Gamescom 2023 ONL 感想
8月23日にドイツのケルンで開催するGamescom(ゲームズコム)、コロナの影響で3年ぶりに現地で開かれた。俗に言う世界三大ゲームショウは米国の商業イベントE3が名存実亡となった為、ゲームズコムが中国のChina Joy、そして日本のTGSとともにゲーム業界最大の見本市となった。オープニングナイトライブ(ONL)の配信が日本時間早朝の為、どれだけの人がリアルタイムで視聴できたか定かではないけど、ゲーム好きとして見逃せないイベントを振り返しながら感想を記して置く。
司会はもはや当然のごとく、ゲーマーにとって顔合わせが毎年最低でも2回、夏のSummer Game Festと冬のThe Game Awards、ひょっとしたらマリオよりも顔なじみのジェフ・ケイリー氏。世界最大規模と言ってもどんな業界だって、蓋を開ければ、癒着が進んで能力でもなく努力でもなく人間関係がいとも簡単に全てを凌駕してしまう。例えば、『The Last of Us』のジョエルでも知られるトロイ・ベイカーという声優&役者さんが殆どのSIE作品に出演していて米国の声優界では大きな影響力を持ちながら詐欺スレスレNFT会社とパートナーシップを提携しSNSで反対の声をあげたファンを攻撃した上、会社の手口がバレて、バッシングを受けやむを得ず提携を解消し謝罪。一見ものすごくオープンで自由そうな空間でも、階級さえあれば縦社会が生まれる。下にいる何千何万億が上り詰めるか上にいる数百数千を引き下ろすかのみで社会が自由になる。妙なことに、同じラスアスのジョエル、日本語ボイスの担当は山寺宏一さん、"31年差婚"だの"なぜモテる"だの日本のメディアならではの着眼点じゃ彼が圧倒的に仕事を貰えるわけにたどり着けそうもない。なのでアビーに任せるしかない。
話は逸れましたがオープニングの幕開けはやはり目下SNS上一番熱論を交わすゲーム、『Starfield』にほかならない。作曲家によるパフォーマンスとベセスダのトップであるトッド・ハワードが登壇し、また実写のプロモ映像も披露され宣伝活動が全開。
Starfieldはベセスダの25年ぶりに続編物ではなく全く新しいシリーズ、トッドは自分の子供のようにこのゲームを作っているとインタビューで語ったことも。そんなスターフィールドが、対応プラットフォームをXBOXとPCと発表して以来、言ってみれば、キラキラ星の道と程遠いイバラの道を辿ってきた。それも全て、絶えまないネットの流言蜚語が原因となる。ある時はマーケティング、ある時はレビュー時期、はたまたスタート画面までが特定の層の武器になってとにかく言いふらす。ダイレクトでは45分間もゲームプレイを惜しみもなく公開したにもかかわらず。似たようなプロモ手法を取ったゲームはゼルダの伝説だけ。PS4のスパイダーマンが発売直前に、水溜まりゲートと呼ばれるくだらないこと極まりない激しい議論があった。Starfieldが耐えてきた数々の荒唐無稽な"注目の話題"はそれ以上に虚しく哀れなものばかり。日に日に人間がコモンセンスを失っていく光景はSNS上だとはっきり見えてくる。
一方、流言蜚語はファンボーイの戯れに留まらず、近年に益々看過できなくなった開発者への人身攻撃や殺害予告など、異常と言わざるを得ないレベルのロストコントロール。前回はTwitterの話でも触れたように、資本主義によって身近の何もかもが数字と化した現代社会で一部の人間、特に"インフルエンサー"と呼ぶような輩が注目の為に敢えて油に火を注ぐような発言をし、無闇に分断と紛争を起こして利益を生む。日本にも様々な迷惑ユーチューバーの記憶がまだ新しい。大前提に、迷惑しないYoutuberは存在せず。利益が絡むので、迷惑をかける対象の違いがあるだけで、これはネットでもリアルでも同じ言えること。
話を戻すと次に登場したのは完全サプライズの『リトルナイトメイア3』
このシリーズはバンダイナムコから発行する数多のタイトルの中でも数少ない成功したインディーゲーム。日本っぽいホラーの雰囲気な為によく間違えられるが実はスウェーデンの開発スタジオが手掛けた作品。ゲーム実況にもってこいタイトルというのも成功のきっかけかもしれない。
首なしの妖怪が琵琶を弾きながらお経みたいな歌を披露してくれたのは
『黒神話:悟空』の最新トレーラー
西遊記をテーマにしたソウルライク系アクションRPG
今回のゲームズコムのハイライトの1つ
中国産のゲームは年々、グラフィックもゲーム性も抜群に成長している。
色々制限がある中、ストーリーの幅だけがまだまだ広いとは言えない。『原神』のようなガチャがメインのスマホゲームやEスポーツといった金の成る木ばかりが注目されやすいが、『三体』だったり『羅小黒戦記』など、映画やアニメでものすごく優秀作を創出できるのでAAAゲームでも中国からのスタジオが活躍するのは時間の問題。
Developer Directでは大ヒットとなった『HIFI Rush』
QuakeconではクラシックFPSの『Quake 2』のリマスター
そしてGamescomではPCの人気RTS『Age of Empire IV』のXBOX版
もはやXBOXの十八番となったシャドウドロップ
これならTGSも期待しない理由がない
任天堂から"このダイレクト終了後"を学んだXBOX
これからも切磋琢磨して欲しい
中国メーカーの躍進に遅れをとらないようにしているのが韓国のゲームメーカー。これは今年のSummer Game Festの時もそうだったが。やはり韓国系のメーカーが積極的にコンソールに進出しようとしている。MMOやスマホゲームを得意とする開発が多い分、F2P市場はあまりにも惨烈を極める為、比較的に安定な収入を得られるゲームパスなどのサービスが魅力的に見えるはず。XBOXに登場するお色気シューテングの『The First Descendant』の他にインパクトがあったのはやはりPearl Abyssの『紅の砂漠』。これは知らなかったが前に搾取されるポケモンが銃を取った描写としても話題となった『Dokev』もここの作品。『Dokev』のゲームプレイトレーラーも面白そうだった。
ちょうど前作の『黒の砂漠』は今月末にゲームパスから卒業する。最新作の『紅の砂漠』のトレーラーを見る限り、まるであらゆるトレンディのAAAゲームが全てこの一本に濃縮したように、驚くほど豊富なゲームプレイ要素。ただ『黒の砂漠』の時もトレーラーが大変綺麗だったがそれはあくまでもハイエンドPCの話、コンソール版はそこまでグラフィックが綺麗なわけではなかった。もしこの新作で実際にトレーラーのクオリティを実現可能なら化け物じみたタイトルになりそう。来年は『紅の砂漠』がゲームパスに来る可能性も充分にある。
他にもONLでは鉄拳8、アランウィーク2、アサクリイラクや、MK1など錚々たる面々のAAAが登場するが筆者はCODモダンウォーフェア3の辺りでうとうとし始めてこれら大作のプロモにこれといった感想もないので割愛します。無論、この感想は初日のものに過ぎないから、これからは展示ブースのゲームプレイ映像などが沢山公開されるでしょう。
Summer Games Festの時はFF7リメイクのパート2が大きな隠し球となっていたが今回は"One more thing"もなくアランウィーク2を紹介してそのまま終了となった。これは見なくともわかることだが、配信のコメント欄がきっと"F"の文字に埋め尽くされていたでしょう。大きな新作発表がなかったとは言え、従来のジェフ・ケイリーのショーと比べて商業的要素がかなり抑えられ、無理やり広告の投入もなく、米国のイベントよりはかなり見やすかったと考える。XBOXが"グリーン賞"をもらったのもなんか微笑ましい。
最後に年末のThe Game Awardsの日付が12月7日と発表。今年は既に数え切れないほど優れたゲームが発売され、9月から12月までにはまだ数多くの大作がスケジュールされている。
GOTYへの"戦い"がかつてないほどの激動となるだろう。
安牌のティアキンか、ずば抜けのHIFI Rush、PCからの刺客、XBOXの宿願か、それともダークホースの何か。何せ身体が闘争を求めているネタが使えなくなったほど今年はゲームの豊作年。
皆さんもそれぞれ人格を担保にしても好きと言える作品と出会えるように、
ではまた次回でお会いましょう。