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見る雀だった私が、初心者デス子になるまで①
ーー 2years ago
「誠一さんに任せたんだよ!あなたで負けたらしょうがないっていってるんだ!」
YouTubeで初めて麻雀の対局を見たときの記憶。
画面の中、デス子の父よりも年配のおじさんが、苦しそうに首を傾げ、深く息を吐いていた。実況の声が熱を帯び、卓を囲む四人の緊張感が伝わってくるような気がした。
当時のデス子には、オーラスがどういう意味を持つのかなんて分からなかった。場の空気感から「針を通すような細い逆転の道」を近藤誠一さんというプロの方が探っているのは伝わってきた。
「リーチでいいじゃないか!」
近藤さんの手が動いた。2ピンが河にバシッと切られ、同時に響くリーチの宣言。
その瞬間、なぜか目頭が熱くなった。
「行ってくるわ!」
父はいつもそう言って家を出ていった。仕事が終わればそのままパチンコ屋もしくは雀荘へ行く。休日も朝から当然のようにいなかった。
「そんなお父さんのこと、嫌い?」
もし誰かにそう聞かれたら、デス子はきっと「ううん」と答える。月に一度くらい、焼肉やお寿司をごちそうしてくれたし(いま思い返せば...あれはギャンブルで勝ったお金だったんだよね)デス子に干渉してくることが全くなかった。まぁ興味がなかっただけだろうけど。
でも、そんな父を見て育ったのに、デス子自身は麻雀に興味を持つことはなかった。
月日が流れ、一人暮らしを始めた。
夜になると、ベッドに寝転びながらぼんやりと考えることが増えた。
「将来なにしよう?」
「自分はなにが好きなんだろう?」
そんなとき、ふと、何ヶ月ぶりかに父の顔が浮かんだ。
「あー、パパは麻雀ばっかりしてたなー」
麻雀ってそんなに面白いものなの?
何気なく、スマホを手に取って「麻雀」と検索をかけた。
そして――
近藤誠一プロの大逆転倍満ツモ。
その対局の映像が、たまたま目に飛び込んできた。
震える手で裏ドラをめくる。
めくり直した牌を見せた瞬間、感情が爆発した。
初めて見る麻雀の世界に、デス子はすっかり引き込まれていた。
それから少しずつ、デス子の生活に「見る麻雀」が入り込んでいく。
Mリーグは、リーグ発足以来「見る雀」としての文化を広めていたらしい。デス子もまさにそれだった。自分で麻雀を打とうとは思わない。雀荘は怖そうだし、タバコの煙が充満しているイメージ。ネット麻雀ですら、画面の向こうにリアルの人がいると思うと緊張してしまう。
でも、Mリーグや麻雀VTuberを観るのは、ただ楽しくて、心地よかった。
そんなデス子の平和な麻雀ライフを、ある日突然、YouTubeのおすすめが壊してくる。
「Mリーグ批評」
サムネイルには、見た目の怖いお兄さん。タイトルには辛辣な言葉が並ぶ。
気になって、つい再生してしまった。
その人、川村晃裕さんは、強い口調でMリーガーの打牌を批判していた。
「どっちが正しいのかは分からない。でも…」
とても、ムカついた。
「そんなに強いなら、プロになればいいじゃん!」
けれど、不思議なことに、彼のことを全否定する気にはなれなかった。匿名のコメント欄で悪口を書いている人たちと違って、彼は堂々と顔を出し、名前を名乗り、意見を発信していたから。
そして、さらに彼のチャンネルを漁っていくうちに、雀魂をプレイしている動画を見つけた。
「これだけMリーガーに文句を言ってるんだから、さぞかし強いんでしょ?」
試しに視聴を始めたデス子だったが――
「チー」
え?
バラバラの手牌から鳴いていく。
「ポン」
また鳴いた。晒された牌と残った手牌を見ても、上がりの形が全然見えない。
でも、次の瞬間――
「ロン」
川村さんは、当たり前のように上がり切っていた。
デス子には、それがどういう理屈で成り立っているのか、まったく分からなかった。ただ、気がつけば食い入るように画面を見つめていた。
「麻雀って、こんなに自由なんだ…」
その日から、デス子の麻雀への興味は、「観る」だけでは収まらなくなっていった。
川村さんの麻雀は、まるで魔法のようだった。
上がりには到底結びつきそうもない配牌。普通なら「厳しい」と思うような手からでも、彼は鳴きを駆使して、まるで引き寄せるように和了まで持っていく。
ただ見ているだけでも楽しかった麻雀。けれど、そのときのデス子の心は、もう"見る側"だけでは満足できなくなっていた。
「私も、やってみたい!」
でも――
その思いのまま雀魂をインストールしようとはならなかった。
過去の記憶が、それを強く引き止めたから。
かつて、あるオンラインゲームをプレイしていたときのこと。
まだ操作も立ち回りも不慣れだったデス子は、一緒に遊んでいた人たちから激しいバッシングを受けた。
「もう、絶対にオンラインゲームなんかやらない!」
そう誓ったのは、ただの悔しさじゃなかった。知らない誰かに責められることが、ただただ怖かった。
そのときの経験が、オンラインゲーム全般に対する苦手意識になってしまい、以来、デス子は二度と手を出してこなかった。
それでも、麻雀がやりたいという気持ちは、抑えられなかった。
ならば、まずはルールを知ろう。
ネットで麻雀の役やルールを検索し、少しずつ学んでいった。
思えば、こんなに熱心に勉強したのは、受験勉強以来かもしれない。でも、あのときと違って、今は苦にならなかった。勉強しながらワクワクしている自分がいた。
そして、ルールを知るほどに、川村さんの打ち方が理解できるようになっていった。
「あ、次にこれを切りそう」
「ここは鳴くんじゃないかな?」
少しずつだけど、川村さんの思考に寄り添えるようになった気がした。
気がつけば、彼の雀風だけでなく、そのちょっと擦れたような性格まで似てきてしまったかもしれない。
「もう、別に他人にどう思われてもいいや」
そう思ったとき、ようやくデス子は決心がついた。
「雀魂、インストールしよう」
アプリを開き、アカウントを作成する。
「名前か…何も考えてなかった」
軽い気持ちで「初心者です」と入力してみた。
――が、すでに使われているようで弾かれた。
「じゃあ…カタカナにしてみよう」
「初心者デス」
少し悩んで、最後に「子」を付ける。
「初心者デス子」
これで決定ボタンを押した瞬間、なんだか急にこの名前が愛しくなった。
「…なんか、可愛い名前だな」
自分で考えた名前なのに、思わずクスッと笑ってしまった。
その瞬間、ふと頭をよぎる。
Mリーグを見始めたころに作ったまま放置していた、幽霊アカウントの存在。
何気なくXにログインし、アカウント名を変更する。
【初心者デス子】
約2年ぶりに、そのアカウントが再び動き出した。
最後まで、こんな素人の書きなぐったような駄文を読んでくれて、本当にありがとうございますなのデス。
現時点、Xを復活させて約2週間になりました。ありがたいことに、デス子もびっくりするくらい多くの方々と、コミニュケーションを取らせていただいてるのデス。
本当に、Xのみんなは暖かくて思いやりがあって素敵な人ばっかりで、スマホを触る時間が増えていくばっかりなのだ(笑)
最後に感謝の思いを伝えてこの文章を締めたいと思うのデス。
ありがとう!これからもこんなデス子をよろしくなのデ~ス💀🩶