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チンパン回覧実記(出発当日)④
[出発当日]
「チンパン、まったぁ~。」
友人が運転する車はまるで約束の地へと誘う箱船のようです。化石燃料と排気ガスが為替取引のように作用し、行動範囲を限りなく広げてくれるこの機動車を私は心底待ち望んでおりました。
「いえいえ、問題ありません。運転代りますよ。」
友人は助手席に移り、私がコックピットに座りました。これからやや長い旅路となりますので高速道路のサービスエリアなどで休憩を挟みながら目的地へと向かいたいと思います。
「チンパンってアフリカに住んでいた頃、ジャガーに乗ってたんでしょ。」友人は何気なく会話を開始させました。
「左様です。四輪駆動ならぬ、四脚駆動でしたので森なんかはスイスイ進めることが出来ました。」
「どうやって購入したの。いや、手なずけたの。」ヒトにとってみれば、肉食獣を乗り回しているチンパンジーが不思議に見えるのでしょう。
「簡単ですよ。交渉です。」
「えっ。はっ…。えぇー。」
私の答えは予想外だったらしく友人は言葉を詰まらせております。
「交渉は非常に簡潔でした。餌の提供です。私がアカコロブスなどの食料となる動物を確保しましたらそれを分け与えていただけです。」友人は驚いておりましたが、納得もしているようでした。しかし友人はこうも続けたのです。
バナナを購入したいと思います。メロンも食べてみたいです。