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似顔絵の描き方【似顔絵の仕事2】

モールで似顔絵ブースを開く

路上で似顔絵はダメ

似顔絵といえば、路上でやっているというイメージではないでしょうか。
場末でベレー帽をかぶったお爺さんがやってるみたいな印象。
昔は路上で似顔絵を描いている人はたくさんいましたが、現在は路上で似顔絵を販売するということに問題があります。

夏は暑いし、冬は寒いし、雨が降ったらできないし。
それだけでなく、路上で似顔絵をやってはいけない決定的な理由があるのです。

路上での似顔絵

私有地以外の道路は全て公共のものです。
つまり道路の所有者は、国や市町村ということです。
許可なく道路上で似顔絵を描いていると「道路の不正使用」ということになってしまいます。
なので、無許可で勝手にやっているとお巡りさんが来て「すぐに撤去しろ!」と言わて怒られます。
撤去命令に従わなかったり、常習性があると認められれば逮捕されてもおかしくありません。

「だったら正式に許可を取ればいいのでは?」という話になりますが、個人ではなかなか許可にならないし、使用料がかかるし手間もかかるしで割に合わないいのです。

お巡りさんさんよりもっと厄介な人たちもいます。
ホッペに傷があって背中に絵がかいてある集団の人たち。
この人たちには縄張りがあって、そこで勝手に商売をやられることにとても敏感です。
暴力を振るわれたり、お金を要求される前に退散しないといけません。
そのため、路上で似顔絵をやっていた人たちは、お巡りさんや怖い人達が来ると一目散に逃げるしかなかったのです。

逃げる似顔絵師

道路で似顔絵をやる場合、イベントなどで特別に許可を得たもの以外はやらないでください。
もちろん私有地であっても、所有者の許可なく無断でやるのはご法度ですよ。

路上から大型モールに移行

路上を追われた似顔絵師たちは、新しく似顔絵が描ける場所を探さなければならなくなりました。
似顔絵描いて販売するために都合がよい場所というのは、どんな条件の場所でしょう。

  • 頻繁に人通りがあること

  • 家族連れが多いこと

  • 明るく清潔なところ

  • 屋内で空調があるところ

その条件にあう場所として、多くの似顔絵師が大型モールに目をつけたというわけです。

天候に左右されない大型モール

大型モールとの契約

目をつけたとはいえ、もちろん勝手にやることはできません。
面接を受けてきちんと契約を交わす必要があります。
似顔絵をやる人が今ほど多くなかった当時、大型モールとの契約はあまり難しいものではありませんでした。
モール内のイベントとして賑やかな雰囲気を演出できるし、集客も期待できるということで、モールからも歓迎され個人でも契約することが容易にできました。
契約の条件として、モールの使用料として売り上げの2~3割を月末に支払うという契約が多かったようです。

時は過ぎ、現在ではどうかというと、個人での契約はかなり難しくなっています。
法人化にしている人ならよいのですが、そうでなければイベント会社を介さないと契約してもらえないケースが増えています。
個人で上手く契約できたとしても、高額な使用料を取られてしまうことも多くなっています。
それではどうすれば?
どこかに仲介してもらうのが手っ取り早いでしょう。

個人との契約は難しい

■大型モールでやっている既存の似顔絵ブースのスタッフになる
似顔絵ブースを会社として運営していたり、個人で昔から長くモールで運営している似顔絵ブースの一員になる方法があります。
そういう人達は意外と似顔絵師を募集している場合があるのです。
面接を受けて採用されれば、晴れて大型モールで似顔絵が描けるということです。
もっとも採用になればの話です。

採用になれば、1か月のシフトが組まれます。
希望日はある程度きいてもらえるでしょうが、出番の日が多過ぎることもあるし、少な過ぎることもあるでしょう。
自分の思いどおりにならないことは覚悟しておかないといけません。

ブースの運営者には手数料を支払うことになります。
いろんなケースがあるのでどの程度手数料がかかるかは一概に言えません。
会社によっては売り上げの半分以上を引かれる場合もあるので、契約のときによく確認しておきましょう。

■イベント会社と契約する
イベント会社はモール内でいろいろなイベントを企画していますから、モールとの連携が密になっています。
今まで似顔絵ブースが入っていないモールへ営業をかけてもらえます。
そんなイベント会社にアーティストの1人として登録してもらうということです。
これも上記と同様に採用されればのお話です。

シフトは自分の思いどおりにできますが、営業時間が決まっていたり、モール独自の規則を厳守しなければいけません。
机と椅子はモールで借りることはできますが、それにも使用料がかかる場合が多いです。

手数料をイベント会社に支払い、その中からイベント会社がモールに使用料を支払うわけですから、けっこうな金額になることもあります。
とはいえ、個人で直接モールと契約するのに比べたら割安のようです。

似顔絵ブースの運営

ここからは、モールで似顔絵をやっていく上での注意事項などを紹介していきます。

モールで似顔絵

営業時間

似顔絵ブースの開店は、モールの開店時間にあわせます。
ブースの準備時間を考えて、余裕を持って入店してください。
モールの開店時間を過ぎても準備が整えてなかったら、お客様にもモールのスタッフにも印象がよくありません。

モール自体の営業時間は12時間ぐらいあるところもあります。
モールの閉店時間にあわせてしまうと長時間になってしまうので、似顔絵ブースの営業時間は事前に決めておきましょう。

似顔絵ブースの閉店時間は、似顔絵の受付終了時間と思ってください。
閉店ギリギリに注文を受けると、完成したときには閉店の時間を越えてしまうわけですが、お客様は閉店時間までは受付けてもらえると思っています。
「今から描いたら閉店時間過ぎるから。」と思って早めに撤収してしまうとお客様からのクレームに繋がってしまいます。
似顔絵ブースへのクレームは、モールに対するクレームであると認識してください。

そのため、似顔絵ブースの閉店時間はモールの閉店時間にあわせない方が無難です。
時間延長する可能性も考えて、モールの閉店時間よりも早い時間を閉店時間に設定しておく方がよいでしょう。

ブースの飾り付け

似顔絵ブースにお客様がたくさん来てくれるように飾り付けましょう。
机を出して座っているだけでは、お客様はそこで何をやっているか分かってくれません。
似顔絵のサンプルだけでなく文字で「似顔絵」とはっきり表示していないと、ただそこを通り過ぎるだけの人の目には入りません。
私は少しでもお客様の目に止まるように改良した結果、とんでもなく雑多で混雑した飾り付けになってしまいました。

ブースの飾り付け

はっきり言ってこれはやり過ぎ。
やり過ぎた私のブースをご覧ください。

タレントと一般人の似顔絵サンプル
ノボリとn位が追えサンプルのタペストリー
似顔絵の表示と料金表

いろいろ工夫してみてください。
分かりやすく賑やかで楽しそうなブースにして集客に繋げましょう。

提供物

昔は色紙が主流でした。今でも色紙を提供する人は多いのですが、画用紙を提供する人も増えています。
描きやすさや用紙の価格などを考えて決めてください。
サイズの違う用紙をいくつか用意して、お客様に選ぶ楽しみを提供するのもいいでしょう。

いろんなサイズを用意するのもよい

似顔絵を入れる額を一緒に提供するブースもあります。
額があった方がお客様に喜ばれるし売り上げも上がります。
でも、バックヤードに荷物を常時置けなけい状況であれば難しいですね。
とりあえず、描いた似顔絵は透明なOPP袋に入れ、更にレジ袋に入れてお客様にお渡ししましょう。

似顔絵はOPP袋に入れ更にレジ袋に入れて

似顔絵の価格

似顔絵の価格は自分で自由に決めることができます。
20年前の相場は、色紙に1人描いて1000円~1500円程度でした。
今(2024年)では2000円~3000円程度に値上がりしています。
1枚の用紙に複数の似顔絵を描く場合は、1人増えるごとに1000円~2000円がプラスされていきます。
写真から描く場合は、1人ごとに500円~1000円アップします。
これが結婚式用の似顔絵の場合、なぜだか商品名が「ウェルカムボード」に変わり、2人で5000円~10000円とグッと上がります。
どうですか?
高いと思いますか?
でも、例えば同じ注文をデザイン会社にしたとすると、値段はドカンと上がるんですよ。
昔から変わらず似顔絵の相場は低いので、いくら人気のある似顔絵師でも大成功していると言える人は少ないのが現状です。
悲しいですね。

回転率について

モールの似顔絵では、その日の収入が決まっているわけではありません。
お客様が誰も来なければ、その日の収入は0になります。
日によって売り上げに波があることは覚悟しておかなければいけません。
しかし、逆にたくさんのお客様が来れば、似顔絵を描けば描くだけ収入が上がるのが似顔絵ブースの利点です。
できるだけお客様の回転を早くして、たくさんの似顔絵を描きたいと誰しもが思うはず。
回転率を上げるために、体を描くのをバストショットに収め、背景も極力省略したものにするなどの工夫をしてください。

私がモールで似顔絵を始めたばかりのころは、同じように回転率を重視していました。
ある程度省略した似顔絵とはいえ、似顔絵を手にしたお客様にはたいへん喜んでもらえます。
とても嬉しい反応ではありますが、私には「本当はもっと凄いのが描けるからこれぐらいで喜ばないで。」という、なんだか捻じ曲がった気持ちが生まれてしまいました。
傲慢ですね。
傲慢だとしても、そう思ってしまったものはしかたがありません。
我慢しきれなかった私は、あるときからモールでの似顔絵を今できる全力で描くようになりました。

まさに回転率度外視。
似顔絵ブースをやる者としては非常識なやり方です。
描くのにかなりの時間がかかり、予想どおり一日に描ける枚数がずいぶん減ってしまいました。
「枚数は減ったとしても、他の似顔絵ブースでは描いてもらえない豪華な似顔絵になった。」という自己満足に浸るしかありません。

でも、そんな似顔絵を気に入ってくれたお客様が増えて、多くの方にリピーターになってもらえたのは思わぬ収穫です。
これぞ他の似顔絵ブースと差別化した独自ブランドの確立!!
と言いたいところですが、描ける量が格段に減ってしまったのも事実。
やはりこれは真似しない方がいいですよ。

回転率度外視似顔絵の例

待ち時間を有効に

似顔絵ができるまでの間、お客様に待ってもらうのに限界があります。
面白トークに自信があれば、待ち時間も楽しく過してもえるでしょうが、私のようなやり方では似顔絵完成までにかなりの時間がかかります。
そこで考えた方法は

  1. 目の前のお客様をタブレットで写真に撮る

  2. 文字入れや背景などの要望を聞いて、お客様には完成時間を予告したうえで一旦その場を離れてもらう(必ずお名前と電話番号を聞いておくこと)

  3. タブレットを見ながら似顔絵を完成させる

  4. 予定時間に取りに来たお客様に似顔絵を渡す

というやり方です。
幸いモールには食事をするところがありますし、お買い物をしたり、映画館があるモールでは映画を観たあとで取りにくることもできます。
お客様は、座ったままで出来上がりを待つよりも有効に時間を使えるし、お買い物をしてもらうことでモールの売り上げも上がるという、まさにWin-Winな方法でしょ。

時間を有効に使える作画方法

このやり方には注意事項があります。
1つ目は、料金をいつもらうかということ。
注文されたときにもらうのか、それともお渡しするときにもらうのかということです。
お客様に似顔絵を渡すのがかなり後になってしまうと、料金をもらったのかどうか分からなくなります。
私は常にお渡しのときにもらうようにしています。

2つ目は、お客様が取りに来るのを忘れてしまう場合です。
あまりないことですが、受付け時にお名前と電話番号を聞いておけばなんとかなります。

お客様にリピーターになってもらう

一度似顔絵を描いてもらったら、当分はいらないだろうなと思いますよね。
でも、年に一度とか、何年に一度とか、周期的に注文されるお客様は意外と多いのです。
例えば、毎年の子供の成長記録のような感覚で注文される方がいますし、ご夫婦が結婚記念日ごとにメモリアルとして注文する方もいます。

リピーターになってくれるお客様はとても大事です。
年に一度しか来てくれなかったとしても、そんなリピーターが10組、20組と増えてくれば、毎月の売り上げが違ってきます。
「今日のお客様は、ほとんどリピーターさんだったな。」なんてこともあり得るのです。

リピーターは大事

リピーターになってもらえる似顔絵のポイント

どうすればリピーターを増やすことができるでしょうか。

  • 似顔絵がとても似ている

  • 絵柄が可愛い

  • 絵柄が自分のセンスにあっている

など、出来の良い似顔絵を提供することは当然ですが、似顔絵以外のことでも工夫することが必要です。

似顔絵ブースの開催日を告知する

次回も来てもらいたいと思うのなら、いつ似顔絵ブースが開催されるのかを明確にしなければいけません。
似顔絵ブースの開催日を告知する必要があります。

ブログやSNSで「今月の似顔絵開催スケジュール」という形で毎月告知することはマストです。
更に、ブログやSNSを見てもらうために、QRコードを付けたビラを作って店頭に置いたり、似顔絵をお渡しするときにレジ袋の中に入れたりして配りましょう。

QRコードつきのビラを配布する

お客様の顔や名前を覚える

毎回来ているお客様のことを覚えておらず、はじめてのお客様のような対応をしてしまうとガッカリされますよ。
「わぁ!お久しぶりです、○○ちゃん大きくなったね。」というような会話から入ると、お客様のことを覚えていることが分かってもらえるし、お客様に「ここの常連になった。」と思ってもらえます。

前回とは違うテイストの似顔絵を提供する

毎年来るお客様への似顔絵であれば、毎回同じような似顔絵を提供していたのでは飽きられてしまいます。
そんなときは、ダイレクトに「去年はどんなの描きましたっけ?」と聞いてみたり「今年はどんな感じにしましょうか?」とお客様の希望を聞くなど、ある程度の情報をもらい前回とは違う要素を入れて描くことが重要です。
毎回ご満足いただき長くリピーターになってもらいましょう。

長く続けていくことが大事

同じ場所で長く似顔絵ブースをやっていると、直接のお客様でなくても「あそこに行けば似顔絵を描いてもらえる。」という印象が残ります。
そうすると、似顔絵が必要なことがあればお客様になってもらえます。
地域に定着することこそモールで似顔絵をやる意味があるのです。

長くやっていくうちに「こんな似顔絵の構図はどうだろう。」とか、「こんな表示を付けたら分かりやすいかな。」など、どうすればもっとよい似顔絵ブースになるかを考えるようになります。
商品の改良やブースの見せ方を工夫して、自分なりのベストなブースにしていくのは楽しいものです。
コツコツ改良を加え、自分の基地と呼べるようなブースに育てていきましょう。

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