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エッセイ的なもの:厨房

今から15〜20年ほど前、まだSNSが世界的に普及する前で勢いのあった2ちゃんねるでは、掲示板に書き込みにくる中学生の事を「厨房」と呼んで揶揄する風潮があった。要するに「ここは大人の来るところだからガキは帰れ」という文脈で使うのだが、これは当時でも比較的年齢層の若い板ですら使われていたような記憶がある。

あれから2ちゃんねるは廃れて名前を変え、TwitterをはじめとしたSNSが普及し様変わりしたインターネットがある今現在、波に乗っているネット発の若手クリエイターが「学生の頃に2chに入り浸っていて〜」というエピソードをインタビューやYouTube配信で話しているのをよく見るようになった。

結局のところ、厨房だの厨二病だの邪険にされていたにもかかわらず、2chという匿名のコミュニティを気に入っていた中学生は結構居たのだと思う。実を言うとわたしもその一人で、少し前まではただの黒歴史だと思っていたが、人気のクリエイターがこうもカミングアウトしている姿につられて実は良い思い出だったのかもしれないと認識を改めるようになった。そして尊敬する方々とほんの一角でも同じ人格形成をする経験を持っている事が少しだけ誇らしくもある。
(人格形成に重要な10代のわたしの経験は2chとアンサイクロペディアとMMOとFC2ブログとあとなにかにほとんどを占められている)

とは言うものの、スマートフォンの普及によって所謂レイトマジョリティ的な人たちが定着し、揚げ足を取るような炎上や政治的スタンスに絡んだ誹謗中傷の応酬が絶えなくなったインターネットに辟易して「昔のインターネットは良かった」という意見や、「昔のインターネットのノリ」を思い返し懐かしむツイートももはや倦厭するほどよく見かける。
その上で今を時めくクリエイターが学生時代にキーボードを打ち込んでいたエピソードを話す現象を加味すると、やはりどうにも00年代にインターネットにのめり込んでいた経験が多くの30前後のオタクたち(良い意味で)の共通認識としてあるらしい。しかしわたしはこれを「昭和は良かった」「オレたちの若い頃はめちゃくちゃ死ぬ気で働いてて」「昔はやんちゃしてたから」という過去の栄光話を延々と話すおじさんたちに重ねてしまう。

30歳間近になり、楽しかったような気がする若い頃の記憶に思いを馳せ、その感情を共有する行為が少し理解できた。あの時昭和を懐かしんでいたおじさん達もこんな気持ちだったのだろう。
きっとあと20年もすれば、若い頃に祭りで凸してコイルに投票しまくった武勇伝を令和生まれの若手社員に披露する人が出てくるかもしれない。
とは言え聞かされる側はたまったもんじゃない。
わたしはまだその感情を覚えている。それを忘れないように心に刻み込んでおきたい。

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