだろう?
いや、絶対に言えない悪口だ。少なくとも面と向かっては言えない最低なディスりだ。たとえ私の旦那がスレンダーで髪の毛がフサフサであっても、私はそれでマウントを取るような小さい人間ではない。
このように、デブ・ハゲ・ブスは厳しくフタをされているのに「チビ」はまだ放たれたままだ。
しかし本当のところ、ちょっと別の意味での問題があると感じる。
「背が低い」をNGワードに認定されると
「本人は恥ずかしく情けないことだからそこに触れてはいけないんだよ」と不憫に思われているような気がして、強がって悪意の刃を真正面から受け続けているのではないか?
「背が低いことの、それが何か?」
みたいな顔をして。
これがチビなりの精一杯の背伸びだ。