自戦記:対あらきっぺ戦
半年ほど前の将棋クエストでの対局。僕は先手番。
▲7六歩△3四歩▲2六歩△9四歩▲2五歩△8八角成▲同銀△2二銀▲9六歩△3三銀▲3八銀(図)
一手損角換わりの出だしに。最終手の▲3八銀はダイレクト向かい飛車を警戒した手で、以下△2二飛なら▲6五角△7四角▲4三角成△5二金右▲同馬△同金▲7五金と大きく振り替わったあと、
参考図のような△5四角~△2七金の筋を未然に防いでいる意味合いがあります。詳しい解説は村田本を読んでね。
△6二銀▲3六歩△6四歩▲7七銀△3二金(図)
平凡に相腰掛け銀でもいいけど、できれば一手の得を生かしたいよなー、早繰り銀か、それとも4五桂速攻か…。
などと思考をめぐらしながら、ふと対戦相手の名前を見て凍り付く。
元奨三段のあらきっぺ氏じゃん!!!!!
R200点以上離れてるし!!正直たぶん角落ちでやっと指し分けレベル!!
――と嘆いても仕方ないので今の自分にできる最善の方策を必死で考える。
▲2七銀△6三銀▲6八飛△7四歩▲3八金(図)
僕の一番の強みは序盤力だけど、同じ序盤ブロガー(上位互換)のあらきっぺ氏に最新型で挑んでも返り討ちに遭うだけだろう。
ここは多少の評価値を犠牲にしてでもドロッドロの力戦に持ち込んだほうが期待勝率が高いと判断した。
丸太…もとい、康光せんせー秘伝の陽動振り飛車でござい!!
△4二玉▲3七桂△7三桂▲4八玉△8一飛▲1六歩△1四歩▲7八金△7二金▲6九飛(図)
地下鉄飛車開通。以下△3一玉~△2二玉と囲ってくれば▲2六銀や▲1八香~▲1九飛から1筋をガンガン攻める狙いがある。
△8四歩▲6六歩△8五歩▲6八銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8一飛▲6七銀(図)
7七の銀を6八⇒6七と繰り替える。さらに▲7七桂~▲5六銀~▲6五歩まで指せれば先手成功だが…。
△4四銀▲5六銀△5四角(図)
△4四銀~△5四角が機敏な角打ち。次の△7六角~△8七角成と、△3五歩~△3六歩が同時に防ぎづらい。
▲6五歩△同桂▲4六歩△3三桂(図)
▲6五歩~▲4六歩は苦戦なりに最善の応接。△3三桂は4五地点を補強した自然な受けだが、△3五歩と突きづらくなった(▲3四歩の反撃がある)ので先手がすぐに潰れるおそれはなくなった。
▲5八玉△7五歩▲4九飛△7六歩(図)
▲5八玉~▲4九飛は身動きできない4四銀を召し取りにいった手。内心「うまくいったのではないか」と手ごたえを感じていたのだが、慌てず△7五歩~△7六歩と取り込むのが流石の大局観だった。
▲4五歩△同桂▲同銀△同銀▲同桂△6六銀(図)
先手は桂得を果たしたが△6六銀と上部に覆いかぶさる攻めが厳しい。以下▲6九桂や▲6八銀と受けるのは△4四歩で先手は勝ち味が全くなくなってしまう。
▲3三銀△同金▲同桂△同玉▲4五桂(図)
3三地点でバラして▲4五桂の王手。以下△4二玉なら▲3三角で6六銀を素抜ける。対局中は悪いながらもまだ戦えると思っていたのだが。
△4五同角▲同飛△5七桂成▲4九玉△5四銀(図)
あっさり角で桂馬を取られ、△5四銀でしびれた。飛車を渡すと△5九飛▲同玉△5八銀の詰めろになる。その後も粘っては見たもののいくばくもなく僕の投了となった。
▼総譜
局後のソフトの検討によると図で▲6七角と打つ手が優ったようだ。
たしかに本譜の▲5八玉~▲4九飛よりも一手早く▲4五歩と突けるし、玉形も右辺に逃げ込みやすく安定している。
ただ、それでも形勢は互角のようで、おそろしいことに僕が飛車を振って以降、たったの一度も評価値が先手プラスに振れた局面がなかった。
ノーチャンスなのは流石にちょっと凹みましたが、こうした強い方とネットで教えていただけるのはとても良い刺激になります。貴重なお時間を割いて対局いただき、ありがとうございました!
▼あらきっぺ氏の著作