第3-1話 ボツになった前半原稿
そろそろ暑くなってくる6月初めの真夜中、ネオンや街灯が光るきらびやかな大通りにはたくさんの大人たちが歩いている。ここは子ども立入禁止の夜の通り、大人の世界である。この光は日が昇るまで消えることはないだろう。つまり、この大通りはいつも明るい。俺もブログが炎上して意気消沈してしまった時はよくこういうところに朝までいて元気をもらったなぁ。
「おにいさーん、ちょっと寄ってかない?いい娘がたくさんいるよー!」
「こっちはねぇ、業界初、まさかのモン娘コスプレソープだよー!」
「寄っといで寄っといでー!ここには安くて美味しいお酒も可愛い女の子もたっくさんいるよー!」
この通りで主に叫んでいるのは客引きの男性だ。店からあまり離れず気になって寄ってきた人を確実に仕留める客引きもいれば、来た人たちになりふり構わず話しかけて数撃ちゃ当たる作戦を実行している人もいる。
前者はどっちかといえばニッチな需要を満たす店だし、後者は広い客層に対応した店だ。ってゆーか、「モン娘コスプレソープ」って何だ……?いつか行ってみようか。
おっと紹介が遅れたな、俺の名は天沢《あまさわ》光《ひかる》、大人のお店を紹介するブロガーだ。「ヒカルのAdult日記」の管理人といえば伝わるか?あの月間100万PVは固いって言われてるあのブログだよ。日本全国を津々浦々と巡って大人のお店を紹介するブログだ。とにかく何にでも「褒める」ということを念頭に置いて書いている。これは俺が何年もこういうブログを書いてきて至った結論だ。
そんな俺は、とある案件のためにここへ来た。場所はこの大通りのど真ん中、そしてこのビルの地下にある、いわゆるキャバクラという場所だ。このキャバクラのあるビルは、なんとそこ以外大人気の店しかなく、それらの店の影に隠れて知名度がないし人もいない、と言う訳だ。
正直なんでそこに店を構えたか問いただしたいところだが、俺はそういうのを聞きに来たわけではない。お金をもらうからにはきちんと書いてその店の知名度を上げなければ。
「そこのダンディーなお兄さん、この店にはあなたにピッタリな良い女性がいますよ!さぁさぁ入って」
「いや、俺には先客がいるんだ。また明日以降な」
「ちぇー」
俺は客引きを物ともせず進んでいく。いやぁー、モテるって辛いねぇ。まぁこの見た目も、アドバイザーを雇って俺自身の顔つきにあった感じにしたわけだが。「あなたの顔つきなら短く髭を生やしてワイルドにしたほうが良いですよ」だなんて言われちまったぜ。
さて、ここが俺が今回レビューする店、その名も「ナイトメア・ムーン」だ。さーて、ここはどんな店なのかな
ビュン ビュン
ビルに入っていこうとした俺の目の前で、2回風が吹いていく。何か目の前にF1の車が通ったときのような……目の前に白い何かと緑色の何かが通ったような……そんな感じがし
ビュン ビュン
そんなことを思っているとまたもや2回風が吹いた。今度は紺色の何かと黄色の何かが通っていく。疲れてるのか……?と一瞬思ったがさっき栄養ドリンクを飲んだこともあり体はすこぶる元気だ。うーん、今日は帰ったら早く寝よう。
そう思った時だった。
バビュウ
俺の胸から何か赤いものが吹き出した。これは……血か?一瞬で大量の血を失った俺は後ろに倒れ
ビュン
まただ、俺の目の前にまたもや風が吹いていった。まるで俺の胸から吹き出した血を絡め取るように。今度はまた白か?分からん、どんな天丼だ。
そう思いながら俺はコンクリートの地面に尻餅をついた。
「いってぇ!」
クッションもなしにお尻を固いものに打ち付けてしまったのでお尻が非常に痛む。あっそうだ出血は、と思い胸を触ると、そこには傷口はなく、ただ服にパックリと開いた穴が残されていた。
貧血にもなっていないようだし、早くレビューを始めちまうか、と俺はビルに入っていった。
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