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ナイジェリアチンパン、鶴の恩返し(外伝)

ある経済圏の郊外の山に貧しい男性が住んでいました。自分の畑に軽トラックで向かう途中、チンパンジーが倒れているのに気が付きました。「野生のチンパンジー…。日本にいたっけ」チンパンジーに駆け寄り様子を見ました。どうやらお腹が空いて倒れているようです。その男性は自分の持っていたお弁当とコーラをそのチンパンジーに与えました。(もぐもぐ、ゴクゴク)チンパンジーは元気になって、会釈をして、そのまま森へと飛んで行きました。

その日の夜。男性宅の呼び鈴が鳴りました。「こんな時間に誰だろう」ドアの覗き穴から外を伺いました。そこには女性が立っていました。「すみません。Wi-Fiをお借りできますか」女性ということもあり警戒心が緩み、自宅に招き入れました。そして、そのまま談笑して朝がやってきました。男性は何か訳ありな雰囲気を感じ取りましたのでその女性に「しばらくうちに居るといいよ」と言葉をかけました。女性は頰を赤らめ優しくまばたきをして答えました。

今年も残りわずかです。男性にとってお正月を味わう経済的余力はありません。またお正月は牛丼で年越しだなと考えていました。そんな男性を見ていた女性は何とかしてあげたいと思いました。「こちらのお部屋を日中の時間帯にお借りします」男性は昼間は畑仕事をしていますので了承しました。

いつものように男性は畑仕事に行き、女性は留守を預かりました。昼ごはんにしようとしたところお弁当とコーラを自宅に忘れてしまっていることに気がつきました。軽トラックに乗り自宅に戻ります。「私が自宅にいない間、女性は何をしているんだろう」と考えながら車を走らせました。

「ただいま。お弁当とコーラを忘れちゃって」何も返事がありません。女性はどこに行ってしまったのでしょう。一室でなにやら物音が聞こえてきます。(がりがり、しゃっしゃ)女性が何かしているのだろうかと思い、ゆっくりと襖を開けてみました。そこにはチンパンジーがいて、そして仏像を作っているようです。しかも大きい。「何やってるんだ」と男性は襖を勢いよく開けました。チンパンジーは驚いて硬直しています。

「どこから入ってきた。女性はどこに行ったんだ」

チンパンジーは重い口を開きました。「見つかってしまいましたね。私がヒトの女性に化けておりました。改めましてナイジェリアチンパンです」

「こんな大きな不空羂索観音像なんか作って。部屋が狭くなっちゃったじゃないか。ん、まさか…」男性はクローゼットの中も覗いてみました。「金剛力士像…。後は組み合わせるだけの段階になっている。やるな、寄木造か」

ナイジェリアチンパンはこう説明します。

「貴方様に助けて頂いた日から貴方様のお側で仕えたいと思っておりました。しかし、私はご覧の通りチンパンジーです。しかも雄です。このままの姿では貴方様は警戒をし、きっと私をお側に置いてはくださらないだろうと思いました。そこで女性に化けることにより接近を図った次第です」

男性はうむうむと話を聞いてなんと素晴らしいチンパンジーなんだろうと思い涙を流していました。

「わかりました。一緒に生計を立てて行きましょう。あなたの技術を持ってすればきっと今年のお正月はお雑煮を食べられることでしょう。ところで誰からその彫刻技術を学んだのですか」

ナイジェリアチンパンは答えます。

「慶派のヒガシチンパンジーです」



めでたしめでたし








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ナイジェリアチンパン
バナナを購入したいと思います。メロンも食べてみたいです。