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最後の秘境



目を瞑っても,目を瞑っても明るい世界が良い
死ぬ時に先に目を瞑るはず,それでもたくさん明るくて,まだ生きていることを目で自覚したい、明るい秘境

最後の秘境を探しに行こうぞ...
行くよー!早く行くよ!
早よしれ!バカ!

そうして連れてかれた,暗い穴に入る,ずっと進んで,かゆい、地面に泥があって,ミミズを殺してしまった

こんなことしてるのに天国に行けるものかと悩む,秘境だからいいか,最後だし,と納得

根が多くて進みづらい...
案内役のもぐらさんは秘境案内のプロだ,
でも途中で止まってしまった,なぜ止まりますか?と聴いたら、おモグラさんが

「最後の秘境はね、自分でしか見たらだめなんです」って、自分で踏み入れる,自分が最後に,違うや,最初で最後に踏み入れたところですって,

ここからは1人で...そう言われて帰り道を,帰り道の地図を渡され,モグラさんは元いた道を戻るわけでもなく,垂直に,垂直に上へと上がって行ったのでした、たまげたものだ..汗

この先探れと言われましてもそもそも自分が何者なのかもわからないわけです,ずっと起きた時から暗く,ずっと土の匂いがするのです
自分に足があるのかも,喋れてるのかもわからないのです
進むか...前も後ろも,モグラ氏の上もわからないまま,前に進んだ

いつ埋もれて死んでもおかしくない穴を進む,土臭い、ひたすらに

けど怖くないのだ、ワクワクするのか,ドキリとするのか,この先何が待っているのか,モグラの言葉になぜか信ぴょう性があったのだろう
ドーパミンぐがそれなりに出て、怖くなかったのだ,腹も減らない,てか何を食べるんだ?
進む...四足でもない,蛇のようにはうでもなく,ミミズのように這うでもなく、土の上を転がるように進んだ,ますます自分がわからない


ム?空気,滞留した空気とは違う明らかに色々なものを乗せた空気が鼻をタッチした,ムムム、葉っぱだ,乾いた土もある,しかも木!
木の皮の匂いもある、風ですれた葉っぱ
緑くさい、空気が運んでる、でかい空気の層と,乾いた土と、擦れた葉っぱの三層にし、そのまま鼻へと迷い込んできたのだ...!

私は迷わずそこへ進んだ
当たり前だろうに,起きてからずっと土の中なのだ,誰もがする選択をしただけだった

明るくなった初めて,初めて土の輪郭を見た
ぼんやりと、私は急いで自分が進んでいる何かを確認しようとした,ただ、顔を下ろせなかったのだ,あまりの光と呼べるのか,何かを目の前にして,顔を下げることさえも忘れていた...

眩しいってなんだっけ、眩しいとは言えない
四文字では収まらないであろうその光と色と情報の粒の量,視界が真っ白を超えて、脳みその位置を見失った

脳味噌を探すべく,手を動かして土を触れ,現実に戻った
いやはや尋常でない光を前に突っ立った、10分,,,たったかな?わからん!ゆっくりと色がわかってきたのだ 白になった,そこから,黄色になって,無数の細い線が現れて,それが太くなっていく,そして黄色の間から赤が現れた、まさに血管のような赤がたくさんあったのだ,その見た目があまりにも不明瞭なもので、ハテ?と思ったところ,私はずっと目を瞑っていたことに気づいた、ゆっくりと瞼を開けようと思った、何にせよ,外が明るすぎる気がしたのだ,ここまで血管がしっかりと見えるのは嫌な予感なものだ
ゆっくりと,目を開ける,ボケたまつ毛の隙間から,外の世界が見えた

ボケたまつ毛は玉となり,消えた,そこにはひたすらに青と緑があった

綺麗に二つに分かれた青と緑,地平線で綺麗に分かれている,
緑の長さは均等であった,誰も踏み入れてない何均等であった
部外者がいないことによりそれぞれが均等を選んだのだろう

それにしても緑が緑すぎるのだ,じっと見つめていても緑の塊でしかないのだ,風のおかげでそれが初めて草ということがわかった,おかしな緑,あまりにも均一な緑,茎や葉っぱにかけて少し色味が違う程度である、ムム,,?

おかしい,私はおかしいと思った、揺れる緑はあまりにも平面的で目の前に感じないのである,ゆたりと、ゆらりとゆれるだけ、
影,影がどこにも見当たらない! 私の外の世界にはなんと影がなかったのだ,というか明るい,明るすぎなんだよ!

青の地平線より顔を上に上げた,光があった,ただあるわけじゃない,綺麗に均等に,蜂の巣のようにただ光が並んでいた,球場のライトのように光が,無数の光が天球状に空を覆っていたのである,
空を見上げて,どこを見ても光が来て,目を向けられたものではなかった
光はひたすらにこの世界を照らし,均一に光を与え,影も落とさず,均一に植物を育てたのだ,私以外全てが均一の世界に,私がただ1人と残されていた,完全に異物であった

少しでもここにいてしまうと,この場所のバランスを崩してしまいそうだ
足元の草に失礼だと思い,初めて自分の足元を見た,もちろんどこを探しても私の影はない,というが私自身がそこにはなかったのだ...
ぁぁ..変に素早く私は納得した、もぐらさんの言っていたことはこれか,最後の秘境は自分で見つけて,自分以外知らない場所なのだと,

私は死ぬんだな,ここで,自分が何者だったのかも思い出せずに,
影のない草原に寝転んだ,私の影も,私の後も草の陰もできないまま寝転んだ

空を見ると,無数の光が目に入る,思わず目を瞑る,光の跡が瞼に残る,じんわりと溶け,丸と丸が繋がって白になる,白の中から黄色が浮いてくる,そこから細い線が何重にも現れ,隙間から赤が顔を覗かせる,私にあったはずの血液を彷彿させるその色を私はずっと見ていたくなった。

血液の隙間から無数の光がまたチラリと揺れている,ゆらゆらと風が流れると、光も揺れ,ガラス玉のように虹の色をきらつかせる

草が私の体を撫でる
私の体は動かなくなっていた

瞼の開け方も忘れ,赤の線と光の世界が、私の世界になっていた,
私はもう終わるのだな,もぐらさんもみみずさんも、土の香りも,青と緑の地平線も,私自身を思い出せることなく,全て忘れるのだ

そしてずっと残るのかな,この赤と線と光の無数の煌めきは,私自身全てを忘れてしまっても,目を開けることも本当に閉じることもできずに,永遠に目の前にあるんだろう

全ての考えをし尽くして,私にない感情を探し、考えることにも疲れて初めて,無になるのだろう,本当の無とは程遠い光を前に,それができる自信がなかった


私は急に恐ろしくなった,あの暗い土の中へ戻りたい,何も見えないくらい世界で無になりたいと、光を前にそう思った


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