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雪男

紙芝居の時間だよ!全員集合!

雪女の話はといえばラフカディオハーンこと小泉八雲も記せるところで、まぁ詳細の話となると知らない人もいるかもしれないが、「雪女」と聞くとなんぞかぞある一定のイメージを想起しないひとはいない。

雪女は夏の暑さも凍るような恐怖の話なのだけど今日は雪男の話をしようと思う。

子狐の近田は、冬の山道を一人、いや一匹で歩いていた。もう日暮れも近く曇った空が徐々にその暗さを増していく時間だった。

「お~さむい、さむい。はよう帰って今日仕留めた鳥でやきとりでも食べたいな。やき、やきとりとり、醤油の香りが立ち上る~立ち上る~。やきやきとりとり、、、はっう」

目前には巨大な猿とおぼわしき生物がこちらを見下ろしていました。

「うほうほうほ、私と一つゲームをしようではないか」

「すみませんが、帰り道をいそぎますので」

「うほうほ?ゲームをしない?であればその鳥はおいて行ってもらおう!」

「何故、今夜の晩御飯をみすみす差し上げねばならぬのですか?」

「いま、君の置かれた状況を客観的にみると、うほうほ。腕力の上では到底私にかなわない。君は食料を持ち、私は腹が減っている。となると腕ずくで君から鳥を取り上げる、、ウホっおもわずおもしろいことを言ってしまったが、、ことはまったく赤子の手をひねるがごとく容易なのだよ」

「はい」

「してみるに、ゲームへの誘いのその真意はどうかということだが、雪男といえど暴力的、動物的な方法で物を奪取することは好まない。それゆえゲームで勝てばいただく、負ければ見逃すという文化的な解決案を先ほど提示させていただいた。」

「ご配慮よく得心いたしました。いたしましたが、ゲームにおいて賭けのスリルと言うものをあなたは放棄していらっしゃる。負けても見逃すだけでは、手に汗握る感覚、いわゆる競馬場で第四コーナー回って200mの標識あたりで感ずる高揚感、興奮を味わうことはできますまい。」

「そなたの言うこともわかる気がする。」

「私が勝ちましたら、その御身をくるんでいらっしゃる毛皮をいただきとうございます。」

「よろしい。これがなくなると私も非常に困る。と言うか、明日の朝凍死する可能性すらある。う~むドキドキしてきた。これが高揚感、興奮、ときめきなのだな。」

「左様でございます。して、ご提案されるゲームとはどのようなものですか?」

「非常に明確でフェアなものだ。すなわちこのコインを振って表が出れば、そなたの勝ち。裏が出れば私の勝ちとなる」

「ではいざ」

「ふるぞ、、、うほっ!、、、、うほ~~」

「表ですね。」

「うほ~表だ、、、」

「、、、」

「約束は約束だ。つらいが仕方がない。ギャンブルの興奮を味わえたことだ、どうぞこの毛皮を差し上げます。」

「ギャンブルは非情なものです。この毛皮をやっぱり、いらないよ!死んじゃうよ!などと言ってあなたに返すこともやはり、許されない。それは勝負を愚弄することとなるので。」

「では、もう一番やりませんか?」

「神よ、なぜ世は賭け事の悪徳がはびこるのか。神よ、パチンコはなぜ公営ギャンブルでないのに取り締まりの対象とならないのか。」

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