環境破壊-魔の1975年-
「人間の数が減れば環境は守られる」
直感的になんとなく納得出来ますが、素直に受け入れがたい言葉でした。本当にそうなのか。環境破壊の原因は全て人間のせいなのか。そこで、日本を中心に原因と思われる観点から調べることにしました。
絶滅動物種を出発点とします。1年間における絶滅動物種の推移ですが、恐竜時代「0.001種」1600年~1900年「0.25種」1900年~1975年「1種」1975年「1000種」1975年~2000年「40000種」となっています。数値でも分かるように1975年から急激に絶滅動物種が増加しています。何かしらの要因が隠れていることは間違いなさそうです。
まず、日本の1975年以前の1955年~1973年の期間を見てみます。日本はこの時期、高度経済成長期でした。1950年代後半に三種の神器が現れ、3Cが1960年代半ばに続きます。4大公害の裁判提訴が1960年代に集中しています。(発生はこれよりも以前です。)1975年以前に環境を蝕み、時(1975年)が来て環境への影響を爆発させているようです。
環境破壊と公害は関連していますので、日本の工場立地件数も見てみます。1974年には約4000件で2019年には約1200件となっており、1975年頃は工場数が極端に多いことが見て取れます。
工場に関連して世界の温室効果ガスの排出量を絡めていきます。1900年には「約4ギガトン/年」、1950年には「約6ギガトン/年」、1975年には「約25ギガトン/年」、2000年には「約30ギガトン/年」となっており、1975年の急増が印象的です。個別に日本の二酸化炭素排出量を見てみます。データは2019年のものですが、世界で第5位に位置しその排出量は11億3,240万トンとなっています。
世界の平均気温に関してのデータです。
1950年「-0.5℃」1960年「-0.4℃」1970年「-0.4℃」1980年「-0.1℃」1990年「0.1℃」2000年「0℃」2010年「0.3℃」2020年「0.6℃」
カッコ内の数値は基準値の偏差(1981年~2010年の30年間の平均値が基準値です)を示しています。基準値から偏差マイナスならば1981年~2010年の平均値よりも低いことを示します。偏差プラスならば1981年~2010年の平均値よりも高いことを示します。つまりプラスならば平均気温が高くなっているということです。1970年代から1980年代に向かうにつれて数値が上昇しています。ここでも1975年に関係している年代に特徴が見られます。1970年の「−0.4℃」から1980年の「−0.1℃」の上がり具合が0.3℃ですので、数値の上昇値が高いです。1890年からのデータは下に載せてあります。
●世界絶滅動物種、日本の工場数、世界温室効果ガス量、日本の二酸化炭素排出量、世界平均気温などを見てきました。日本の高度経済成長期を軸に要因を絡めていきましたが、1975年という年号には驚かされます。また、経済が発達すると環境破壊が進むと言われてもこれらのデータを見ると反論が難しいです。反論するとなれば因果関係の希薄、否定を証明する材料を集めなければなりません。
動物の絶滅原因には森林破壊が深く関係しています。チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは森林破壊によって現在絶滅危惧種となっています。
では次にその世界森林面積の観点から見てみます。農耕以前「60~70億ha」1990年「4.128.269(千ha)」2000年「4.055.602(千ha)」2010年「4.015.673(千ha)」と着実に世界の森林面積が減少しています。森に棲むチンパンジーの個体数は100年前は約200万頭でしたが、現在は約20万頭となっています。また、同様にオランウータンも100年ほど前と比べますと約80%の減少となっています。
タイでは1946年頃には国土の約60%が森林に覆われていて、マングローブ林の割合も多かったのですが、1958年に約50%、1975年に「原木輸出禁止令」が出されましたが、1985年には森林率が30%以下になってしまいました。このことからも1975年はキーポイントとなる年号のようです。商業用での森林伐採が多かったのですが、森林減少の原因の内の1つには、日本にエビを輸出するためにマングローブ林を養殖池に転換するというものもありました。
インドネシアでは森林はかつて1億haあったのにも関わらず、1970年代から輸出を目的とした木材生産が活発となり森林伐採が進んだ結果、毎年約100万ha以上の森林が消滅していました。そしてインドネシアはブラジルに次ぐ世界2位の森林減少面積が多い国となっています。(2005年~2010年の森林減少は年間約70haと改善が見られます。)現在の森林伐採の主な原因は違法伐採によるものです。森林伐採のうちの違法伐採率は約60%となっています。
森林破壊の原因は他にもありますが木材販売のための伐採に着目したいと思います。日本は世界最大の木材輸入国です。国土の約66%が森林にも関わらずこういった状況になっているのは、1960年に木材の輸入自由化を実施して、この結果安価な海外の木材に勝てなくなってしまったからです。輸入先としては、アメリカ、カナダ、マレーシア、インドネシアなどがあります。
日本の住宅事情です。1960年から1973年の木造住宅の新設着工数は65万戸から112万戸までに増加しました。そして、木材総需要量は1973年には1億1758万㎡でこれは1960年の約2.1倍にあたります。これは高度経済成長期に伴う国民の所得水準が上がったことが要因です。
●経済発展と環境問題は表裏一体で切っても切れない関係性を維持していると言えます。日本では高度経済成長期から始まり、魔の1975年を経過しそこから環境を徐々に蝕んでいます。今までは何となく工業化の進みにより環境が破壊されていると認識していましたが、確かに数字を追って見てみると自然破壊が一目瞭然でした。環境を破壊する要因数字は上昇し、環境のHPの構成要素である森林面積、野生動物数などの数値は減少しています。人間が環境破壊の要因、人間はそこまで関与していないという対立構造。両者の立場に立ったときにその立場の視点で物事が考えられるように今後も調べていきたいと思います。
●[自分で反論]恐竜が絶滅したのは隕石の衝突、哺乳類の台頭などが挙げられます。恐竜の絶滅には人間の工業化は全く関係ありません。つまり、環境破壊が進んでいるデータとして人間の工業化による原因で絶滅動物種の増加を持ち出す論調は説得力を欠いてしまいます。以下の流れです。人間の工業化の発展→それは環境破壊の原因→環境破壊が進んでいる根拠の数値として野生動物数の減少→よって環境破壊が進んでいる→しかし、恐竜は人間の工業化ではなく自然の摂理で絶滅した→つまり、人間の環境破壊で絶滅していないのだから、今日の野生動物の減少も人間の工業化が原因ではなく、ただ単に自然の摂理のためであると言える。
さて、この思考が正しいとなると今まで私が論じてきた内容は一気に転覆します。この視点への反論はどうすれば良いのでしょうか。
「参考」
・絶滅動物種推移・・・環境省ホームページ
・平均気温の推移・・・国土交通省気象庁ホームペ-ジ
基準値の偏差(1981年~2010年の30年平均値)
1890年「-0.6℃」1900年「-0.5℃」
1910年「-0.8℃」1920年「-0.5℃」
1930年「-0.4℃」1940年「-0.4℃」
1950年「-0.5℃」1960年「-0.4℃」
1970年「-0.4℃」1980年「-0.1℃」
1990年「0.1℃」2000年「0℃」
2010年「0.3℃」2020年「0.6℃」
・森林面積の推移・・・世界森林資源評価(FRA)2015– 世界の森林はどのように変化しているか –(第2版)
農耕以前60~70億ha
1990年「4.128.269(千ha)」
2000年「4.055.602(千ha)」
2010年「4.015.673(千ha)」
・温室効果ガス推移・・・出典)温室効果ガスインベントリオフィス 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
1900年「約4ギガトン/年」4×10の12乗kg
1950年「約6ギガトン/年」
1975年「約25ギガトン/年」
2000年「約30ギガトン/年」
・二酸化炭素排出量国別…外務省ホームページ
排出量(トン)(2019)
1 中華人民共和国(中国) 93億200万
2 アメリカ合衆国(米国) 47億6,130万
3 インド 21億6,160万
4 ロシア 15億3,690万
5 日本 11億3,240万
6 ドイツ 7億1,880万
7 大韓民国(韓国) 6億
8 イラン 5億6,710万
9 カナダ 5億4,780万
10 サウジアラビア 5億3,220万