【ニュース】新型コロナウイルス海外での影響(12) ~アジア市場 さらに高まるオムニチャネル戦略の重要性~
世界中の多くの消費者が自宅で過ごす中、オンライン・オフラインそれぞれの消費習慣はどのように変化していくのでしょうか?今回の記事ではシンガポール市場を例に、感染拡大の最中どのような変化が起こり、どういった新たな習慣が今後も継続して取り入れられる可能性が高いのかについてお届けします。
新型コロナウイルス感染症は今や世界中に広まり、多くの人が、事態が収束するまで生活習慣を変えることを余儀なくされています。封鎖や隔離により人々の暮らしは制限されることで、さまざまなテクノロジーの導入が加速しています。
今年3月に実施された「新型コロナウイルスによる消費習慣への影響」調査からは、半数以上の消費者(回答者の54%)が「シンガポールは今後12カ月で景気後退から脱出するだろう」と考えていることも明らかになっており、楽観傾向を見て取ることもできます。この結果からは、シンガポール政府が感染拡大に対して実施した対策を消費者が好意的に受け止めていることも伺えると言えます。
新型コロナウイルス感染拡大による消費パターンの変化はさらに顕著になっており、発生以来、健康およびウェルネス関連製品はこれまでにない急速な成長を見せています。より健康的な製品とカテゴリーへのシフトは以前から見られた傾向で、感染拡大が継続するにせよ収束するにせよ、消費者はこの先も自身の病気予防とウェルネスを意識し続けるはずです。シンガポールでは消費者の83%以上が、今後12カ月で健康補助食品を再購入する可能性が高いとし、また、58%がハンドサニタイザーを購入し続けるだろうと回答しています。
オムニチャネルの最適化
ニールセンの最新の調査では、 感染拡大と連動した消費パターンの「6つのフェーズ」が確認されています。緊急用の食料品や医療用品の支出パターンが初期兆候として見られ、こうしたパターンは複数の市場で似通っていることも分かっています。世界中で多くの消費者が「フェーズ3:食料の備蓄」に移行するにつれ、感染予防のために衛生面でより安全な購買方法を選択する傾向が高まり、eコマースでの売上が増加を続けます。
シンガポールは、3月31日の時点で「フェーズ4:自主隔離準備」にありました。この段階では、オンラインショッピングの増加、来店の減少、在庫切れの増加、サプライチェーンへの負荷などが発生します。 日用品小売企業にとっては、店頭在庫を管理することももちろん重要ですが、eコマースサイトではこれがさらに大切になります。
シンガポールの日用品の売上高は、政府が感染症警戒レベルをオレンジ(警戒度上位からレッド、オレンジ、イエロー、グリーンの4段階に分けられている)に引き上げた週の平均週間売上高に対し、全体で43%の成長率を示しました。サプリメント、家庭用洗浄剤、パーソナルケアおよびヘルスケア製品の売上は大幅に増加しましたが、アルコール飲料、チョコレート、アイスクリームは減少しています。当然のことながら、感染拡大に対する消費者の対応は、楽しむための消費をすることではなく免疫力を高めることでした。
消費者が自宅でより多くの時間を過ごすことを余儀なくされ気軽に外出できなくなると、オンラインショッピングが継続的に拡大します。調査の結果からは、感染拡大中に初めてオンラインで買い物をしたシンガポール人が、今後12カ月間で再びオンラインショッピングをする可能性が非常に高いことも分かっています。
オムニチャネルを抑えることが最善の戦略であると言えるでしょう。消費者は緊急的な大量買いをしたものの、オンライン小売企業は拡大した需要を満たすに十分な配送リソースを持っておらず、ハイパーマーケットがこの状況の恩恵を受けたと言えます。在庫切れを最小限に抑え店頭での即時の購入ができるようにすることも重要です。
シンガポールでは、膨れ上がった需要に供給が追い付かず、品切れのために消毒用アルコールの販売が減少しました。その後は在庫が補充されしだい売れるという状況が続いています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって引き起こされた困難と混乱にもかかわらず、東南アジアでは高い消費者信頼感が維持されています。中流階級が拡大しテクノロジーに精通したショッパーが増え、メーカーと小売企業は長期的な成長の機会を得ています。
購買行動の変化
1.食料品の購買傾向の変化
東南アジア市場では、消費パターンの変化は多くの場合「パニック買い」と定義され、市場はほぼ2カ月間パニック買いに向き合ってきました。
ニールセン 東南アジア担当 総責任者の ヴォーン・ライアンは「最初の感染症例が報告されてから4週間、シンガポールの小売業の売上は通常に比べて約40%高いままです。人々は同じ仕事を続けていますが、以前のようには外食をしません。アルコール、美容製品、チョコレートの購入が減り、旅行のキャンセルも売上減少を招いています」と述べています。
この時期購入された食料品は何であっても、感染が続く限り補充され続けるでしょう。
2. eコマース利用の増加
消費者はこれまで以上にテクノロジーを取り入れるようになっており、日用品小売企業とメーカーは、積極的なeコマース戦略に取り組む必要があると言えます。
2019年時点のシンガポールでのeコマースによる日用品の売上は6%でしたが、感染症警戒レベルがオレンジになった後には8%に達しました。非食品カテゴリに絞ると、2019年の12%から感染拡大中には14%に上昇しています。一方で、食品カテゴリはオフライン市場にシフトし、eコマースの売上高は2019年の8%から6%に減少しており、実店舗とハイパーマーケットの重要性が示唆されています。
チャネルに関係なく、入手可能であることが重要であると言えるでしょう。オンラインでの購入の際、在庫補充や配達に遅れがありキャンセルする消費者も見受けられたためです。
2019年ではハンドサニタイザーの売上の6%がオンラインでの購入でしたが、2月末までに最大60%まで伸びています。一方、オムツなどオンラインでの販売が成熟しているカテゴリは、購入の緊急性と在庫切れのためオフラインの販売が増加し、オンライン販売は2019年の44%から35%へ減少しています。
このダイナミックな状況では、オムニチャネル戦略を推進することが非常に重要です。
感染拡大中に家庭用品を初めてオンラインで購入した調査対象者の69%が、今後12カ月で再びオンライン購入するだろうと回答していることからも、消費者間のeコマース浸透率が今後も上昇することが予測されます。
3.価格はそれほど重要ではない
この2カ月間、ショッパーは直近で必要なアイテムと入手可能なアイテムを購入してきました。価格は依然として意思決定の主要因のひとつですが、近年では品質を重視するショッパーも増えています。現状を考慮すると、消費者は購入を検討する際、健康面、安全性、入手できるかどうか、を優先していると言えるでしょう。
日用品メーカーと小売企業は、商品、特に新鮮なアイテムの衛生面での安全性に関する各種取り組みを消費者に伝えることで、品質と安全性を保証することができるはずです。
新型コロナウイルスの感染拡大によって悪影響を受けたカテゴリが長期的に縮小するとは限りません。この状況がどの程度続くかは定かではありませんが、感染拡大の最中における消費習慣からは一定の指標を見出すことができるはずです。
ニールセンによる最新調査
「新型コロナウイルスによる消費習慣への影響」について
「新型コロナウイルスによる消費習慣への影響」 は、3月中旬に世界74の国と地域で実施され、調査結果からは新型コロナウイルス感染拡大の最中の消費者の行動とマインドが浮き彫りになっています。
日用品メーカー、小売企業、その他メーカーが、各市場で感染拡大に伴う状況に対応しながら、変わりゆく消費パターンを理解し今後のビジネスプランを見出す一助となるはずです。
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ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
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