ぼくの好きなもの(パニック・オカルト映画編①)
こんにちは。
「ぼくの好きなもの」と題して、ぼくの好きな映画・音楽・アニメなどを、感想とともに紹介していくコーナー。
今回はズバリ!
「パニック・オカルト映画」編①
です。
おもしろいものが多く、1回では紹介しきれなさそうなので、今回は「①」にしました。
さて、「パニック映画」とはなにか?
大災害や大事故など、突然発生した異常事態の中で、主人公をはじめとした人々がさまざまな困難に立ち向かい、生き残るまでのドラマを描く映画のジャンル。
英語では「disaster film」と言います。
日本でも最近は「ディザスター映画」という表現がよく使われるようになりましたね。
そして「オカルト映画」。
いまでは「ホラー映画」と呼ばれることが多いでしょう。
ここでは1970年代を中心に、超自然・神秘・怪奇現象を扱った映画のことを指します。
この当時、UFO・悪魔・心霊・超能力、雪男、ネッシー、ツチノコ・・・など、それが実在するのかわからないものが大流行し、いわゆる「オカルトブーム」を巻き起こしていました。
そのため、このようなものを扱った映画がブームを呼び、多く作られました。
ということで、パニック映画、オカルト映画とも、その最初のブームを迎えた1970年代に傑作・名作が多くあります。
この時期まだ少年だったぼくは、そのいくつかに触れ洋画のとりこになってしまいました。
そんなわけで、この時期のこうした映画はぼくにとって思い出深いのです。
今回は、それらの映画のうち特にぼくが好きなものの一部をこれから紹介していきます。
ちなみに、今回この記事を書くにあたって、キャストやスタッフなどの事実関係はあらためて調べましたが、映画本編を観直すことはしていません。
自分の記憶をもとに書いていますので、誤りがあるかもしれません。
その際は、ご指摘いただけますと幸いです。
また、内容について部分的にネタバレしています。(結末は極力書かないように心がけましたが・・・)
ですので、観る前に内容を知りたくないというかた、ご注意ください。
「タワーリング・インフェルノ」(The Towering Inferno, 1974)
これは、まだ小学生だった当時、親に連れられて映画館で観ました。
もう、すごい映画体験でした!
これはパニック映画を代表する一本であり、その最高傑作とも言っていいでしょう。
超高層ビルが大火災に見舞われる、というストーリー。
当時非常に新鮮でした。
日本でも、超高層ビルの先駆けといえる新宿の京王プラザホテルが全館オープンしたのが1971年。西新宿の超高層ビル群の最初が、この京王プラザでした。
その後ご存じのように、いくつもの超高層ビルが建設されていくのですが、高度経済成長期、こうした状況の真っ只中であった1974年にこの映画が公開されたこともあり、日本人も
「これはひとごとではない!」
という目を持って、この映画を観ていたように当時感じました。
当然、映画は日本でも大ヒット。
地上550メートル、138階建てという、世界一の高さを誇る超高層ビルがサンフランシスコに建てられ、オープニングセレモニーを迎えた夕方。
ビル内の一室の火災から、どんどんフロア全体に、そしてほかの階に延焼していく。
オープンを急ぎコストを削減するため、設計者が指定した品質より劣る部品や部材を使って建設されたビルは、あちこちでその欠陥を露呈する。
火災報知器が正常に機能しない、
スプリンクラーが故障により作動しない、
火災によりエレベーターが使用不能になる、
消防車のはしごも当然届かない・・・。
最悪の事態が重なります。
困難を極める消火活動。
最上階に取り残された人々の救助も進まない中、延焼は刻一刻と迫る。
ビルの火を消すための唯一の手段として、消防署の上官たちが出した方法とは・・・。
運よく助かる人、死んでいく人。
どの人も、どんな性格の人か、どんな背景がある人か、どんな人生を歩んできた人か・・・。
それらを見せに見せつけて、それでも死ぬ人はあっけなく死んでいく。
こういうのがパニック映画お決まりのパターンです。
だから観る側も、死ぬ人には深い同情と悲しみを、助かった人には自分のことのように喜びを感じてしまうのです。
この映画が作られた時代、CGは存在しません。
なので、火災のシーンはすべて実際にセットや建物に火をつけて撮影しています。
爆発のシーンも、本当に火薬を使って爆破しています。
つまり出演俳優やスタント俳優たちは、すべて現実に火事や爆発を目の前にし体験しながら演技しているわけで、そりゃ緊張感・迫力があるわけです!
たとえばこのシーン。
ポール・ニューマンが演じるビルの設計者が、救出したビルの住人(マンションも兼ねているのです)とともに非常階段で避難する最中。
ガスもれで爆発が起こり、階段が破壊されて転落しそうになりますが、階段の骨組みらしき鉄パイプにしがみついてなんとか助かり、その鉄パイプに足をかけながら上っていく、という場面。
このシーン、何度も観てますが、ここポール・ニューマン自分でやってるよな、スタントじゃないよな、顔映ってるし・・・(一部スタントと思われる個所もあります)。
びっくりですよ。
そんなふうに、俳優たちの演技、気合も尋常ではありません。
プロデューサーはアーウィン・アレン。
アクションシーンの監督も兼ねています。
そのため、アクション場面には並々ならぬ力が入っています。
映画全体の監督はジョン・ギラーミン。
1970年代~1980年代に、こうした超大作映画の監督をいくつも務めました。
(彼の監督作では、1978年のアガサ・クリスティーの探偵ポワロもの「ナイル殺人事件」も有名です。
また、1960年代の彼の監督作には「かもめの城」という、うってかわって繊細なテイストのすばらしい映画があるのですが、それはまた別の機会に。)
キャストも当時の人気俳優が総出演。
スティーブ・マックイーンとポール・ニューマン、当時の2大スターが共演・主演です。
当時メディアではよく、どっちがいいと思う?と観た人に意見を募っていた記憶があります。
マックイーン演じるのは、消防隊長マイク・オハラハン。
ちょっと野性味を感じるヒーロー型。
とにかく自分の任務に全力を尽くし、また同時に部下たちへの目配りも欠かさないリーダータイプです。
危険な場所への消火活動も、自分から進んでどんどん行っちゃうのです。
部下たちに「危ないところだけどおれといっしょに行く気があるやつは名乗り出ろ」みたいなこと言って。
この勇敢さがたまらない!
ニューマン演じるのは、ビルの設計者である建築家ダグ・ロバーツ。
知的ですが同時に行動派。
ビルの中に逃げ遅れた人がいないか、警備員といっしょにビル内を探し回ったり、助けた子どもや女性をとりあえず安全なところまで連れて行くまで、とことん身体を張ったりもする、やさしくて勇敢な男です。
この二人、いいコントラストになってますし、この二人が協力し合って、どうやってビルの火を消していくかを考え行動していくさまが、ほんとかっこいいんです!
脇を固める役者も、ベテラン・若手まで、役に合ったすばらしい演技。
個人的には、もう老境に達した往年のミュージカル俳優フレッド・アステア演じる人のよい詐欺師が、なんとも味わい深いキャラで好きです。
それからもうひとつ、言っておきたいこと。
この映画は、ワーナー・ブラザーズ、20世紀フォックス、この2大映画会社が共同制作・配給を行ったという、おそらくほかに類を見ない作品です。
たまたま同時期に同じ超高層ビル火災をテーマにした映画を企画していたことをおたがいが知り、それなら共同で制作したほうが予算も取れるし、いっしょにやっちゃおう!
ということになったようです。
これも結果的に、これだけ迫力がありそして豪華キャストもそろえた、すばらしい作品になった大きな理由のひとつでしょう。
そして最後にひとこと。
この映画は、いまでも通用する、火災時の注意を教えてくれる啓蒙映画にもなっています。
・高層ビルは火災時には窓ガラスが割れて降ってくる。
ガラスが凶器になる。
・現代の建築は火災時に一酸化炭素など有毒な煙を多く発生させる。
・ナイロンなど化学繊維は、容易に引火する。
火災の際は身につけてはいけない。
などなど・・・。
この点でも、いまなお古びない映画です。
2. 「エクソシスト」(The Exorcist, 1973)
これはオカルト映画の代表作。
その名を知らない人はほとんどいないかもしれません。
ぼくは、実はリアルタイムで公開されたときは知ってはいましたが、怖くて観に行けませんでした。
実際にとおしてみることができたのは、ずっとあと、大人になってからです。
ストーリーはこんな感じ。
ワシントンD.C.の、ある女優の家。
一人娘リーガンの周囲に少しずつ奇妙な現象が起こりはじめ、やがてリーガン自身も奇怪な行為を取るようになっていく。
病院でのさまざまな精密検査でも原因はわからない。
やがて、リーガンは周囲に暴力を振るうようになり、声も変わり汚いことばを連発し、皮膚も青ざめ傷だらけになり変わり果てた姿へと変貌していく。
教会に所属しつつ精神科医でもあるカラス神父、
イラクで悪魔の像を発見した年配のメリン神父、
彼らがリーガンの悪魔祓いを行うことになり、二人の神父たちと悪魔との死闘が始まる・・・。
はい、とにかく怖い!
なんですかね、この全体に漂う、緊張感と寒々とした空気感。
(悪魔祓いの場面は、実際に部屋全体の気温を零下にまで下げて撮影したそうです。俳優たちの吐く息真っ白ですもんね。
そりゃ寒々とした空気感なわけですわ・・・)
意識的にドキュメントタッチな撮り方をしていることもあり、人物の内面描写がほとんどなく、「見えるものがすべて」って感じの見せ方なんですよね。
それが、この映画の恐怖感を増し増しにしています・・・。
しかし、実はこの作品、根っこは深い人間ドラマなんです。
悪魔と人間との闘いをつうじて、
「善」とはなにか、「悪」とはなにか、
人間の「弱さ」「強さ」とはなにか、
「愛情」とはなにか、
といった、人間心理の根本について描いたドラマです。
これは、歳をとってから観直してわかってきたことです。
こんなに醜悪な怖い話なのに、なんで何度も観たくなるんだろう。
そう思いながら、大人になっても何度も観直しているうちに、このテーマに気がつきました。
そう気がついてからは、この作品が大好きになりました。
この作品の原作者であり制作・脚本も担当したウィリアム・ピーター・ブラッティという人は、やはりすごい作家だと思います。
キャスト陣もみんな、すばらしい演技です!
カラス神父役のジェイソン・ミラー。
メリン神父役マックス・フォン・シドー。
母親役エレン・バースティン。
そしてなんといっても少女リーガン役リンダ・ブレア!
キンダーマン警部役のリー・J・コッブが、作中ほぼ唯一のちょっとオトボケキャラで、この人が出てくると安心します。
監督はウィリアム・フリードキン。
先述したドキュメントタッチの見せ方、やはりすばらしい。
(監督の撮影時の乱暴狼藉ぶりについては、すぐにWeb上でいろいろ書かれているのを見つけることができますので、興味あるかたはそちらをどうぞ・・・w)
なお、これの正統続編に「エクソシスト3」(The Exorcist III, 1990)という作品があります。
原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティが原作・脚本・監督まで兼ねて制作したものですが、こちらもあちこちに見どころがあり、この1作目とはちがうテイストで楽しめる作品なのでおすすめです。
3. 「ポセイドン・アドベンチャー」(The Poseidon Adventure, 1972)
これ、パニック映画のお手本ともいうべき作品ではないでしょうか。
ぼくは映画館では観たことがなく、かつてTBSで放映していた「月曜ロードショー」で初めて観ました。
いま調べたら、1976年の放送だったそうです。
(荻昌弘さんの解説、好きだったなあ・・・)
豪華客船ポセイドン号は、大津波で転覆してしまい上下が180°逆となってしまう。
運よく生きながらえた乗客も、このままでは浸水し助かる見込みはない。
ちょっと変わり者の牧師、スコットは、居合わせた乗客ジェームズの「船底部分は浸水がいちばん遅く、また現在いちばん上部になっているので救助隊に近づける」という意見に同意する。
スコットたちを信じてついていくことを決めた8人を加えた計10人が、船尾の機関室をめざして逆さになった船を上っていく行動に挑むが、彼らの前には次々に難関が立ちふさがり・・・。
もう、これもすごい映画です。
プロデューサーが「タワーリング・インフェルノ」と同じアーウィン・アレン。
この「ポセイドン・アドベンチャー」の興行的成功により、彼は「タワーリング・インフェルノ」の制作に乗り出すわけですが、そりゃ成功するよ、これ観たら。
っていうほどのすばらしい出来栄えです。
これもパニック映画のお決まり、
「人間ドラマを見せに見せて人を殺す」(泣)
というパターンをこれでもか、とばかりに見せてきます。
その部分については「タワーリング・インフェルノ」以上かもしれません。
特に、この作品では
「えー!この人が死んじゃうの・・・!」
感が強いかもしれませんね。
これ以上ここでは言いませんが。
キャストでは、やはりスコット牧師役のジーン・ハックマンがよい!
ちょっと変わり者だが、「努力する者こそが救われるのだ」という信念を貫く牧師、という役を演じて迫真の演技で説得力抜群!
彼とことあるごとに意見が対立するマイク役、アーネスト・ボーグナインもいい味です。
船のボーイ、エイカーズ役はロディ・マクドウォール。
この人は素顔よりも「猿の惑星」シリーズ(1968~1973)の猿、コーネリアス博士とシーザー役としてのほうが有名かもしれませんね。
監督はロナルド・ニーム。
彼もジョン・ギラーミン監督と同じく英国人。
アルフレッド・ヒッチコックやデヴィッド・リーンといった大物とともに仕事をした経験もあります。
彼の監督作品では、大隕石が地球に落ちてくるという「メテオ」(Meteor, 1979)がやはりパニック映画大作。
ぼくはこの作品も好きです。
日本国内ではメディア化されてないそうで残念。
ということで、この映画も「これぞパニック映画!」と言える一本です。
4. 「キャリー」(Carrie, 1976)
これはスティーヴン・キング原作のサイコ・ホラー。
のちにリメイクもされてます。(そちらは未見です)
ストーリー。
内気な女子高生キャリーは、クラスでも浮いた存在でクラスメイトからもいじめに遭っていた。
彼女の母親は狂信的なキリスト教徒で、彼女は母親からもせっかんを受ける日々。
そんな中、キャリーはクラスメイトのトミーに、プロムパーティーに参加しようと誘われる。
実はトミーはクラスメイト、スーの恋人で、スーがキャリーをいじめたことに罪悪感を持って、罪滅ぼしのためにトミーにキャリーを誘うよう頼んだのだ。
トミーの根気強い誘いで、ようやくプロム参加を承諾するキャリー。
しかし同じクラスメイトのクリスは、キャリーをいじめたせいで教師からプロム参加禁止を命じられたことに腹を立て、恋人のビリーとともにキャリーに仕返しをしようと恐ろしい計画を企む・・・。
この作品、公開当時は「オカルト映画」ととらえられていたと思いますが、いま観るとちょっとテイストがちがうというか、いまでいう「サイコ・サスペンス」とか「サイコ・ホラー」というテイストですね。
いま観直すと、いまどきの社会問題である、
「いじめ」
「毒親」
といった描写がキャリーの背景としてけっこうていねいに描かれていて、これはこれで痛々しいものがあります。
この映画の公開当時より、いま観たほうがある意味「わかる」作品かもしれません。
ちなみに、ぼくはこの映画で初めて「プロム」というものを知りました。
はあ、アメリカでは高校でこんなパーティーをやるという洒落た習慣があるものなのか、と思ったものです。
キャリーを演じるのはシシー・スペイセク。
もう、この役が断然ハマっています。
本人もラスト、最後の最後まで自分で演じてる(くわしくは言いませんが)という、役への入れ込みようです。
彼女には、実在のカントリー歌手を演じた伝記映画「歌え!ロレッタ愛のために」(Coal Miner's Daughter, 1980)というすばらしい作品があります。(シシー・スペイセク自身、シンガーとしても活動しています)
まだ売れてなかったころのトミー・リー・ジョーンズが夫役として共演していて、これもおすすめ映画です。
スー役には、エイミー・アーヴィング。
当時まだ10代での出演ですが、その後スティーヴン・スピルバーグ監督と結婚、子どもも一人もうけますが離婚しています。
映画「コンペティション」(The Competition, 1980)で、コンクールに出場するピアニスト役としてプロコフィエフのピアノ協奏曲を実際に演奏するという難役にも挑んでいます。
トミー役はウィリアム・カット。
彼はその後コメディ・ヒーローもののTVドラマ「アメリカン・ヒーロー」(The Greatest American Hero, 1981-1983)で大人気を得ます。(日本でも放映され、ぼくもときどき観てました)
若き日のナンシー・アレン、ジョン・トラボルタがそれぞれクリス、ビリー役で出ています。
キャリーの母親役のパイパー・ローリーも含め、キャスト陣の演技はすばらしく、またブライアン・デ・パルマ監督の「デ・パルマ節」ともいうべき展開パターンを確立した作品ともいえる、独特の怖さとせつなさが光る作品です。
5. 「ジョーズ」(Jaws, 1975)
はい、パニック映画、トリは真打ち登場!
スティーヴン・スピルバーグ監督による、有名な映画。
人食いザメ(ホオジロザメ)に襲われた海水浴場と、そのサメを仕留めようとする人たちとの、文字どおりの死闘を描いた作品です。
当時、映画評論家の淀川長治さんが、「試写会の会場で、観る前の観客がみな一様に『人食いザメの映画なんて、おもしろいわけないだろ』と言っていたのに、上映が終わった後はみんなが真顔で『いやあ怖かったね~』と言っていた」という話をTVでしていたのを記憶しています。
それくらい、これは画期的な映画でした。
人食いザメという題材は、当時多くの人は聞いただけではぜんぜん恐怖を感じないようなものだったわけです。
そんな題材を使って、それまでどんな映画もなし得なかったほどの恐怖を実現したのが、この作品です。
そして同時に、この映画はスティーヴン・スピルバーグを一流の映画監督と世界中に知らしめる一作ともなりました。
この映画の中で、特に恐怖感をあおる演出のひとつとして
「サメがなかなかその姿を現さない」
というのがあります。
姿を現さないのに、サメ視点で海中を突進する映像もたびたび。
そして突如、サメに襲われる人!
噴き出す血の赤・・・。
食いちぎられた腕や足・・・。
いやー、怖いですね・・・。
そういう場面に必ずよりそうようにはじまる、ジョン・ウィリアムズ作曲の例の音楽。
ほんと、これは名曲です。
いまやだれもが「ジョーズの曲」って認識できますもんね!
(ジョン・ウィリアムズは、この作品でアカデミー作曲賞を受賞しています。たしかこれが彼の最初のアカデミー賞受賞だったと思います)
ということで、この映画の主役は人間ではありません。
人食いザメ、そして音楽。
この二つが主役です。
舞台のほとんどが海、海上である大作映画という点でも、これはそれまでにない画期的なものでした。
それだけに撮影はそうとうたいへんなものだったようです。
撮影日数は159日間かかりましたが、これ以外にも追加撮影が何シーンか行われました。
スピルバーグ自身は撮影直後、もう自分の映画制作のキャリアは終わったと感じていたそうで、失敗作になると思っていたのです。
しかし、結果的に映画は大ヒットし、のちに歴史に残るほどの名作と評価されることになります。(この作品は現在、アメリカ国立フィルム登録簿に登録されています。)
このへんのエピソードは、スピルバーグの友人でもあるジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」(最初の作品であるエピソードIV)の制作状況と似た感じですね。
ルーカスも公開直前まで自分の作品にまったく自信が持てず、公開日前にはどっかの避暑地に避難してだれとも連絡取れないようにしてた、という話なのでw
さて、「ジョーズ」に話をもどします。
キャストはみな、いい演技をしています。
ブロディ警察署長役にロイ・シャイダー。
ニューヨーク市警から都会の喧騒を避けるために海水浴場を観光資源としている小さな町アミティに妻と移住してきたが、この地で人食いザメ騒ぎに取り組まなければならなくなる、という、スピルバーグお得意の「逃げる男から立ち向かう男」になっていく男の役を抑えめの演技で自然に好演。
サメ退治に名乗りを上げ、ブロディたちと自前の漁船で沖に出るクイント役にロバート・ショウ。
この人は、粗野で憎らしいけど憎めない役をやらせたら最高ですね。
そして、専門家の助けが必要だとブロディが手配してやってくる、海洋研究所所属の若い海洋学者マット・フーパー役にリチャード・ドレイファス。
ぼくはこの役者さん、大好きです。
「未知との遭遇」「グッバイガール」「スタンド・バイ・ミー」など、多くの映画に出演しています。
ここでは若くて、自腹を切って研究用の船を用意できるくらいお金もそこそこある家のボンボンだけど、賢くてユーモアがあって根性もあるやつ、という感じで、小柄なせいもあってなかなか愛嬌のあるキャラクター。
この三人のブレンドが、なかなか絶妙な味わいを出しています。
(ちなみに、この三人がサメの出現を待つ夜に、船内で飲みながら雑談をしていて、クイントが太平洋戦争中の体験を語るシーンがあるのですが、この話のほうがヘタするとサメ自体より怖かったりしますw)
いま現在の時代になって観るとストーリーは極めてシンプルだし、上映時間も約2時間があっという間という感じですが、やはりその「疾走する恐怖」の味わいはこれぞパニック映画の原点!
人生で一度は観といたほうがよい作品です。
というわけで、「パニック・オカルト映画編①」と称して、このジャンルの映画作品を5本、紹介しました。
まだ観たことない人はぜひ、観たことはあるという人も、これを機会にもう一度観直してみてくれたら、とてもうれしいです!
このジャンルはまだまだ好きな作品があるので、また続編を書こうと思います!
それではまた!